第21話 無事だったのか?

「シエロ……おい、シエロ」


「………」


「死んでしまったのか?」


「……あれ?………俺………」


「おお、生きとったかシエロ!」


声がすると思い、目を開けると、そこには青白く光る天井と涙目で顔を覗くヨヨの姿があった。


自分は確か……スライムと戦って……。

そうだスライム!。


シエロは急に体を起こし、ヨヨはびっくりして後ろにのけぞった。


「スライム?……スライムは!?」


俺は黒いスライムとやり合っていたはずだ……。

でもスライムを飲み込んだ所から記憶が全く無い。

あいつはどうなったんだ?倒したのか?


シエロはスライムがどうなったかとヨヨに聞くが、雨水が洞窟内に浸水した時にはテレポートで一時離脱していたヨヨ。

シエロの言ってることは状況を見ていなかったヨヨには理解出来なかったのだ。


慌てふためくシエロをヨヨは落ち着かせ、別れてから何があったのかを事細かに聞くのであった。





シエロはヨヨに雨水で浸水してからスライムを食べた話までを一部始終話し終える。


「お前、よく生きてたな」


「……おっしゃる通りです」


俺はヨヨから呆れ顔で称賛される。

ヨヨが呆れていたのは俺の最後の手段、スライムを胃で消化するということについてだ。


俺のアーツであるアシッドは、酸をどこからでも出せるというのだから、胃の中にも出せるだろうという思い付きだけでスライムを飲み込む決断をしたのだ。


何の確証も無くそれを実行したことについてヨヨは


「そんなことばっかりしてたら命がいくつあっても足りんぞ!」


と呆れた顔で叱って来たのだった。


それに対して俺はその手段しか考えられなかったとヨヨに伝えた。

しかしヨヨから指摘されたことで自分でもその手段が間違いだったかも知れないと思うのであった。


「胃で酸を大量に出したら、食道や腸が酸で溶けるとは思わなかったのか?」


ヨヨの指摘はかなり的を得ていた。

確かに胃を元に戻すアーツで、胃はなんとか回復できるはずである。

だが食道や腸に流れ込んだ酸は回復不可能。

俺が今普通にヨヨと会話出来ているのは奇跡としか言いようが無かった。


「酸を胃だけにとどめるアーツだったとか?」


「そんな説明文あったか?」


「……いや、無かったです」


俺はヨヨに自分が助かった理由を色々と提示してみたがことごとく無理な話だと言われてしまう。


なら俺はなんで今ピンピンしているのだろう?

そういえばスライムと戦ってた際に受けた痛みも、今は消え去ってしまっている。

一体何があったのか?


「体が無事なのは不思議ですけど……生きているということは黒スライムは倒せたと思って良いんでしょうかね?」


もしスライムが生きていたなら俺は容赦なく八つ裂きにされていただろう。

だから今無事なのはスライムを倒したか……有り得ないと思うがスライムが何もせずに逃げたかぐらいしか考えられなかった。


「倒したかどうかを確かめる方法ならあるぞ」


「え、そんな方法あるんですか?」


「Lvを見てみればいい」


「あ、そうか!」


ヨヨの一言で俺もその方法に気づくことが出来た。


今回戦った黒いスライム。

あれの強さはスライムの中でもダントツに強かったらしい。

スライムについて完全に知っている訳では無いヨヨでも、人を壁際まで吹き飛ばせるほどのスライムなど聞いたことも無いと言う。


そんな強さ極悪スライムを倒したと言うならさぞLvも上がっていることだろう。

そう思って俺はステータスプレートを開き、自分のレベルを確認した。


「あれ、ヨヨ様。これは?」


「んー、変わっとらんな」


シエロのステータスプレートを一緒に覗いていたヨヨは、シエロがLv5のままであることを確認する。

上位のスライムと戦ってLv5の人間のLvが上がらないなんてのはおかしいことだ。

ヨヨはシエロが嘘を言っているか、もしくは夢でも見たのではと思うのであった。


「何も変わって無いではないか」


「…………」


「夢でも見てたんじゃないか?」


「……いや、ヨヨ様。ここ見てくれませんか。………なんですか、これ?」


ヨヨがLvのことについて指摘すると、シエロはLvとは違う場所を指差していた。

シエロが指で指し示していたのは自分の持っているスキルが記載されている場所であった。


「ヨヨ様、これってなんかのスキルなんですか?」


「……はい?」


シエロはスキルを見ながらヨヨに質問するが、ヨヨはシエロが何を言っているのかさっぱり分からなかった。


「何を言ってるんだ?、どこ指差してる?」


「ここですよ、ここ。この黒塗りのとこ」


シエロは自分のスキルに新たに表示されている謎の黒塗りを指し示す。

しかしヨヨは


「だから、どこを指しているんだよ。何も書いとらんじゃないか」


自分を馬鹿にしとるのかとシエロを怒鳴るのだった。


何度その黒塗りををヨヨに問いただしても見えん!の一言。

俺しか見えていないのだろうか?

なんだこの黒塗りは?


シエロはスキルプレートをじっと見つめて考える。


あの黒いスライムと出会う前は無かったはずだしな〜。

スライム倒したからスキルゲット?……いやLvは変わって無いし、倒せて無いんだろうな〜、んー?


考えても考えても答えが出ないシエロ。

そしてついに


分かんないからいいや!。

生きてるから問題無し。

なんか動き回って腹減った。

そうだ、ヨヨ!。コイツ俺を置いて逃げたこと忘れてた!。


シエロは考えるのをきっぱりとやめ、ヨヨが逃げたことについて言及して行くのであった。





………ダイジョウブカ?


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