13 悪巧み?
( アイリーン )
「 このままじゃ〜不味いわね。 」
私はボソボソとメルク、ルーン、キュアと顔を見合わせて言った。
また勇者様に置いてかれた私達はイシが洗濯物を干している間、すっかり恒例となっている ” 勇者様と如何に親密になるか? ” を相談する会議の真っ最中で、円になって座っている。
「 そうねぇ〜思った以上に全然お近づきになれな〜い。
一緒に戦っている内に恋心が芽生えるかと思ってたのにぃー。
冷たい目で邪魔って言われちゃう。
まぁそんなクールなところも素敵♡ 」
メルクが手を頬に当ててウットリした顔を見せると、キュアが顎に手を当て、ううーん……と考え込む仕草を見せた。
「 せっかく私達は他の女性達を出し抜くためのアドバンテージを手にしたというのに、このままではそれが水の泡ですね〜。
その他大勢の女性と同じになってしまいます。
どうにか旅を終えるまでに少しでもリードしなければ……。 」
強く美しい完璧な勇者様。
その姿を一目見た者は誰も彼もが彼の虜になる。
それは勿論私も他の仲間達も……。
モヤモヤとした嫌な感情が心の中に漂う。
そんな完璧な勇者様の周りには沢山の女性達が群がり、それを出し抜くのは中々難しい。
しかし、なんと神託にて運良く勇者パーティーの仲間入りできたため、ここで一気にお近づきになりたい、そう思っていたが……。
一切相手にされずに追い払われ続ける日々を思い出し、四人で同時に、はぁぁぁ〜……と大きなため息をついた。
愛嬌よく笑ってもダメ。
色仕掛けもダメ。
優しく気遣ってもダメ。
強引に誘ってもダメ。
正直お手上げだ。
「 このままじゃ〜全然仲が進展する気がしないぜぇ〜。
まぁ、あの雑用のおっさんみたいに嫌われてはないけどさ。 」
私たちは同時に、あ〜……と頷いた。
勇者様に与えられるギフト、異世界人は、勇者様が望む物を持ってやってくると言われている。
見た目麗しい美男美女が多い事から強力なライバルになると思いきや、やって来たのは中年の冴えないおじさん。
ホッと胸を撫で下ろしたが、勇者様は相当怒ってしまったらしく、異世界人のイシにそれはもうキツく当たり始めた。
そのあまりの冷たい態度と乱暴な扱いに、最初は驚いたが、それが自分ではないことに安堵と優越感を抱く。
「 ……あのおじさんって考えてみれば凄いっちゃ凄いわよね〜。
私だったらあんなに酷い扱いされて話しかけられないわ。 」
「 たしかにねぇ〜。
まぁ、鈍いんだと思うわよ?嫌になっちゃう! 」
お色気が効かなかったメルクはムスッ!としながらおっぱいに手を当てて激しく揺らす。
そのブルンブルンと凄い動きを見せるソレをジッと見ながら、またしても話題は振り出しへ戻り、もう一度全員でため息をつく。
「 愛想も色気もダメじゃ何がいいのよ〜……。
そもそも勇者様はご飯も元々必要ないから料理アピールもダメ!……なのはおじさん見てて分かってるし……。 」
うう〜ん……と頭を悩ませていた、その時、ルーンがポンっ!と手を叩いた。
「 あっ!母ちゃんが前父ちゃんに使った手らしいんだけどよ、酔わせて襲うってのはどうだ?
そのままその日のうちに結婚したらしいぜ! 」
ナーハッハッ!と笑いながら言うルーンに私とキュアはドン引き。
ビシッとルーンを指差す。
「 それ犯罪じゃないの!!
あんた、それよくお母さん捕まらなかったわね。 」
「 んん〜??
父ちゃんはそれが嬉しかったらしくて喜んで結婚したらしいぜ。
獣人は如何に情熱的に積極的に口説くかが大事だからな! 」
「 人族とは考えが根本的に違いますね……。 」
キュアと二人で呆れながらため息をついたが、突然メルクがオッパイの間からササッ!と小さな小瓶を取り出したので、全員の視線はそれに集中する。
「 何よ、それ。 」
ジトっとした目でソレを見ながら問うと、メルクはニンマリと笑った。
「 対モンスター用の目眩薬。
モンスターを一瞬目眩状態にすることができる薬だけど……人族なら飲み物に一滴でも垂らせば泥酔状態に出来るわよぉ〜。 」
フリフリと振られる小瓶を見つめて、私たちはゴクリッと喉を鳴らした。
「 ちょっ……ちょっとそれはいくらなんでも……。 」
「 そうですよ。犯罪ですし……。 」
私とキュアはそう言って止めようとしたが、ルーンはグッと拳を握りニヤッと笑う。
「 良いもんがあるじゃねぇか〜!
よしっ!これで勇者様と結婚するぞー!アタイ1番〜! 」
「 だ〜め!これは私のアイテムなんだから1番は私♡ 」
ワイワイ騒ぎ出すメルクとルーンを見つめ、キュアと顔を見合わせると、キラッと目を光らせた。
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