決戦岐阜城 後編

 戦端を開いたのは新人達による『サンレイ』の放出から始まった。


 鎧武者達は足元の畳を盾にし、『サンレイ』を防いでいる。


 その畳の隙間から火縄銃の様なマジックアイテムによる攻撃が飛んでくる。


 滝川一益が持っている巨大な火縄銃こと長大筒から巨大な真っ赤に輝く鉄の塊が放たれ、それをこちらは万能防御魔法で防御しようとするが、バリバリバリと防御魔法が割れていく。


 全て割られると瞬時に判断した月精は床に手を付けて土魔法で壁を瞬時に作り、間合いを作る。


 安心したのも束の間、鎧武者達が月精が作り出した壁をバターを切るかの様に太刀で切り裂き、こちらに突っ込んできた。


 更に丹羽長秀らしき鎧武者の床には魔法陣ができており、強力な氷の魔法がバンバン飛んでくる。


 それはフェニックスのドナルドが炎の渦を作り、氷魔法を相殺する。


 隙ができたと椎名が一気に信長に近づき、太刀を振るうが、柴田勝家と森長可の長槍によって太刀を防がれてしまう。


 信長は太刀が防がれた事で動きが止まった椎名に火縄銃を向け、放った。


 バン


 椎名は咄嗟にナイフの腹で弾丸を逸らすが、逸らした弾丸が壁に当たると爆発し、周囲の畳や襖が吹き飛ばされる。


 椎名は近くにいても危険と距離をとる。


 椎名を援護するために山姫とロドリゲスが前に出て、柴田勝家と森長可と一対一の状況を作る。


 山姫は金棒を振るい、柴田勝家の槍を幾度となく弾き、ロドリゲスは森長可と鍔迫り合いをしている。


 両者実力はほぼ互角。


 月精はゴーレムを大量生成し、明智光秀と堀秀政を新人達の魔法の援護もありやや優勢、ドナルドは池田が加勢して魔法の威力を強め、丹羽長秀の魔法を押していた。


 ただ戦局は互角。


 理由は滝川一益の長大筒による援護射撃で戦局が傾きそうなところを的確に援護するからだ。


 椎名は再び信長に挑み、信長は刀と火縄銃を使って迎撃を繰り返す。


 一進一退の攻防が十五分ほど続いた後、山姫が柴田勝家の槍を弾き、更に甲冑を金棒で上から叩き壊した事で戦局が動く。


 山姫に向けて滝川一益が長大筒を放つが、山姫が金棒でそれを打ち返し、それがたまたま明智光秀に命中し、明智光秀の鎧に大穴が開く。


 砲弾はコアまで到達していたようで明智光秀の鎧武者も動かなくなった。


 明智光秀に割いていた戦力をそのまま堀秀政に集中すると、堀秀政も捌ききれず、新人の北見園児(鬼との混血)がトドメを刺し、戦局がこちらに大きく傾いた。


 森長可と戦っていたロドリゲスも山姫が加勢すると、有利になり、丹羽長秀もドナルドと池田の魔法の火力に負け、炎の渦の中に閉じ込められていた。


 滝川一益もリロード時間に月精のゴーレムに襲われ、多勢に無勢···鎧を引っ剥がされ、ゴーレムにコアを破壊されていた。


 残るは信長のみである。


 椎名が抑えていたが、信長の攻撃により太刀はもうボロボロに刃こぼれし、強力な弾丸を捌いていたためか、身体中に火傷ができていた。


 他のメンバーが急いで援護に入るが、信長は床を思いっきり踏みつけると、畳がめくれて幾重もの壁となる。


 その壁に椎名が驚いて隠れたのを見破った信長は椎名が居る場所を畳を貫通して刀を突き刺した。


 しかし、肉を突き刺すような感覚は無く、ギリギリで避けていた椎名は刀が畳に突き刺さり、動けなくなった信長に思いっきり脇腹付近に蹴りを叩き込んだ。


 よろける信長にその場に居た全員が『サンレイ』を集中させる。


 光の塊に信長は飲み込まれ、数秒後、信長の甲冑と武具のみが残され、討伐が完了した。








「はぁ、全員無事?」


「無事です···」


「強すぎでしょ···」


 月精の言葉に皆口々に先程の戦いの事を語る。


「山姫さんとロドリゲスさんが前衛をしてくれたお陰で耐えれました。ありがとうございます」


 と新人の一人が言うが、ロドリゲスが


「山姫のお陰でだな。俺は耐えるのに精一杯だったが、山姫が鎧武者の一人を倒してくれたから戦局が大きく動いた」


「···そうだね。山姫がMVPだね!」


 と言っていたが、一人が内藤さんが居なくないかと気づき、内藤を探すと、信長が放った弾丸による爆発に巻き込まれて、下半身が吹き飛んでいた。


「内藤!?」


「俺が治癒するから周囲を警戒していてくれ! まだ将軍が残っているハズだからな!」


 とドナルドが叫び、手術を開始した。


 レベルが高かったこともあり、下半身が吹き飛んでいても、内藤の意識はしっかりしており、ドナルドが強力な治癒魔法でちぎれた下半身や内臓を復元し、十分も経たずに治してしまった。


「ありがとうドナルド···あれ? 力が入らない」


「見た目は治ってるかもしれないが、流した血の量が多く、下手に動くと治癒して再生した箇所と体が分離するからまだ立つな」


 月精が四体のゴーレムで内藤が寝ている畳を持ち上げて運ぶことになり、一同はそのまま宝物庫に向かうのだった。







 宝物庫は場違いなほどデカい鋼の扉に施錠がされており、施錠を太閤を倒した時に拾った鍵で開けると、中には千両箱やマジックアイテムの甲冑が大量に置かれていた。


 中には巻物型の魔導書も幾つかあり、すべて売れば二百億は固いのではないかと思えってしまう。


「これだけの資金があればクラン運営も更に楽に!」


「イブキさんも小躍りするでしょう」


「というかこのダンジョン本当に中級のダンジョンなのか? 最深部はメチャクチャな難易度だったけど」


「確かに···でも勝てたのだからこれで上級ダンジョンに挑めるね!」


「内藤は当分リハビリだな。無理はするなよー」


「うい、帰ったら病院に直行するわ」


「いやー! 千両箱って本当に大判が入っていると気持ちいいっすね!」


 と皆ゴーレムを召喚して宝物庫の宝物を片っ端から運んでいく。


 皆、気分上々かつ、ホクホク顔であった。









「イェス!」


 池田が流す、一軍メンバーのダンジョン配信を見ていたイブキは宝物庫の宝物の数々を見て小躍りしていた。


 これで融資の一部を返済し、クランの現物資本として残すことができそうである。


 来年のクランの総年俸は数倍に膨れ上がる。


 ざっと試算しただけで百億···いや、百五十億近くの年俸を支払わなくてはならないため、それに匹敵する宝物を一日で稼げたのは大きい。


 配信の方も池田のチャンネル登録者数が爆増している。


 百万登録者数を突破して百五十万に匹敵しそうである。


 ただ金を大量に手に入れたことを知った世間がどう動くのか···まだ私には予想できなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る