疑惑の口元

 はる君が友達を連れてきた。

学校のお友達らしい。


名前はレン君。

元気いっぱいのいい子だ。


わしは、はる君が友達を連れて遊びに来てくれたことを大いに喜んだ。


最近は泣きながら寝ることが多く、なかなかに疲弊していたのだが、せっかく孫がお友達を連れて遊びに来てくれるのだ。


わしは疲れを見せないようにニコニコしながら出迎えた。


来て早々にお手玉について触れてわしの心を抉ってきたが、それは別にレン君が悪いわけじゃない。


レン君はいい子だ。

いい子……なのだが。


一つ気になることがあった。


レン君だけでなく、はる君もだが、何やら口をパクパクを動かしていたのだ。

それも一度や二度ではない。


正面からちゃんと見ていたわけではないため、読唇術を存分に発揮することはできなかったのだが、断片的にワードを拾うことができた。


「つから……くりょう……取り……探ろ」


意味は分からないが、何かの暗号のようにも思える。


そしてわしが酷く驚いたのは

「……てだま……いつから……訊こ」

と、レン君が口をパクつかせた直後に、はる君からお手玉に関する質問が飛び出したことだ。


これにより、口をパクパクさせているのには何かしらの意味があると確信した。


わしが二人の謎のやり取りに気づき、頭を悩ませている間にも、かず子はいつものように、はる君が「おばあちゃんち」と言う度に悪魔のような笑顔を浮かべるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る