第2話 ネタは降るもの見えるもの
早起きのご褒美に自分語りをいたします。
煙は無意識に考えていること、思い付きを文字起こししたものをアイデアと呼びます。煙なりの「涌いてくる」「降ってくる」「浮かんでくる」です。
ご注意願いたいのは、聴覚・視覚・情動といった感覚に頼らず、ただネタとして浮かんでくる——いうなれば「作文が頭に涌いてくる」ことを特徴とします。
ちなみに関西圏で「あ、いまアイデアが降って来よる」「さっすが! 先生の頭ってすぐ湧いてきますね!」は、死です(目上の人の頭を「頭」ということも稀ですが)。
話を戻そうか。
煙もしばしば自動筆記と称しては自分でも「なんこれ?」という文章を書くことが多いです。上述の「涌いてきた文」は記銘するのも困難です。ときにデタラメ、ときに思い違い、捏造を繰り返し「文章」としての体裁を何とか保っています。
タイピングは遅いです。ですので、「涌いた文」への「独自解釈」を適宜加えながらの論述となり、本来の(あのシュルレアリスムの)自動筆記と呼ぶには似つかわしくありません。
若干近い比喩をたった今思いついたので忘れないうちにご披露します。
——「思考吹入」。
たとえていうなら思考吹入が煙のネタ出しです。
元はこころの病を抱える方が、はちゃめちゃに嫌な考えを外部から無理やり入れてくるように感じる、そういう症状をいうのですが、煙はそれの超簡略化版です。まあその、病気にせよなんにせよこれだけ高度な思考体系ですから。長い釣り糸ほどよく絡む。
ちょっとだけイメトレにお付き合いしてもらえませんか。
アレを10秒間、一生懸命イメージしてください。死にはしません、安全です。とにかく10秒だけ、そこにあるものとしてアレをイメージしてください。ええ、いま袖の中に入りましたね。はい、結構です。
では——いま、あなたの背中にびっしりとアレが張り付いています。もうタダじゃはがれません。アレは強力ですから。これも10秒間イメージしましょう。背中にびっしり。どうですか? もう背中が冷たくなってきませんか?
——サロンパスで。
正確には思考吹入じゃないけれど、嫌な感情は上手いひとが行えば、大なり小なり付与できるんです。
嫌な感情や心地よい感情を舌先三寸で植え付けることができるわれわれには、病でなくともその素質はある。いつだって、なにかの拍子に症状が発現するかもしれない。ぜんぜん特別なひとの、特別な症状でもない。
煙は運よく作文を出してもらう程度に立場にいます、いまは。
と、いうように「見える」「聞こえる」「感じる」「理解する」「経験したような感じがする」など、ネタが降ってくる過程でさまざまな感覚器が動いているように感じられると皆さんはおっしゃいます。煙のような「文章そのものが浮かぶ」よりダイレクトです。なぜ見える? 物書き以外でも見える? 視覚障碍者の方や白内障の方、近視の方や独房の死刑囚の方——それぞれ見えたり見えなかったりするんでしょうか? これ、だれか今年度の卒研に使えませんかね。出来上がったら買います。
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