【短編こわ〜い話】迷子のマリアを探して

神崎あきら

プロローグ

倉敷美観地区は江戸時代に天領(江戸幕府の直轄地)に定められ、商業の中心として発展した歴史を持つ。豪商の家や倉など歴史的な街並みが保存されている。倉敷川河畔に並ぶ町家は風情があり、美術館や民芸館などの文化施設が集まる。


スポット:倉敷物語館

あなたが白壁の街並みを散策していると、なまこ壁の立ち並ぶ路地から突然ひとりの少女が現われる。

「お友達とはぐれちゃったの」

少女は迷子になった友達を一緒に探して欲しいという。どうしても手伝ってほしい、とせがむ少女にあなたは仕方なく付き合うことにする。

 

「わたしは小町こまち、お友達はマリアっていうの」

マリアには不思議な力があり、居場所を音で教えてくれるという。あなたのスマートフォンに音声メッセージが届く。


1:お金の音 中国銀行 倉敷本町出張所

お金に関係することから銀行をイメージ

人形(マリア)の右脚がみつかる


2:笑い声 有鄰庵

しあわせプリンというチョコレートで笑顔が描かれたプリンが有名

人形の左脚がみつかる


3:水音 アイビースクエア

モネの庭から株分けされた睡蓮がある

人形の胴体が見つかる


4:犬の声 倉敷貯金箱博物館

大量のビクター犬が屋根に並ぶ奇抜な景観が有名

人形の右手が見つかる


5:船を漕ぐ音 倉敷館

観光案内所の二階から倉敷川を見下ろせる

人形の左手が見つかる


6:鳩のはばたきと雷鳴、教会のオルガン 大原美術館

受胎告知のイメージ

人形の顔が見つかる


すべてのスポットを回り終えると人形が完成し、小町とマリアはくすくす笑い合う。

「あなたも一緒に連れていってあげようと思ったけど、マリアがやきもちをやいちゃうからやめておくわ」

小町はマリアを抱いて笑いながら路地へ消えていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る