第14話

「仕方ねえ、なァ!」


 互いに向かって駆け出し交錯する瞬間、大男が横なぎにロングソードを振るってきたので仰け反りながら避けつつ、身体を捻って蹴りを叩き込む。


 しかし腕で防がれてしまい、蹴りの反動を利用して空中で身を翻しながらもう一度蹴りを叩き込むが、防がれ剣を避け着地。


 そしてそのまま繰り出され続ける剣を避け、拳を振るった。


「おっと、危ねぇ。レアスキル持ちとは言え随分と動くなァ。お前なんかやってたか?」


 大男に拳を止められ、僕は再び距離を取る。


「なにも、只のゲーム好きのオタクだよ。そう言うお前達こそ、本当に冒険者? ド素人の一般中学生にやられてたり、攻撃躱されてる訳だけど」


 そう言うと、大男は凄惨な笑みを浮かべた。


「調子乗ってんな、レアスキル持ち。だけどなぁ」


 その言葉を聞き、拳を構えた次の瞬間。


「えッ!?」


 捉えていたはずの男の姿が消え、僕は地面に転がった。


「ハハハハハ、馬鹿じゃねえのお前。俺が本気出してるとでも思ってたのか。言った筈だぞ? 俺は無様に転がってるコイツラより強いってな、えぇ?」


 僕は服が破れ、肩から血がだらだらと流れている右腕を抑えながら立ち上がる。


「硬ってーな。人間じゃなくてモンスター斬ってるみてぇだ。けどまぁ、そっちの方が長く楽しめるってもんだなァ!!」


 そこから先は防戦一方だった。落ちていたロングソードを拾って防いで辛うじて致命傷は避けてはいるものの、瞬く間に体に切り傷が増えていく。


「そらそらどうしたさっきの勢いは!」


「ガッ……!?」


 剣を構えて大男の攻撃を防ごうとしたが、僕は男の剣に炎が宿るのを見た。


「まさか、スキル!?」


「大正解ッ!! ご褒美には死をってなァ!」


 そして男が剣を振るった瞬間、男の剣が僕の剣を砕きながらそのまま僕の腹部に食い込み、僕は先輩が捉えられている所まで吹き飛ばされ、コンテナに突っ込む。


「ゲホッ!?」


 僕が何とか身を起こしながらも、血反吐を吐いたその時だった。


「有馬……君?」


 如何やら、僕がすぐ隣のコンテナに突っ込んだ音と衝撃で目が覚めたらしい。先輩がぼんやりとした顔でこちらを見てくる。


「有馬君、どうしてココに……。……なッ!? 有馬君、その傷は!?」


 僕はハッとして、遅まきながらも先輩に見られないように腹部の傷を隠した。


「いえ、ちょっと……ハハハ」


「私の、せいなのか」


 そう言うと、先輩は俯く。


「そんな顔しないでくださいよ、先輩。先輩にそんな顔させたくて、助けに来た訳じゃないんですから」


「どうして……。どうして助けに来た!? 私が何のためにココに来たと思っているんだ! それに、私は君を拒絶したんだぞ!? なのに!!」


「大切だからです、先輩が」


「えっ……」


「そりゃあ傷つきましたよ、凄く落ち込んで今日一日頭の中に何も入って来ませんでした。だけど先輩と過ごすのは居心地が良くて、楽しかった。貴方が酷い目に遭うのを見過ごせないと思った。友達……生徒会の一員として……いや、なんか少し違うような……兎に角、先輩が大切だと思ったから。なので、待ってて下さい。」


 静かに涙する先輩を尻目に、僕は再び大男に向き合う。


「ひゅーお熱いねぇ。それでこそ殺り甲斐があるってもんだ」


「わざわざ待ってたって訳か」


「まぁな。どう足掻いてもお前は死ぬわけだし、だったら会話させるだけさせてそこの女を絶望に叩き込んだ方が面白いだろ? にしてもお前、人間って言うよりミュータントって感じだな。小さな傷はもう治ってきてるっぽいし、さっさと片づけるか」


 確かに、このままでは僕は勝てない。もっと力があれば……。


『力が欲しいのか?』


 唐突に、周りの色が無くなり時間が止まった。


「え……?」


 僕が困惑していると、大男の隣に光が集まり人の形になる。そこに現れたのは……。


「僕?」


『そうとも言えるかもしれないし、違うとも言えるかもな』


 そう言って現れたのは瞳の色が僕と違って緑色な以外、僕と瓜二つの謎の人物だった。僕があまりの事態に啞然としていると、彼は僕に話しかけてきた。


『力が欲しいんだろう?』


「……欲しい」


『一応聞いておくぞ、何故だ』


「先輩を守る為に、コイツに負けない為に力が欲しい……!!」


『良いぜ、俺がお前の中の力を解放してやる』


 彼は僕の言葉を聞き、指を鳴らした。その瞬間、僕の中に得体の知れない力が沸き上がり漲る。


「これ、は……?」


『俺はお前の内なる力を解放しただけだ。だが、力に飲まれて人の心を失ったりするんじゃないぞ。俺はいつも、お前を見ているからな」


 そう言い残して彼は去って行く。


「おいおい……。可視化するほどの馬鹿げた魔力量。それも黒い魔力、だと?」


 彼が去り時間の流れが元通りになると同時に、大男の顔が引きつった。


「ふざけるなよこの化け物野郎……」


 正直不思議な事ばかりで理解が追い付かないが、これだけは分かる。この力なら、コイツに必ず打ち勝てると。


 「行くぞ……」


 僕は両足に力を籠め、飛び出した。


「来るんじゃねぇ!!」


 大男はまるで子供の如く剣を振り回すが、僕はその剣を避けながら大男の懐に潜り込む。そして、そのまま僕は拳に力を集中させて大男をひたすら殴打する。


「ガッ!? ゲッ!? ゲホッ!?」


 しかし大男もされるがままではなく、左手が光り魔法が発動して地面から岩が複数隆起してくるが、僕は後退しつつ避けた。


「クソが!!」


 大男が剣に炎を纏わせ周りに火球を展開したのを見て、僕は力を溜め全身に纏わせ、罅が入るほどに地面を踏みしめた。


「消え失せろッッ!!」


 僕は力を籠めたまま全力で走り出す。目の前の敵を倒す為に、先輩を助け出すために。


「ハァァァ!!」


 火球を搔き消して突き進み、僕は大男の眼前に迫り僕は拳を握る。


「ファイヤボールを腕の一振りで搔き消しただとッ!? この化け物がッ!? 来るなァァァァ!」


 僕の拳と、大男の炎の纏った剣がぶつかった瞬間。僕の拳は男の剣を砕き、そのままの勢いで大男に突き刺さる。


「これで終わりだッッッ!」


「ガッ!? アァァァァァ!?」


 そして僕が拳を振り切ると男は土煙を上げ、幾つもの倉庫の壁を突き破りながら吹き飛び気を失った。


「大丈夫ですか? 先輩、今縄を外しますね」


 全てが終わり僕は息を吐き出して力を抜くと、先輩の元まで歩いて縄を解く。


「ごめんなさい、有馬君。結果として君を危険な目に合わせてしまった……」


「謝らないで下さい、僕がやりたくてやった事なんですから。それはそれとして、次からは一人で無茶な真似しないで下さい。僕も一緒に居ますから。後、こういう時はありがとうですよ! 先輩!」


 僕がそう笑いかけると、泣きながら笑った。


「ありがとう……有馬君」


「どういたしまして、です。所でどうしましょう、あれ」


 僕は後ろい振り向き、腰が抜けたのか這いつくばりながら逃げようとする老け顔の女子生徒を見る。


「君に任せるよ」


 先輩は涙を拭いながらそう言ったので、僕はどうしたものかと考え始める。


「うーん、そうだ。えい!」


 そして僕は少し考えた後、先程使っていた力を少しだけ解放して力の塊をデコピンの要領で相手の後頭部に当てる。すると、ゴンッと良い音をたてて女子生徒は気絶した。


「うわ、痛そうだな……。まぁいい気味だが」


「ま、これくらいは当然の報いって事で」


 騒ぎを聞きつけたのだろう、段々とパトカーのサイレンの音が近づいてくる。


 その後僕達は倉警察に保護され、暫く事情聴取をされた後に帰路についた。




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 ここ最近更新遅くて申し訳ない、今回特に難産でした……。間が開きすぎると文章力が落ちてる気がする。後、就活で企業から求められた企画書と、自己PRの1分動画が後一週間で期限なのに全然良いのが思いつかない……。


 え、エッセイとかで怒られそうなレベルで更新遅いのにPVもブクマも星も爆増してる……? 噓……。滅茶苦茶嬉しいです! ありがとうございます! 頑張らなきゃ……!


 次回、回想最終&現代に戻ります。


 


 







 




 

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