第8話 集結

マーブルシティを拠点に大きな権力を持つ

ギルドが4つある。


市民や冒険者が会議などで利用するマ

ーブル会館の係員たちは心臓をバクバクさせて

彼らの到着を待った。


「おい、来たぞ」


係員達が固唾をのむ。


「あれがホーリーガーディアンズ……」


【ホーリーガーディアンズ】

ギルド序列2位


その先頭を行くのは聖騎士の鎧を来た金髪の男。

姿は30代前後。高い鼻とキリッとした見た目。


その後ろには似たような騎士の鎧を着た

冒険者たちが続く。


「す、凄い……あれが王族直属の

冒険者ギルド……」


「あ、ああ。あのギルドマスターは元々王族に仕える貴族らしいからな。他の冒険者たちとは地位も

名誉も違う。あの人に比べたら他の冒険者なんて」


そう言おうとした係員の首にひやりと冷たい

金属が触れた。


「他の冒険者なんて?

その続きを聞こうか。回答次第では

死ぬより辛い目に合うぞ」


「ひえ!? こ、この人ってまさか……

青焔(せいえん)!?」


突如として、陰口を叩いた係員の背後に現れた

忍者を見て、隣にいた係員が腰を抜かす。


その係員に死んだ魚の眼のような

不気味な視線が移る。


「す、すみません!

許してください!!」


たちまち、係員の二人は青焔に土下座する。


その瞬間、


「……冗談だ。脅してみただけだ」


マスクをしているから確証はないが、

笑みを浮かべてそう答える。


それが更に不気味で片方の係員は

小便を漏らしてしまった。


「行くぞ」


そう青焔が合図すると、眼の前を

いくつもの黒い影が通り過ぎた。


「お、おい大丈夫か」


「せ、先輩……今のってアサシンしか

在籍してないっていう雲隠れの衆ですか?」


【雲隠れの衆】

ギルド序列4位


「そうだ。あんまりいい噂は聞かないけどな。

なんでも、別の大陸で法に外れたことを

してるって噂だ。所謂、闇ギルドってやつだよ。

てか、お前、さっさとトイレに行ってこい」


「あ、はい!」


そう言われてトイレに走ろうとした係員が

誰かとぶつかった。


「ば、ばか!」


ここには世界で名のはせた冒険者たちが

うようよいる。

彼らの機嫌を損ねたりしたら

殺されるかもしれない。


先輩係員は急いで後輩係員の頭を下げさせて、


「すみません!!

うちの者が! 決して悪意が

あったわけではなくて」


「ああ、大丈夫ですよ。お気になさらず」


その優しげな言葉に先輩係員はほっとして

顔を上げた。


そこには若い冒険者が立っていた。


「あ、あの……すみません。

今日は雲隠れの衆、ホーリーガーディアンズ、

そしてアブソリュート・ルーラーズの方々の

会議がございまして。その……」


てっきり、先輩係員は彼が迷い込んで

しまったのかと思っていた。


そう思ってしまうくらい彼が若く、

覇気がなかったから。


そのときだった。


「おーい! 何やってんだ! レオ」


後ろから着た大男が少年の首根っこを掴む。


「迷子になるから一人で

行動するなって言っただろ。

会議室はあっちだ」


その言葉を口にした大男を目にして係員たちは

はっとした。


「もしかして……グレイス様ですか?」


「そうだけど?」


あれが冒険者最強とも謳われるグレイスかと

皆がヒソヒソとざわめきだした。


「あほが。ここが会議室だ」


後ろから来た鋭い双眼の獣人の男が呆れて言う。


「おい……あれって餓狼?」

「かっけぇ……」

「強さだったらあのグレイスさんにも

匹敵するってよ」


「え!? てことは、レオが正しかったのか?」


そんな係員達のざわめきなど気にも止めずに、

ガハハと豪快に笑いながら少年の背中を叩いた。


「いっててぇ……」


「よーし!

じゃあお前ら!行くぞ!」


そのグレイスの言葉に続々と冒険者たちが続く。

その異様な統一性のなさ。

他のギルドに比べて、雰囲気も容姿も種族も

個性がある。


「これが序列1位のギルド……

ってことはあの少年も!?」


小便を漏らして泣いている後輩の頭を撫でながら、

先輩係員は少年の姿を目で追った。


「一体あの子何者なんだ?」







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