第3話 勇者と再開するようです

お嬢ちゃん、もう大丈夫だよ。飴ちゃんたべるかい?」



勇者達と合流するために町へ入ろうとしたところ思いっきり、

衛兵さんたちにとめられてしまった。



相手からみれば身分証もないただの少女だ。

当然といえば当然だろう。



だが、少女扱いはなっとくいかん!

俺は男だ!



それに子どもですらない。

だからそんな優しそうな声を出す必要はないのだ。



一応その事を説明はしたのだけれど、



「嬢ちゃん、なかなか面白いこと言うね」



と冗談として受け取られてしまった。

女神の手紙を見せても意味なかったし。


どうしてだ~。


あ、飴はおいしいです。ありがとう。



ちなみに今は俺が死んでから6年後の世界のようだ。

魔王が死んでかなり平和になっているらしい。

うれしいことだね。



さて、それはそれとして、これからどうしたものか。

このままだと衛兵さんに保護されかねん。



誰か俺だと分かる奴がいないと。



「すまん。勇者か、戦士、聖女に会わせてくれないか?」


とお願いしてみるが、



「なんだい嬢ちゃんも勇者パーティーのファンなのかい?

いいねえ。だがそれは難しいな。みなさん英雄だ。とても忙しいだろうからな」



と普通に断られた。



思った以上に詰んでないかこれ。

どうする?魔法使う?



でも別に悪い人な訳ではないし、

下手に騒ぎもおこしたくないんだよな~。



だがいざとなったら魔法が一番早いな、

などと考えていると、



「勇者様が遠征から帰えられたぞ!」



という大きな声が聞こえてきた。



「お!嬢ちゃん良かったな。勇者さまが見られるぞ」



衛兵さんもこう言っている。

本当にいいタイミングだ。



急いで外にでる。



するとそこには勇者の行列があった。



顔見知りの勇者を先頭に、馬に乗ったたくさんの騎士達が歩いている。

そしてその周りには勇者を一目見ようとする群衆で埋め尽くされていた。



うげえ、あいつやっぱり人気だな。

さて、気づいてもらえるだろうか。



勇者に向かって走り出す。



「あ!嬢ちゃん!危ないぞ!」



衛兵さんが注意してくれる。

が、悪いけど無視だ。



このままここにいても埒があかないからね。

すこし強引に解決させてもらう。



「失礼するよ」



魔法で体を軽くして、群衆の肩の上を歩く。

そうして一気に勇者に近づいていった。



「よ!ひさしぶり!」




と群衆の上に乗り、勇者に声をかけるのであった。



数分後。



普通に警備の人間に捕まったわ。

勇者には気づいてもらえないし、抵抗したら面倒くさいので

しなかったが、いたずらはしないように!ときつく叱られてしまった。



弁解の余地すらねえのかよお!



あんまりだあ!



と泣いていると、



「失礼する」



「あ!ゆ、勇者様!」



部屋に勇者がはいってきた。

警備員は背筋を伸ばして敬礼する。



勇者は警備員に手を上げて、俺の前に来ると、



「君は、誰だい?どうしてあんな事をしたの?」



と子どもに語りかける口調で話しかけてくる。

うげえ。やめろやめろ。



コイツまだ気づいてやがらねえな。

孤児院の時から一緒だというのに、失礼なやつだ。



ポッケから女神様の手紙を取り出し、勇者に差し出す。

勇者は女神様から力を貰っている。



だからこの手紙が本物であることは分かるだろう。

あとは内容を読んでくれれば事実がわかる。



勇者は手紙?と首を傾げながら受け取り、読み始めた。

見ていると、手紙を読んでいる勇者の顔がどんどん険しくなっていく。



そして信じられないという顔でこちらをみつめた。

どうやらやっと気がついたようだ。



「これは、女神様の・・・」



想定通りだ。

やはり勇者は分かってくれた。


「まさか!」



俺はニヤリと笑う。



「君は!」



さあ、感動の再会だ。



「アルトの子どもか!?」



「ちげえよ、ハゲ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る