ゲーム会社応募の際、数社に実際に提出したことがあるゲーム企画書。もちろん全社で書類落ち。

明石竜 

第1話



タイトル『女子生徒寮管理人は、ベテラン就職活動家』


主なターゲット層:15歳以上推奨。CEROは「C」ランク。


ジャンル:日常系恋愛シミュレーションゲーム。


《ミニゲームもあり。男性向けではあるが、女性にも親しみやすいストーリー設定》


キャッチコピー:就職活動とは、『内定通知』という伝説の宝を求めて旅に出る、スーツとネクタイのファンタジー系RPG。


対応機種:ニンテンドーDS。プレイ人数は一人。   


開発言語:C++。開発期間は約半年を見込む。


企画動機: 文学全集や旅行ガイド、資格(検定)試験、料理のレシピまでもがゲーム化されている今の時代、もはや日常生活に溢れるどんなものでもゲームソフトに出来てしまうのではと思います。今回私は、ジャンル的には昔からよくあるものですが、既存の作品とは一味違う少し変わったストーリー設定のものを考えてみました。今まで誰も思い付かなかったであろうものに冒険しています。ある意味とんでもなくぶっ飛んだ異色のバカゲーかもしれません。もし貴社がこのゲームを開発し、発売でもしようものならきっと伝説に残る!(いえ、冗談です。)



 高松健太は大学三年生の頃からIT業界SE職を中心にあまた多数の業界、職種、企業を一途に延々と受け続けているが、就活開始から四年近くが経っても未だどこからも雇ってもらえない状態が継続中。これまで不採用となった会社の数はついに500社以上にまで達していた。彼は筆記試験までは大方パス出来ているのだが次の関門、一次集団面接(討論)試験でことごとく落とされ続けていたのだ。個人面接一回のみで決まるところでも全くダメで、公務員試験も筆記で高得点を稼ぐがやはり面接で撃沈。契約社員、アルバイトすらも断られ続ける日々。内定の目処は未だ全く立っておらず、健太は人間的に日に日に腐ってゆく。不採用通知を受け取らせれば、彼は天下無双の実力者である。

 この物語は、無職の青年、高松健太(25)が、女子高生の笹岡佐代里(16)から告白されて、数奇な運命を辿る日常系のお話である。


プロローグ: 舞台はとある夏の神戸

ある日の夕方のこと、高松健太はやはり今回もうまくいかなかった就職試験の帰り道にイライラ気分を晴らすため、街路樹を渾身の力で蹴った。案の定、彼のつま先にジンジン激痛が走る。さらにその振動からか、この木の上からある物体が落下し、彼の頭をコツンっと直撃した。


「いっ、痛えーっ! 泣きっ面に蜂かよ俺はよう。なんやこれ?」


彼は地面に目を遣る。それはなんと、ミルクキャラメルのたくさん詰まった箱だった。


「!? なっ、なんでこんなもんが木の上にあるねん?」


彼はそれをひょいと拾い上げ、不思議そうにその箱を睨みつけていたところ、


「わあー、ありがとうございますう。私、さっきキャラメルちゃんを公園のベンチで口に入れようとしたら、カラスさんにパクッて銜えられていっちゃったんですよ」


「へっ!?」


突然、背後から一人の女の子に、にこにこ笑顔で話しかけられた。


健太は恐る恐る振り向く。そこにいた子は、ちょっぴり垂れ目な茶色い瞳に丸っこいお顔。ほんのり栗色がかった髪の毛を左右両サイド水色のリボンでくくり、肩より少し下くらいまで伸ばしていた。


「こんにちはーっ、はじめまして。私、林藤詩穂って言います。高校三年生です。あのう、藪から棒ですが、もしよろしければあなたのお名前聞かせてくれませんか?」


 その詩穂と名乗った子は顔を近づけ、健太に問い詰めてくる。健太は緊張からか、額から冷や汗がつーっと流れ出た。


「おっ、俺? おっ、俺の、なっ、名前は、たっ、高松健太、ですけど……」


 いつも以上に言葉を詰まらせながら答える。


「健太くんっていうんですね。フライドチキンが食べたくなっちゃいます。健太くん、私、あなたに一目惚れしちゃいました。真面目そうで大人しそうで賢そうで優しそうなところにすごく好感が持てるんです。あの、これから一緒に暮らして下さい!」


「えっ!?」


 健太は詩穂から唐突にそんなことを告げられ、あれよあれよという間にその子に手をグイグイ引かれ、近くにある駄菓子屋さんへと連れて行かれた。ここが彼女のおウチだという。そこには、他にも彼女と同い年くらいか年下の女の子が3人暮らしていた。なんとここは、女子中・高生が住む女子寮としても使われているというのだ。健太は住民全員から温かく大歓迎された。一般企業にはどこからも相手にされず、見捨てられて続けてきた健太だが、ここでは彼のその心優しい性格、人間性が彼女らに高く評価されたのだ。かくして高松健太は昭和の雰囲気も漂うこのおウチで、4人の個性的でかわいい女の子と一緒に暮らしてゆくことに――どきどきの同棲生活が始まる。


 


主な登場人物 


CVは空想です。スルーして下さい。


高松(たかまつ)健太(けんた):(CV:松岡禎丞)25歳。このゲームの主人公。身長165cm、体重47kg。地方国立大学卒。彼は小・中・高通じて不登校、引きこもり経験は一切なし。遅刻、無断欠席もしたことがなかった。大学でもいつも真面目に講義に出席し、レポート提出期限はきちんと守り、必修単位を一つも落とすことなく留年せず4年で卒業。一浪はしたものの学業に関してはコツコツ努力型で上の下くらいの成績を維持してきた。しかし今では無職。真面目で大人しく、素直で正直者な心優しい青年。


林(りん)藤(どう)詩(し)穂(ほ):(CV:小岩井ことり)17歳。高校三年生。このゲームのメインヒロイン。ドジっ娘。勉強(特に数学)は大の苦手。甘いお菓子が大好き。その中でも一番好きなのはミルクキャラメル。大学は関関同立を目指しているものの厳しい状況。


天宮(あまみや)こずえ:(CV:佐倉綾音)16歳。高校一年生。国語が一番の得意科目。女の子ながら相撲が見るのもするのも大好き。


シンディ・マクスウェル:(CV:東山奈央)16歳。高校二年生。オーストラリアからの留学生。178センチの長身。学業も優秀。物理、化学、生物、数学が得意科目。


小野川(おのがわ)ひな:(CV:村川梨衣)14歳。私立女子中学の三年生。マンガ、ゲーム、深夜アニメ、ラノベが大好き。詩穂と同じく勉強は大の苦手。でも中高一貫校だから高校受験のことなんて全く気にしない。背がかなり低く今でも小学生に間違えられることがよくあるらしい。健太のことを“無職お兄ちゃん”と呼び慕う。


谷(たに)右エ門(えもん):(CV:豊崎愛生)ここで飼われているペットの三毛猫の名前。第19代横綱・常陸山谷右エ門から、こずえに名付けられた。メス。


既存のゲームと異なる点。


①主人公は今をときめく青年であり、かつ今までにない全く新しいタイプ。

・ニートにも引きこもりにも属してない、強いて言うならばベテラン就職活動家。無能なくせになんとか仕事にありつこうとする彼の高い就労意欲は、皮肉にも採用する企業側からすれば迷惑この上ない行為に感じとられ、ニートや引きこもりに属する人々以上に心象を悪く持たれ、厄介者扱いされる結果を導いてしまっていた。(ニートや引きこもりに属する人々は、そもそも求人に応募してこないので企業側からすれば眼中になく、存在すら認識されていない。ようするに彼らは“真の勝ち組”ともいえるであろう。)就職活動を満身創痍で懸命にするがゆえに起きてしまう悲劇。学校生活に言い換えれば不登校の人ではなく、嫌でも無理して頑張って学校に来ている人がイジメの対象になってしまう状況と同じ原理である。


・『不採用通知ハンター』『不採用のトップスター(スペシャリスト)』『歩く不採用通知』などの異名も持つ。


・実在しても不思議ではないリアリティのあるキャラクター像。プレイヤーも彼に感情移入して楽しめるかもしれません。


②今では珍しくなった古き良き日本文化の賜物を、現代が舞台の作中に多数登場させることで、どこか懐かしさも感じられる。


・駄菓子屋さん、そろばん  黒電話  卓袱台 、箱階段、柱時計、ダイヤル式テレビ、五右衛門風呂、その他いろいろ。


このゲームの遊び方。


プレイヤーは高松健太となり、女の子たちとコミュニケーションなどを楽しみながら日常生活を過ごし、各キャラの主人公に対する好感度などを変化させてゆく。その中でクイズゲームイベントも発生。高校レベルの一般教養問題。(タッチペンを使った選択式または記述式で、大学受験にも役立つもの。これによって高校生購買層の獲得が狙えます。)ハッピーエンドは詩穂の大学合格! 


ミニゲームの数々。  


そろばん計算、金魚すくい、水切り(石投げ)、ザリガニ釣り、めんこ遊び、

紙相撲、折り紙など。《十字キーやタッチペン、ABボタンで操作。》


他のゲームでは見られないような昔の遊びを中心に扱う。


特に工夫された要素。   


主人公が怠け者の不良ではなく、大人しく真面目で心優しい性格の青年に設定したことで、ヒロインと出会うまでのストーリーがより一層の悲壮感を醸し出しています。


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