第3話 つづく道


 歩けども歩けども、通行く人も景色も同じ。

 灰色に濁った日常は無味乾燥で行く末はない。

 もうしばらくすればこんな意義の無い日常から解き放たれ、遥か都心で学業や友人との交遊に身を浸すことができるのだ。

 それなのに――何故、今。

 あの時想ったひとが目の前にいるのだろう。もうやめたいのに。終わらせたいのに。要らないのに。

「ねえ、今夜……暇?」

 もうこんな道を進んでいたくないのだ。なのに、どうしてあなたは、そんな、甘い道を。

 後戻りはできない。分かれ道を進むしかない。

 どちらへ向かえばいいのだろうか。もはや、わからない。

 進みたくない。その一言を飲み込むために、グラスの中の冷たい水をぐいと飲んだ。

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