異世界でのセカンドチャンス

けん

プロローグ

静かな夜、藤沢の小さなアパートで、山本拓哉はひとりパソコンの画面を見つめていた。画面に映るのは、長年勤め上げた会社の退職祝いの写真。しかし、その笑顔の裏には、不安という名の影がちらついている。60歳、これからどう生きていけばいいのか。まだ自分にはやりたいことがある。そんな思いが頭を巡る。


「拓哉、いつまでもそうして悩んでいないで、何か新しいことを始めたらどうだい?」


かつての同僚、カズオ・サトウからのメッセージが、パソコン画面にポップアップする。彼はいつも拓哉を前向きにさせてくれる、貴重な友人だった。


「新しいことねぇ…」


拓哉は小さく呟きながら、ふと窓の外を見た。夜空には満天の星が輝いている。その中に一つ、特に明るく光る星があった。拓哉はその星を見つめながら、心の中で願いを込めた。


「もし、やり直せるなら…」


その瞬間、部屋は眩しい光に包まれ、拓哉の意識は遠のいていった。


目を覚ますと、彼は見知らぬ森の中に立っていた。空は青く、木々は異世界特有の鮮やかな色を放っている。そして、彼の足元には、古びた本が一冊。


拓哉は本を手に取り、その表紙に書かれた言葉を読んだ。


「『異世界でのセカンドチャンス』…これは…」


驚きながらも、彼の心はわくわくしていた。新しい世界、新しい可能性。60歳で迎えた、まさにセカンドチャンスだ。


そして、彼の新しい物語が、今、始まろうとしていた。

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