婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者を諦めない

婚約解消後

アリオンから、衝撃の婚約解消を言い渡された後、クロエは家に帰り、ベッドの上につっぷし、しばらく泣いていた。

なぜ？どうして？という疑問と、こんな自分だからアリオンに嫌われてしまったのだという後悔が押し寄せ、3日間何も手につかなかった。

学園を休んでしまったが、もしかしたら、アリオンが様子を見に来てくれるかもしれない、先日の婚約解消の言葉は、気の迷いだったと取り消してくれるかもしれないと期待をした。

しかし、姿をみせてくれるどころか、体調を気遣う便り一つも届かなかった。

家にこもっていると、嫌な方にばかり考えてしまう。

クロエはもう一度、しっかりアイオンと話をしようと思った。アリオンが何を思って婚約解消という決断に至ったのか、知らなければ納得できなかった。

クロエは心配する家族をよそに、アリオン邸を訪ねたのだった。

◇

アリオンの邸宅を訪ねると、アリオンの友人が来ており、今はお会いになれませんと侍従から伝えられた。

どうしても会いたいと押し問答していると、

中庭にセリーナとアリオンが笑いながら話しているのが見えた。

クロエは信じられない気持ちで、侍従を押し退けて中庭まで入り、２人の前に飛び出した。

「信じられないわ！私のことは放置だったのに、こんな女と家で仲良くしてるだなんて。。。」

セリーナを睨みながら吐き捨てると、アリオンが困ったように、けれど強い口調で言った。

「クロエ、この前の話は、２人の時にしてくれないか。セリーナは関係ない。それに、今は会えないと伝えたよ。突然来て、こういうのは困るからやめてくれ。」

アリオンがそういうと、セリーナは目に涙をいっぱい溜めて、悲しそうに言った。

「いいえ、立場もわきまえず、お邪魔してしまった私が悪いんです。。。美しさも家柄も何もかも敵わないのに、こんな平民がアリオン様と仲良くして、良く思わないのは当然です。クロエ様、許してください。」

クロエは、セリーナがわざとアリオンの同情を買うような言い方をしていると気づいていた。

アリオンはセリーナを気の毒な子だと言うが、クロエは、セリーナはかなり計算高い子だと思う。そんな女にアリオンを取られてしまった自分自身がクロエは許せなかった。

「セリーナ、何もかもわざとでしょう。アリオン様を私から奪おうと思って近付いた、、、」

クロエが言葉を続けようとした時、アリオンが叫んだ。

「もう止めてくれクロエ！！」

「君からそんな言葉を聞きたくない。セリーナは悪くない。悪いのは、セリーナに惹かれてしまった僕だ。。。」

その言葉は聞きたくなかった。

クロエはお互いかばい合うように立っている２人を見て、乾いた笑いが出た。

悪者は私なのね。２人の仲を引き裂くのが、今のクロエの立場であると初めて理解できた。

「・・・・・お邪魔しました。」

消え入りそうな声でそれだけ言い残し、クロエはその場を後にした。