魔法使いシャルルと竜の少女

室西アプリ

第1話

シャルルは目の前で焚き火を眺めてぼーっとしている少女について思考を巡らせていた。



─数日前─

「シャルル、私もう死ぬんだ。」

シャルルは恩師であるカナンに呼び出されたかと思えば、自分の死を告げられ呆然とした。

─まさか先生は何か大きい病を患っていたのか…クソ!なんで気づけなかった

「いや、病気とかじゃなくて寿命なんだけどね。」

シャルルの考えている事をあっけらかんと自分の死について話しだした恩師にシャルルは溜息を吐く。

「まぁ落ち着け。お前を呼んだのは、ある依頼をするためなんだ。」

先生いや、カナンは今までのふざけた態度が嘘のように真剣な雰囲気をかもしだす。

「依頼とは?」

シャルルはカナンに依頼の内容を恐る恐る聞いた。

彼女がシャルルに今まで依頼したものはどれも厄介なものばかりであり、死に際のものだからこれまでの中で一番厄介なものになるだろうと思ったのである。

「そう構えるな、お前にはな、一人の少女をガルンダンクをに連れて行って欲しいんだ。」

「やっぱり厄ネタじゃないですか!!」

シャルルは涙目になりながらカナンに縋り付

く。


ガルンダンク─この世で最も強大であらゆる生態系の頂点に立つ存在、竜達が集う地。

そこではあらゆる強者が弱者に成り下がる。

人間では、そこそこの強者である彼女でもどうなるかわからない。そんなところに見知らぬ少女を連れて行けと言っているのである。

そりゃあ、泣きわめきたくもなる。

「続けるよ。」

そんなシャルルの様子も意に介さずカナンは話を続ける。

「その子は『ナナ』って名前でね。ナンダフの森で出会ったんだ。最初は迷い込んでしまったのかと思ったんだか、驚いたことに物心ついたときから森にいたんだと。まるで、どっかの誰かさんみたいじゃないかい?」


「……」

シャルルは何も言わず続きを促した。

「更に驚いたのはナナには角と尻尾が生えていたんだ。そしてそれは竜のものだった。あの子になんてまそんなものが生えてるのかわからなかったが…なにかわかると思ってガルンダンクに連れて行ってあかげようと思ったんだけどね。先に体が碌に言う事を聞かなくなっちまった。」 


「あの子は自分が何なのかを知りたがってる。どうだい…受けてくれるい?」


カナンは口調こそ、疑問形だがシャルルがこの依頼を受けてくれる事をかくしんしていた。なぜなら、さっきまであんなにみっともなく泣き喚いていなのに今はもう、覚悟が籠もった目で静かに自分を見つめているのだから。


「わかりました。先生私、『シャルル』はその依頼を引き受けます。」


シャルルははっきりとした声でカナンに告げた。


「そうかい…ありがとうこれで、安心して逝けるよ。」

そうしてシャルルが依頼を受けることを告げてすぐ、笑顔を浮かべ、眠るように息を引き取った。


「お休み。先生。」




「だいじょうぶ?」

シャルルは先程まで焚き火を眺めていた少女ナナによって思考の渦から引き上げられた。

「ねェ…シャルル」

「どうしたんだい?」 

「私ね、さっきシャルルが言ってたガルンダンクをってところに行ってみたい!そこでなら…私が何なのかを解るかもしれないから!!」

「そっか…じゃあ明日の朝日の出と同時に出発しよう。今日はもう寝なさい。火の番は私がしておく。」

「はーい!おやすみ シャルル!!」


「あぁ、おやすみナナ。」



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