13.対グリフォン①(弱点選定)
「槍の人は常に後ろ! 剣士、前出過ぎるな! ソニア、爪狙え!」
前衛が連携して押し退け、矢はグリフォンの手を掠める。矢に適応してきた魔物は前の2人を警戒しつつ矢を番えるソニアと、時折俺を注視していた。
刺突斬撃は当たるものの、弓矢はその後当たることはなかった。しかし威嚇にはなっているから一応指示として通っている。追放パーティーの名前は知らないが、連携も上手くできている。
押しに押して、最初グリフォンと出会った泉のところまで戻って来た。周りに同じ姿の、小さめの個体もいたが加勢する様子はない。
「群れのボスだろうからね、手出し無用ってことだろう! カンペー、ここからどうするんだい?」
「え……? おま、何かアイデアあるんじゃねぇの?」
「ノープランさ! あの場で追放パーティーを納得させるならあぁいうしかないだろっ?」
「本当は?」
「ホントに君なら何とか出来ると思ったからさ!」
……それ、ノープランに変わりないのでは?
この女ぁ、マジで魔眼のことしかあたまにねーのか!
「あぁくそ、管理職でもねぇってのに……!」
斬って突いて射って外して魔法を撃って。アイナの奴も多分弱めの魔法何だろうが援護に回っている。しかし、どうにも決め手に欠ける。グリフォンの身体には徐々に傷が増えているものの、倒れることがない。
「なんでパンピーがこんなこと……」
ベタに考えるなら弱点かぁ?
いやでも、初めて見る動物の弱点なんて……見えるわけ…………
「……見えた」
乱戦中の面子、それぞれの身体の心臓と頭の位置が強く光る。
なんでか分からないがアイナだけは両目も光っている。あれを人間の弱点だとするなら――
再びグリフォンを凝視。
パーティー各員と繋がる糸の始点……前足の間、羽毛に隠れた先の胴体にある――心臓! って当たり前か……まぁいい! 狙うなら剣や槍じゃなくて……
意思を先読みするように、糸は答えを教えてくれる。
「ソニア!」
「は、はひぃ!?」
「あいつの心臓、撃ってくれ」
「ふえぇっ!? むむむむりですぅ! いまこうやって戦ってるだけでも奇跡ですよぉ!?」
分厚い眼鏡が反射する。
さっきまで様になっていたというのに大役を任せようとしたらこれだ。でも
「マジな話、他の奴じゃ狙えねぇよ。あいつの懐まで入れないし」
「今まで当ててきた魔物は動きが鈍いからできたんですぅ!」
ちょっと涙目のソニア。割といっぱいいっぱいで戦っているらしい。むしろ何もせず野次のような指示を飛ばす一般男性の方が落ち着いている方がおかしいのかもしれない。
「これから冒険するんならこういう場面が何度も来るぞ、そのために魔眼を手に入れに来たんだろ」
「で、でもぉっ……!」
煮え切らないエルフは首を振る。もしかしたらこんな姿を何度も見て、追放パーティーの面々もクビにしたのかもしれない。泣き言は後にしてほしいが……駆け出しには自信になる軸もなく。
「カンペー!」
アイナの声で視線を上げる。剣士たちを振り切り、グリフォンは俺へ突っ込んできた。
「pyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!」
「マジで!?」
考えてみれば……さっきからピーピー喚いて指示を出しているときからこっちを睨んでいたんだから、いつ狙ってもおかしくないか。
「カンペーさんっ!」
なんて一瞬の間に思考が巡っていたが、横からソニアが俺に飛びついた。三つ編みはグリフォンの爪で裂かれ、眼鏡は顔から離れて地面へ落ちた。
「ドジ2人、さっさと離れろ!」
「カンペー。後退だ」
追放剣士とアイナの呼び声。グリフォンはまた、全員が視界に入れられるように距離を取る。
「おいソニア、大丈夫か!?」
「え、えーっとぉ……眼鏡……ぎゃ!」
目の前にはショートカットになったエルフ。眼鏡が外れて逆3の目……ではないが、見えにくいのかものすごく睨んだ形相になっている。そして手にはレンズの割れた眼鏡。
「どどどど……どうしましょう!?」
「……マジ?」
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