第19話 女子会?
「明くん、これいいね、で、いくら」
明くんの見せてくれた白いパソコンはなかなかにおしゃれで、こんなの見たことなかった。
「7000円」
明くんの答えはとんでもなかった。
「7000円? 中古?」
「いや新品。だってそれケースだけだもん」
「ケース?」
「そう、外側の箱だけ。中身は自分で選んで組み立てないといけないよ」
「え、マジ?」
「うん、マジ」
「う~ん」
「ま、自分で組むとさ、メリットとデメリットがあるからね」
「ほう」
「最大のメリットは、自分の好きなように作れるってことだね。ケースとかはその一つだね」
「デメリットは?」
「いっぱいあるよ。まず、保証がないに等しい。パーツごとの保証はあるけど、そもそも故障したとき、どの部品が壊れたのか自力で明らかにしなきゃいけない」
「そりゃたいへんだ」
「設定とかサポートも無いよ。ただ、大学にはパソコン好きはいくらでもいるからそれは大丈夫たと思うけどね」
「そだね」
「とりあえずケースだけ選んでくれれば、他の部品は選んどいてあげるよ」
「助かるわ。ごめんね」
「いや、こういうの好きだし、むしろ楽しい」
「じゃあさ、のぞみ、今日家きてよ。久しぶりに女子会やりながらケース選ぶの手伝ってよ。私のセンスよりのぞみのほうがいいから」
「あ、うーん、今夜はちょっと」
のぞみの目が泳いだ。私はなんか変なことを言っただろうか。
「ま、いいんじゃない」
何故か明くんが女子会をOKしている。
「聖女様、にぶいのもいい加減にしないとだめですよ」
近くにいたカサドンに注意された。
「にぶいって、何が?」
「あのですねぇ、学科で知らないの、聖女様だけですよ」
「知らないって、何よ。カサドン教えてよ」
「ぼくからはいえませんよ、本人たちに聞いて下さいよ」
「本人たち?」
カサドンの視線は、のぞみと明くんの間を行ったり来たりしていた。
「お二人が言わないからいけないんですよ」
カサドンは二人を見ながら言った。私もやっとわかってきた。この二人はできてる。
「なんかわかった。おめでと。なんで言ってくれないのよ」
するとのぞみは赤い顔をして言った。
「だってさ、聖女様遠距離と言うか別居というか、苦労してんじゃん。私だけ幸せなんて、ちょっとね」
「実際には幸せしてんでしょ。ごめんね、気を使わせて」
すると明くんが言い出した。
「よしわかった。今日はみんなうちに来い。ノゾミンの料理で飲もう! カサドン、真美ちゃん呼んどいてよ」
「わかりました」
そういうわけで、この夜は地下鉄に乗って明くんの家にいくことになった。
一旦家に帰って着替えをとって、明くんの家の近くの駅で集合した。
料理ができるまでの間、私は明くんのパソコンをみせてもらっていた。
試しに少しプログラムを組んで走らせると、それなりに快適に走る。
「明くん、これいくらかかったの?」
「うーん、必要に応じて部品替えたりしてるからよくわかんないけど、結局40万くらいいっちゃってるかなぁ。あ、これのぞみんには秘密ね」
悪いけど私はあんまり自信ない。
私はのぞみの恋愛成就が嬉しく、快調に飲んでいた。
「杏、飲み過ぎじゃない?」
ネット経由で修二くんも途中から参加していた。
「そうだ、修二くん、明くんって私達の写真持ってないかな?」
「持ってるだろうけど、勝手に人のパソコン探っちゃだめだよ」
「わかってるって、明くん、パソコン内の写真見ていい?」
「あ、え、あ、う、うん、大丈夫かな?」
明くんの返事は中途はんぱだった。反応したのはのぞみである。
「何、明くん、あやしい」
のぞみは料理を途中でやめ、パソコンを探り始めた。
私はのぞみのやりかけの料理をしあげるため、台所に行った。
「のぞみー、これ炒めればいいの?」
「うーん、味は醤油適当にかけといて」
「はーい」
炒めた料理を肴にワインを堪能していると、のぞみに呼ばれた。
「聖女様、Cドライブ直下にこんなフォルダ見つけた」
フォルダー名BMとある。
「のぞみさ、いちおうプライバシーというものがあるのよね」
「だけど、私明くんの許可取ったよ」
取ったと言うか、無理やり取ったと言うか。
そしてそのフォルダー開くと大量の画像ファイルがあった。黒髪3人組のアイドルである。
真美ちゃんはその画像を見て、
「のぞみん、家の中にきっとこの子達のブルーレイあるよ」
と言った。のぞみはニッコリと笑って、
「明くん、私この子達のブルーレイ見たい。あるんでしょ」
明くんはよろよろと押入れの奥から箱を出してきた。黒いレコードサイズの箱を開け、中からディスクを出し、無駄に大きなテレビの下のプレーヤーにそれを入れた。
流れた音楽はかなり激しいロックに女の子3人が踊りまくっている。真ん中の子がポニーテール、両サイドの子はツインテール。衣装は黒ベースである。ダンスもいいが、歌もうまい。
約一時間、激しい音楽を聞き、狐様のお告げを聞かされ、映像は終わった。
のぞみは笑顔で明くんの方を向き、
「で、どの子が好みなの?」
と言った。
親友の恐ろしい姿を見てしまった私は、飲んで記憶をなくすしかなかった。
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