第28話篠山の許嫁と同期の桜

篠山は、真理亜と二人屋外へ歩いた。病院を出て直ぐに右へ廻ると病院の中庭に当たる。そこの湿った地面に散ったばかりの桜の花弁がそこら中に散りばめられていて、戦友もこの桜の様にミッドウェーやマリアナ諸島にも散って行ったのだろう。こんな事をしている場合では無い!自分も行かねば!脳裏に翳る篠山の焦りにもにた焦燥感と罪の意識が、動機が早く、呼吸を荒く血圧が高レベルに達して目眩に似たふらつきが所見できたので、真理亜は取り敢えず中庭に設えて:ある白いペンキを塗った木製のベンチに座らせ、真理亜も篠山の左横に腰を下ろした。

バイタルを採る為に右側に座る

篠山を観るとベンチの右端に古びた紺色のキャップがポツンと、忘れ去られていた。きっと入院患者のものだろうと思い真理亜がそっと、キャップを

手に取りキャップの淵を観た。

そこには乱暴に炭で書かれた「曲がり角ゆ」という文字に出逢ったが、きっと患者さんの忘れ物っだわと、篠山に「落とし物ですね、さあ行きましょうか?」

と散歩を促し歩いて行った。

篠山と看護婦の真理亜は、眼を見合わせ真剣な面持ちで会話を持ちながら坂の下へ向かい歩いていた。


「篠山様の許嫁でありました高橋直美という女性は、実在していますよ?」

思いだしたように・・・。

篠山の左肘wp持ち耳打ちをした。

「え、小鳩が桜の枝から飛び立ったのを機に本当ですかと、篠山の顔にパッと灯りが差した。


 篠山の許嫁は、実際に存在していてその人は、かなり高齢者だという事だったが若い内から約束を守り通す性格で恋人も持たなくて結婚もせず、篠山との結婚の約束事と独身を貫き通したという。


「残念ながら直美お祖母ちゃんは、地元の資産家で有力者からの紹介がありまして白熊病院看護婦の存続の為に見合いを断り切れず渋々とお見合い結婚をして私達、玄孫(やしゃご)を3人もうけて居ます。」


務めの為に己を犠牲にする同期の桜の様だ・・・。


違う世界に足を踏み入れて生きることで生き甲斐を見つけたのだろう。


素晴らしい事だ!


篠山は歩きながらそれを高橋真理亜から聴き、感銘を受けた。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る