第6話

 そして迎えたダンジョン攻略。朝、僕達は学園ダンジョン前の学園内ギルド集会所に集合していた。因みに探索チームはクラスバラバラで好きな人と組む事になる……。まぁダンジョン攻略って言っても学園の敷地内だから体育の延長みたいなものだ。


 ん? 僕のパーティー? それは勿論……。


「おーい、ヒロ君? 大丈夫? なんか死んだ魚の目してるけど」


「おい末広、大丈夫か? もしかして緊張してんのか?」


「あー、ホントですね。五徹目のウチの宰相みたいな目してますね……」


 はい、今聞こえて来た声で察しよう。そう、主人公組である。僕は集会場の椅子に腰を落ち着けながら、ぬぼーっと天井を眺めていた。


「ダイジョウブダイジョウブ。モンダイナイヨ」


「それ絶対大丈夫じゃない奴だろ……」


 本当にどうしてこうなったんだろうね。中学時代のボッチ生活からつい遊矢と組んでしまい、アイリスが遊矢経由で誘いを掛けてあっという間にパーティー入り。で、更に休み時間中に突撃してきた愛華の誘いもホイホイ受けて……。

 いや、僕も断る理由が見つからなかったのと、理由探して黙ってたら徐々に沈んでく愛華を見てられなかったからどうしようもなかったんだけどね。

 後、僕の目が腐っている理由はそれだけじゃない。


「大丈夫だぞ、スエヒロ君! いざという時は私が守るからな!」


 はい。宣言通り我がパーティーに、凛子さんとおまけに石塚副会長が加入しております。

 僕の目が腐っているもう半分の理由は貴方ですよ、凛子さん。


「アンタはなんでココに居るのよ! 三年生でしょうが!」


「おや、国民的アイドル様は先程の集会で何を聞いてたんだい?」


「まぁまぁ愛華も生徒会長さんも落ち着いて下さい。愛華、確か今回の学園ダンジョン攻略は新入生に生徒会を、より身近なものだと認識して貰う為に同行する事になったとか言ってたよ?」


 あ、なんか今のやりとり原作っぽい。と愛華と凛子さんのやりとりを仲裁する主人公を見て少し頬を緩ませた。


 それにしたって学園ダンジョン攻略にしては過剰戦力なんだけど……。だって僕らのパーティー、僕、遊矢、主人公、アイリス、愛華、凛子さん、石塚副会長の7人だよ? このゲームだとメイン編成とサブ編成の8人だからほぼフルパーティーなんだけど、本来は四人パーティーで丁度良くって、10層の強化オークでさえレベル1主人公が覚醒したら倒せたし……。

 凛子さんと石塚副会長は初期加入でレベル25だよ? 精々レベル20くらい有れば、普通に強化オーク倒せるし。いや、他のダンジョンとかメインクエの雑魚とかサブクエで出てくるようになるから分かるんだけど。


 それに主人公の神田勇獅が覚醒すると、獅子座の邪神レオの力が少しずつ使えるようになる。

 それさえ完全に使えればレベル60相当の中ボス、羊座の邪神エイリアスを文字通り片手間で瞬殺出来るようになる。それにしても原作ではこの羊座の邪神だけ何度も出てくるし、教団員共からの扱いも使い捨てって感じで雑だったし嫌われてたんだろうか。


 ……辞めよう、自信を崇拝する教団員からすらも雑に扱われる邪神とか泣きたくなってくる。


「ヒロ、時間ですよ?」


 まぁ、問題のオークは瞬殺されるだろうし命の危機はなさそうだな。よし、気楽にゲームのイベントを生で見れるものと思って気楽に行こう。


「よし、頑張ろう」


 そんな調子で考え事をしていると、どうやら時間になったようだ。僕は自分の頬を叩き気合いをいれると、皆の方へ歩き出した。






「いやー、やって来ました初ダンジョン! 緊張するなー」


 ダンジョンに踏み入れて直ぐ、遊矢はわざとらしく背伸びしながら言う。


「そうだね……」


 気楽に行こうだなんて言ったけど、実際は不安だ。だって前世では竹刀ですら握ったこと無かったからね。


「まあ、初めては誰しもそうさ。だが学園ダンジョンではいくら死んでもしなないし、レベルが上がって身体能力も上がるのと同時に体の上手い使い方も自然と分かるようになる」


 まぁゲーム中でもそう聞いてるし、他のダンジョンだとHP……この世界だと体へのリアルなダメージを軽減するバリアのようなものは有限で、大体の感覚で残数が分かるらしい。

 それを失うとほぼ体の耐久力が一般人並になり、HPを削り切られるような攻撃を喰らうとその攻撃の余波で大体死ぬか、とんでもない怪我を負う羽目になるそうな。


 だが学園ダンジョンではHP自体は無くなるものの、HPが無くなっても保護は消えずに入り口に帰還するようになっているそうな。まあHPを失うような攻撃受けたら死ぬほど痛いんだろうけど。


「ははは……話は聞いててもやっぱ怖いもんは怖いですよ」


「む、そうか? だとしても、大丈夫だ。必ず君は私が守る」


「過保護だなぁ。凛子さんに頼りっぱなしだと独り立ち出来なくなりそうだ」


「ふふ、いつもは私が支えて貰っているんだ。それくらいはしてもいいだろう。何よりも、私がそうしたいんだ」

 

 僕はそう嘯きつつも、不覚にも真摯にこちらを見据える凛子さんに少しドキリとした。普段はアレだけど、やっぱりこの人はいざという時に頼りになるんだよな。


 それに僕が支えてるって貴方は言いますけど、僕だって貴方に助けられたし助けて貰ってるんですよ。恥ずかしいから口には出さないけど。





 僕は少し、凛子さんに出会った時の事と中学時代に思いを馳せた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次回からの凛子との過去時代に入り、その後に本格的なダンジョン攻略です。多分土日はパン工場単発バイト行ってくるんで死にかけて投稿できないと思います……。余力があったら出来るかもしれませんが。


 応援してくれている方々いつもありがとうございます!

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る