死神の彼女に恋をした
@Contract
第1話 死の足音と始まり
長い人生の間でふとした瞬間に死を感じる時がある。
例えばそれは、高いジャングルジムに登って下を見た瞬間、例えばそれはまな板の上の死んだ魚、もしくは友人や親戚の葬式に出席した時など人それぞれだろう。
死を強く感じれば感じるほど僕の目の端に黒い物が映った。
最初は見間違いかと思っていたが、年を取るにつれそれは、はっきり見えるようになり徐々に姿が見えるようになって来た。
たぶんそれは俗に言う死神だろう。
だからと言って、別に生活には特に困ることも無かったし変化も無かった。
ただ死神らしい物が見えるとゆうだけで、別に人の死ぬ時期が分かる訳でもないし、炎を出したり未来が見えるわけではない。
ましてや、今から死ぬ人間…私にとっては本当にどうでもいい。
小学校、中学校、高校と充実した学校生活はとても充実していたと思う。
いや、充実までいかずとも友人もいて、彼女がいて俗にいう青春を謳歌していたと思う。
だが今の私はどうか。
大学受験には失敗し彼女に振られ、いざ意気揚々と入学出来たかと思えば、勉学をおろそかにし、一人暮らしに甘え、単位は取れず、サークル活動で人生最後の青春を楽しもうかと思えば、馴染めず幽霊部員。
その調子で学校にも行かなくなり、友人関係は希薄になり、もう自らのバラ色の人生を描くことは不可能である。
同世代の友人のSNSを見ては絶望は深まるばかりである。
そこで私は東京のどこぞの高い鉄塔ほどの高いプライドと、現在のこの目の前の快楽ばかりを求める自分が嫌になり死ぬことにした。
私がこうなってしまったきっかけと出来事があるが、今から死ぬ人間のそんな愚痴を聞かされるなんて聞かされる方もたまったもんじゃないだろう。
なのでここでは割愛させて頂く。
死に方は楽に死ねると思った練炭自殺だ。
近くのホームセンターまで歩いて向かい炭と七輪、ガムテープを買ってきて、準備を始める。
部屋のガラスのすきまやドアにガムテープを貼っていく。
家賃4万のこのボロボロの部屋ともお別れだ。
立地は学校まで徒歩十分で、日当たりも悪くはない。
最悪なのは築10年を超える古さと、周りの学生のどんちゃん騒ぎだ。
しばらく掃除してなかったから、ゴミがガムテープについてうまく貼れ無かったので新聞を濡らして窓周りの掃除を始めた。
普段はめんどくさい掃除だけど、これが人生最後だと思うと少し楽しくなってきた。
一通り窓の掃除が終わると今度は部屋の汚れが気になる。
死ぬ前に周辺整理をしてから死ぬと言うが、こんな気持ちなのだろうか。
床に散らばっているマンガやゴミをまとめていく中で、黒い影がハッキリと映り始めてきた。
そろそろ死ぬであろう僕に死神が明確に近づいて来ているのを感じるが不思議と怖さは無かった。
「お前から見た僕はどんな風に映っているんだろうな」
昔からいて気にも止めていなかったが、今では幼馴染のような感覚を感じる。
「その程度で死ぬなんて馬鹿らしいと思うか?」
「それとも何にも思っていないのかな」
そんなことをつぶやきながら手を動かした。
部屋はみるみるうちに秩序を取り戻し、1年生の頃の部屋に戻った。
「片付けるとこんな広かったのか」
いつも狭いと思っていた部屋であったが、いざ片付けると一人で住むには十分な広さがあり、また違った未来を描いた自分もいたのではないかと思う。
あの時こうしていれば、あの時勇気を出していれば素晴らしい、アニメやゲームのような素晴らしい学生生活がまっていたかもしれない。
…過ぎた話ではあるが。
部屋の真ん中に買って来た七輪を置き、燃えやすい炭とやらに火をつけた。
美しい赤い炎がぱちぱちと音を立てて燃え始める。
壁に背中を預け、いつものタバコをポケットから取り出して吸う。
この瞬間だけは嫌なことを忘れさせてくれた。
死神の輪郭がくっきりと浮かび、なんとなく容姿が見える。
体は細く女性らしい体つきをしていて、どうやら必死に僕の体に触れようとしているようだが、見えない壁があるようでまだ僕が手を伸ばしても届かない距離にいる。
顔はフードで隠れていて、よく見えないがどうやらよくネットで見るような骸骨の姿ではなく、人の肌が見えていて僕を見ているのが分かる。
「触れられたら僕は死ぬのかな…死ねたらいいな、もう色々考えなくていいんだ」
「もう少し待ってよ20年以上の付き合いじゃないか、あと少しで吸い終わるんだ」
有名配信者に芸能人、そこら辺の社会人から学生に至るまで自殺はいつの時代も無くならない。
昔は死ぬなんて馬鹿らしい、何でそんなことをするのか分からなかったが、今なら分かる。
苦しいのだ。生きているだけで。
不確定で不安な未来に満たされることのない今の自分。
あいつらは何にも考えずに幸せなのに僕にばかり襲い掛かる不公平。
絶えず脳内で言葉と思考の暴力が僕を殴り続ける。
ネットゲームやアニメに逃げても満たされず、バイトや学校でも受け入れられない僕はもう要らないんだ。
意識が眠りに落ちる時のように徐々に遠のく。
ふぅーとまた少しタバコを吸う、あと1回か2回も吸えばフィルターまで届いてしまうだろう。
死神の手がさっきよりも近づいてきていて、両手が手を近づければ届く距離まで来ている。
「でも最後は一人じゃなくて良かった、君が看取ってくれるなら本望だ」
朦朧とする意識のなかで向かってくる手に僕は手を伸ばした。
「あーあ、もう終わりか次は楽しい人生がいいな」
もう目は開かない。
「久しぶりに友人がいるのにもうお別れか…いや、むしろこれからか?」
もう自分が生きているのか死んでいるのかも分からない、ただ過去の自分の記憶が脳内に写った。
父に母には迷惑をかける。 …もう少し親孝行しとくんだった。
悲しむだろうな。
初恋のあのこだカワイイ。 SNSでは垢抜けててちょっとショック
あ、中学の友達。ばかやってて楽しかった。 喧嘩別れになったあの子としっかり仲直りしとくんだった。
高校か…一番たのしかったk」あdも しぶなえぶいとどあっとけあにょからば、、、
あ、ねてた
タバコ消し忘れたけど 眠い
今日何食べよっかnあ、さすがにラーメンもあきた
そう言えば、あの子はどこの子だったんだろう?
まって今行くから。
……画面の保存ボタンを押して更新ボタンを押した。
「ふー」
アニメや漫画はよく読むことはよくあったがいざ自分が書くと、時間はかかるし疲れるが妙な達成感があった。
かけていた眼鏡を外して目をほぐす。
「書けました?読ませてください!」
「ちょ、まだ書き途中だから!」
あと知り合い読まれると恥ずかしい。
電源を閉じてPCの画面を消した。
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