第5話 赤坂健一
と、友達からメールが来た。 葉月は、行方不明になっていた。ただ、直前に家出すると言っていたため、家族もそこまで重く見ていなかったのである。ただそのメールが届き、家出でないことがわかった。しかし僕は絶対に葉月の親にこのことを言いたくなかった。死んだとわかったら別れも言えないまま死んでしまったと、葉月の親が会いに行くために死んでしまうと思ったからだ。…ずっと行方不明のままでいいと思った、それなら葉月の親が死ぬまではしないと思ったから。ただ「遺書」という文字が僕に重くのしかかる。…雨が降ったらもう読めなくなってしまう。
「行か…なきゃ」
僕は小学生から貯めていたお金を数えた。ざっと25万円、これくらいあれば余裕で茨剣山まで行けるだろう。僕はそこら辺にあるリュックを取ると家から出る。
「健ちゃんどこいくの!?」
「葉月、探しに行ってくる!」
母さんは何か言っているけど無視して駅まで走る。
______
…さてと、どうしようか。 行けるところまではきた、この先は歩くしかない。が、もうあたりは真っ暗になってしまった。
「はぁ…」
仕方ない、歩くか。重い足をなんとか動かして歩く。街灯など一つもない道を目を凝らしながら歩く、歩く、歩く。だが、
「…っ!?」
段差に躓いたと思ったら剥き出しにしてあった金属の棒が足に刺さった。ナイフなどで刺された場合、刺さったものを抜くと血が溢れて出血死するから抜くな。よくそう言うけれど、金属は地面に固定されているようで抜く以外の選択肢がない。
「…は、ぐ…っ…、、、、、はぁ…はぁ…はぁ…ふ」
なんとか金属を抜くと血がすごい勢いで出てきた。一瞬焦るが、念の為にと持ってきていた包帯を巻いてどうにか誤魔化す。…痛くて歩けないがどうしようもない。僕は這うようにして茨剣山までの道を進んだ。
日が登ってきた頃だ、僕は茨剣山についた。
……………葉月はそこで死んでいた。そして、幸せそうに笑っていた。 隣には遺書が置いてあって、ただ「健一。大好きだったよ、いままでありがとう。」とだけ書いてあった。
…そういうのは、両親に書けよ。
「は…づき…あいして…る」
足からの出血は多すぎて、とても助かる見込みはなかった。と言うか、ここまで耐えたのは奇跡的なことなのだ。
…葉月、今からそっちに行くからね
おやすみ
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