魔王と自爆した俺、少女になる。魔族どもは、魔王を殺した俺が生き返ったことをまだ知らないようです
不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
第1話 一緒に死のうぜ!俺爆弾な!
俺達勇者パーティーは、魔王城にて魔王と交戦していた。
だが戦況は厳しい。
すでに戦士と聖女は戦闘不能。
生きてはいるが意識がない。
そして勇者は満身創痍であった。
立って戦えるのは、俺ひとり。
「世界の命運はこの背中にかかってるってことか!」
思わずそうつぶやいてしまう。
「アルト!お前だけでも逃げろ!ひとりじゃ勝てない!」
勇者はひとりで魔王に立ち向かおうとする俺に対して言った。
「馬鹿が。そんなことはできるかよ!」
そんな勇者の言葉は笑い飛ばしてやる。
ひとりで逃げられるわけがないだろうが。
聖女も、戦士も、そして勇者も
ここまで一緒に旅をしてきた大切な仲間達だ。
そんな仲間を見捨てて脱げるなど言語両断。
絶対に守ってみせる。
「かかってこいよ!魔王!」
「*******************!!!」
こうして世界を支配しようとする魔王と、
魔術師である俺の決戦が幕を開けた。
俺は最大火力のさらに上、
自身すら崩壊させるほどの魔法を魔王に対してたたき込む。
「********!!!」
魔王はたまらず悲鳴を上げる。
だが魔王もやられているだけではない。
魔法の放ち、こちらの体を削っていく。
魔王城の一面には魔王と俺の血と臓物が飛び散っていく。
「ちいい!」
「やめろ!アルト!にげてくれえ!」
勇者の悲鳴のような声が聞こえた。
いつも冷静で、落ち着いている彼に似つかわしくない声だった。
だが返事などしている余裕はなかった。
魔王の攻撃は激しさを増し、俺の再生を上回りつつある。
勇者達を庇いながらの戦いでは、一歩魔王が上のようだ。
このままでは、マズイ!さらに火力を上げなければ!
そう焦っていると、魔王が勇者達の方に目線を向けた。
そしてニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
まさか、こいつ!
「クソガアアアアアア!」
俺の予想は当たっていた。
魔王の奴は俺との正面対決を続けるつもりはないようだ。
後ろにいる動けない勇者達を狙い魔法を放つ。
防御魔法を貼っている余裕などなかった。
体が自然と動く。
そして勇者達を庇うように、魔王の攻撃の前に立った。
魔王の強力な一撃が俺を襲う。
ものすごい痛みと共に全身が焼け焦げていく。
体の一部が灰になって崩れていくのが見えた。
致命傷だ。膝から崩れ落ちていく。
もう、限界のようだ。
「ああ!アルト!ウソだ!」
勇者が地面を這いずりながら、俺の元へと駆け寄ってくる。
その目には大粒の涙が浮かんでいた。
馬鹿が。
他人の心配をしている暇があったら、自分の心配をしてやがれ。
「*******。******!!!」
そんな俺達をみて魔王は勝ち誇ったような叫びを上げた。
最後のトドメを刺すためにゆっくりとこちらへ近づいてくる。
もう戦える力は残っていない。
このままではパーティーは全滅だ。
全員は生き残れない。
ならせめて自分以外の奴らくらいは、生き残ってほしかった。
「アルト、この魔法は使うなよ?
これはお前の命と引き換えに敵を道連れにする魔法だ。
使用者すら殺す魔法など、私の理想ではないからな」
走馬灯だろうか?
薄れゆく意識の中、昔言われた今は亡き師匠の言葉を思い出す。
自分の命を犠牲にして、相手を道連れにする魔法。
今、この絶望的な状況にぴったりじゃないか。
「勇者、悪いな。一緒に帰るのは無理そうだ」
「アルト?何をいって・・・」
「またな。二人にもよろしくたのむ」
俺はそう言って、最後の力を振り絞り立ち上がる。
そして最後の、詠唱を始めた。
自身の肉体どころか、魂まで魔力に変換して放つ必殺技だ。
魔王は詠唱を聞き、すぐに俺の意図に気づいた。
先ほどまでの勝利を確信した表情はなく、顔は恐怖にゆがんでいた。
怖がるってことは、効くってことだよな?
「まて!ダメだ!」
勇者の制止を無視し、魔王に対して走り出す。
魔王はそんな俺を殺そうと剣を振ってくる。
回避が出来ず、体が上下半分になってしまうが、気にしない。
上半身だけで魔王の体にしがみつく。
そうして最後の言葉を口にした。
「ひとりで逝くのもさみしいのでね!てめえは!道連れだ!」
「**********!!!」
言葉は分からない。
けれど魔王がやめろ!と叫んでいることは分かった。
必死に引きはがそうとしてくる。
だがやめない。
だが離さない!
死ね!魔王!
詠唱が終わり、魔力が暴走していく。
それは俺を中心に、巨大な火球を発生させた。
最後の自爆特攻だった。
「アルト!!」
空耳か現実か。
友の声が聞こえた気がした。
勇者の方を見ると、彼がこちらを見つめていた。
目を見開いて、受け入れられないという顔で。
ーーー生きろよ
大切な奴らのために死ぬ、か。
オレにしては満足な死に方じゃないか。
自身と魔王が崩壊していくのを見て、俺は思った。
それが薄れゆく意識の中での、最期の思考であった。
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