第31話 初迷宮②
現在『ゴルゴの迷宮』地下3Fにいる。ニーナとレナのコンビだと、ランク3の魔物が1体ずつであれば問題なく倒すことができている。
複数だと厳しいので俺が支援する。特にレナのHPだと一撃もらっただけで即死になりかねない。
「……コフ~コフ~」
息が上がっているのを気づかれないように、レナが我慢しているようだがバレバレだ。MPも3分の1ほどしか残っていないので、1度休憩を取ることにする。
「ここは行き止まりだよ?」
「ああ、ここで一回休憩だ」
「……ハァハァ」
ここまでで3個の宝箱から、マナポーション2個とポーション1個を手に入れている。
「おい、マナポーション飲んどけ」
そう言ってレナにマナポーションを渡す。マナポーションは少量だがMPを回復させる効果がある。材料も魔力草・綺麗な水・錬金術LV2で創ることができる。魔力草は大森林で見かけたので、今度大量に採取だな。
「……おいでは……ハァハァ……ない……」
レナを無視して付与魔法をかけ直す。ついでにヒールで二人を回復させる。
「ニーナ、迷宮の魔物と戦って問題なさそうか?」
「う~ん、ユウの付与魔法とレナの魔法で、なんとかなってるかな~。やっぱり地上と違って迷宮の魔物は強いし、攻撃も多彩だよね」
意外と冷静な分析をニーナがしているのに驚いた。
休憩とはいえ、俺はほとんど戦っておらず疲れていないので、試してみたかった錬金を試す。
アイテムポーチから、大森林で倒した魔物から回収したランク2の魔玉の欠片を出す。欠片は大小様々だが40~50個ほどだ。
掌の魔玉の欠片に錬金術を使用する。すると
「えぇっ! それって完全な魔玉だよね!」
「……驚いた」
レナは大して驚いていないように見えるが、あれだけの欠片で錬金してたったの2個しかできないとは……
早速、ニーナの『鋼鉄のダガー(6級):火属性』に『筋力上昇』と『敏捷上昇』の付与魔法を込めた魔玉で、スキル付与しようとしたができない。
まさかスキル付与は一回きりなのか?
仕方がないので『鋼鉄のナイフ(6級)』にスキル付与する。無事成功し、『鋼鉄のナイフ(6級):筋力上昇・敏捷上昇』となった。
「わ~い♪」
大喜びのニーナの横で、レナがなにか言いたそうにこちらを見てくる。
「……じ~」
レナが私もという目で見てくる。無視していると距離を狭めてきて、目と鼻の先まで来るので根負けして『モモンのマント(6級)』に『HP上昇』と『体力上昇』のスキルを付与する。
「……ふふ」
ついでに俺もランク3の魔玉とランク2の魔玉に、『HP上昇』『MP上昇』『筋力上昇』を込めて防具にスキル付与する。
黒曜鉄の鎧(5級):HP上昇・MP上昇・筋力上昇
黒曜鉄のガントレット(5級):HP上昇・MP上昇
それぞれの防具に、同じスキルを付与して効果が重複しないか確認したが、ちゃんとそれぞれ効果を発揮していた。
その後、地下5Fまで行ったところで戻ることにした。帰りはもちろん、転移石を使わずに同じルートで帰る。青白い顔したレナが若干可哀想だったが、体力の低いレナを鍛えるためにも楽はさせない。
宿に戻り、食事を終えて風呂に入ると、レナはそのまま倒れ込むように眠った。
ニーナも眠そうだったが、算数と文字をしっかり2時間ほど勉強させる。
「うぅ……」
「今日はここまでにするか」
「やった~」
ニーナは天然だが、決して馬鹿ではないので日々成長している。
「俺は今から迷宮に行くけど、ついて来たら怒るからな」
「なんで!?」
「俺もレベルを上げたい、ニーナも今日は頑張ったから疲れてるだろう。明日も迷宮に行くからしっかり休んどけ」
「むぅー」
ニーナがふくれっ面しているが、無理はしないと言い聞かせて渋々、納得させる。
迷宮の入口に行くと夜なのにまだ付与士がいた。
「お? 朝の坊主じゃないか。1人か?」
「ああ、お守りが終わったんで、今からは好きにやらせてもらう」
「ソロで迷宮は危ないぞ? まあ止めはしないがな」
付与士のおっさんが、ニヤリと笑う。命知らずな冒険者になにを言っても無駄だと、長年の経験で知っているのだろう。
「付与魔法かけてくか?」
「
付与士のおっさんがポカ~ンとした顔でこちらを見ていたが、そのまま迷宮に入って行く。
地下1Fからゴーレム・サラマンダー・サイクロプスなどを倒していく。
サラマンダーの見た目はトカゲで体長は1mほどだ。サイクロプスは1つ目の巨人で250センチほど、手には丸太みたいな棍棒を持っているが振り回すだけで脅威ではない。
ゴーレムは倒すと土くれに戻るだけで、素材もなしで魔玉しか旨みはないのが残念だ。
サラマンダーは魔法剣で水属性を込めれば一撃。ゴーレムは魔拳で一撃、サイクロプスも黒曜鉄の大剣の攻撃で一撃、サクサク進んでいく。
それぞれのステータスだが――
名前 :***
種族 :ゴーレム
ランク:3
LV :18
HP :322
MP :16
力 :264
敏捷 :3
体力 :∞
知力 :1
魔力 :9
運 :8
パッシブスキル
なし
アクティブスキル
なし
固有スキル
なし
名前 :***
種族 :サラマンダー
ランク:3
LV :15
HP :296
MP :136
力 :164
敏捷 :93
体力 :207
知力 :19
魔力 :99
運 :16
パッシブスキル
火耐性LV1
MP回復速度上昇LV1
アクティブスキル
精霊魔法LV1
固有スキル
なし
名前 :***
種族 :サイクロプス
ランク:3
LV :22
HP :571
MP :120
力 :510
敏捷 :99
体力 :284
知力 :23
魔力 :88
運 :30
パッシブスキル
夜目LV2
アクティブスキル
闘技LV2
固有スキル
なし
もちろん、スキルは全て奪う。特にサラマンダーの『MP回復速度上昇』は積極的に奪いたいので、見つけ次第優先して倒す。
地下9Fまで進むと、他の冒険者たちが休憩をしていた。
5人パーティーでレベル22~24、盾職1・前衛2・後衛2とバランスのいいパーティーだった。
向こうの冒険者の1人が俺に気づき、声をかけてくる。
「少年1人か? 仲間はどうしたんだ」
「俺はソロだよ」
ソロと伝えると冒険者たちは、ひどく驚いた様子だ。
「ここは地下9Fだぞ!? 信じられない」
「俺たちでもここまで8時間はかかっている。いつから潜っているんだ?」
「2時間ほど前かな」
「「「「「2時間っ!?」」」」」
ヒーラーの女冒険者がパーティーに入れてあげましょうと、リーダーらしき冒険者に言っているが、ありがた迷惑である。他の冒険者は、俺みたいなガキがソロでここまで来れるはずがないと、魔物かなにかじゃないかと騒いでいる。
騒いでいる冒険者たちを無視して行こうとすると、スキル『索敵』で3匹ほどの魔物がこちらに近づいて来るのがわかる。冒険者たちも気づいたようで臨戦態勢をとる。
「グウゥゥア゛ア゛」
現れたのはオーガ(亜種)1匹にオーガ2匹だ。
「さ、最悪だ……オーガ3匹……それも亜種が1匹いやがる!」
「ガアアアア゛ア゛」
オーガが一斉に『咆哮』すると、3人の冒険者が竦みあがる。『咆哮』に耐えた盾職の冒険者がオーガの前に立ち塞がるが、その横を通り抜けてオーガに向かって行く。
俺に向かって、オーガが頭上から拳を振り下ろして攻撃してくる。
「危ないっ!!」
冒険者たちが叫ぶが、その攻撃を左手で受け止める。
「へ?」
俺が片手でオーガの攻撃を受け止めたことに、冒険者たちが驚愕している。
「オーガだしこんなもんだろうな……」
予想通りの腕力にガッカリしたが、剣技LV4『閃光』を放つ。オーガの胴体が上下に分かれる。ジョゼフのおっさんの剣技だが、今の俺なら使える。
「ガ……ゴアアアアア!!!」
もう1匹のオーガが、仲間が一瞬で倒されたことに驚きつつも、飛びかかってくる。
こちらもその動きに併せて懐に飛び込み『魔拳』を腹に放つ。
込めた魔法は風魔法、正拳突きに風魔法の力で凄まじい速度となり、オーガの腹へ拳がめり込んでいく。
市民図書館で読んだ空手講座がこんなところで役に立つとは、殴られたオーガは『メ゛ギャッ』という鈍い音と共に腹が陥没して倒れる。まだ生きていたので首を刎ねると、その隙にオーガ(亜種)が逃げようとしたので、後ろから頭部から臀部にかけて真っ二つに斬り裂く。オーガも楽勝になったものだ。
「獲物を奪って悪いな」
そう言って振り返ると、冒険者たちは全員口が開いたままだった。
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