異世界転移したら、騎士軍が魔王様と組んでたので世界終わってた 〜なので軍隊長としてちょっくら世界救ってみた〜

ハチニク

第1話

カンカンッ。


「被告を懲役5年8ヶ月に処する。」


俺は榎本伝えのもとでん、未解決の強盗事件をなぜか俺が擦りつけられ、警察も犯人が俺じゃないとわかっていても、俺のことを逮捕し、事件を無理矢理に解決させようとしていた。懲役5年8ヶ月が言い渡された俺はこれからどんな刑務所生活が待っているのだろう。

 

普通の会社員として真っ当な生活を送っていたのに、家族は事件をきっかけに疎遠となり、彼女は俺の親友と付き合い始めたと言う。今日はきっと、いや絶対に人生最悪な日だ。これから刑務所でどうしようと考えながら、俺は絶望の淵にいた。


刑務所生活にも少し慣れてきた1ヶ月後のことだ。俺は刑務所の食堂で、世にも奇妙で不思議なことを耳にした。異世界転移という単語が周りの受刑者たちから聞こえる。


「異世界転移できるらしいぜ。やばいってまじで。俺こんなとこ出て、異世界行ってみたいわー。」


バカバカしい話を聞きながら、俺は彼らを無視して、汚らしくて質素なご飯を口にした。すると食器トレイを両手に持ち、隣に座った70代近いおじいさんが俺のことをじっくりと見る。


「君、どうしてこんな所におるのじゃ。ここは君のような人間がいるべき場所ではない。」


俺が冤罪で刑務所に入ったことがバレたのかと思い、少し、おじいさんの言っていることに興味が湧いた。するとおじさんはこう言った。


「かわいそうに。そうじゃ、異世界転移じゃ。異世界転移をさせてあげようではないか。」


「何を言ってるんだおじいさん。」


もう無視ができずに咄嗟に反応してしまった。


「なんじゃ、異世界転移ができないと思っとるんか。なら、明日の夕食後、余暇時間に私の所まで来い。必ず、異世界に連れてってあげよう。」


そんな話、バカしか信じないと思い、おじいさんに何も言わずにその場を去った。しかし、何故かおじいさんの言っていたことが本当のように感じてきてしまったため、次の日の夕食後に何もすることのなかった俺は、おじいさんのいたテーブルまで行き、腰を掛けた。


「そうかそうか。やはり、あんたさんは来ると思っておったんじゃ。安心してくれ。ちゃんと異世界転移の準備はできておる。この飲み物を飲むだけで、あんたさんは異世界に行ける。ワシを信じてくれ。」


謎の緑色の液体が入った瓶を渡され、これを飲むように言われた。こんな物を刑務所内に持ってこれることなんてほぼ不可能である。それを不思議に思いながら、余暇時間が終わり、消灯されると、自分の部屋で俺は気味の悪い緑色の液体を飲み干した。しかし、何も起こらなかったため、あのおじいさんに騙されたと思いながら、俺は寝た。


◇ ◇ ◇


仰向けで起きると、そこは独房の天井ではない。もっと豪華で、華麗な場所だとすぐに気づく。


「あんた、早く起きて」


声がする方を見ると、なんとも美しい女神のような方がいる。まさかの異世界転移成功?そう考えた瞬間、女神様はこちらを見てこう言った。


「まだ異世界転移はしてないよ。ここは異世界先での職業を決める場所だよ。」

まるで心を読まれたかのように彼女は俺に話しかけてくる。気色悪い。っていうか、この子めっちゃかわいいじゃん。


「きっも。」


え、やっぱ心読まれてんじゃないかこれ。


「じゃあ早速だけどさ、職業適性診断始めるよ。」


「え、なんですかそれ。」


「職業決めるんだって。診断された職業を異世界でやるの。」


えーまじか。勇者様とかになりたいな。と思いながら、女神様は俺の方を虫けらを見ているような目でみてくる。ちょっと経った後に、彼女は俺に悲惨なことを突きつける。


「あー、あんた騎士だわ。じゃあ、騎士ライフ楽しんできて~。」


え、めっちゃ正義っぽい。勇者ではないものの、良い奴としてはとりあえず活躍できそう。そう思いながら、私は急激な睡魔に襲われた。


◇ ◇ ◇


次に気がつくと、女性の声が聞こえてくる。


「エデン様」


「エデン様ッ」


「エデン様ッ!起きてください!」


仰向けで目を開けるとそこはもう刑務所の部屋ではなかった。明らかに外の強い日差しが俺の顔を照らす。近くには、少し大人びた髪がグレー色のボブの魔法使いらしき姿の子がいる。俺のことをエデン様と言いながら、ずっとこっちを見てくる。このお嬢さんは困っているようなので、とりあえず助けよう。


「どうしたんだい、お嬢さん。」


かっこいい声で彼女にそう言うと、顔をしかめながら、こう叫んだ。


「冗談言ってる場合じゃないですよ!作戦をみなさんに伝えてください!」


「へ?」


目の前を見ると、自分と似たような軍服を着ている人が3人いる。剣と盾を持った人と戦っているみたいだ。状況はわからないが、とりあえずお嬢さんが困っているらしいので、それらしいことを言おう。


「前にいる2人は俺の援護、あとの1人は、囮であいつを誘き寄せて。お嬢ちゃんはそこで俺の勇姿でも見てて。」


囮の1人が猫を魔法でいっぱい出しながら、相手の注意を引いている。その隙に、俺と残りの2人が相手に近づきながら、攻撃。俺は魔法の使い方なんて知らないので、ほとんどは援護の2人に任せている状態。それでも、剣と盾を持った彼にはダメージが入っているように思えなかった。


「お前ら絶対に後悔するぞッ。」


などと意味のわからないことの言う相手。なので、適当に呪文を唱えて、何かの手違いでなんか出ないかなと杖を持ちながら、


「アブラカダブラ」


と呪文っぽい言葉を唱えた。すると杖からありえないほどの黒くて硬い槍のような物質が大量に出てきた。剣と盾の輩を倒すことができた。


みんながホッとした様な顔でこっちをみてくる。俺は座り込んでいた先ほどのお嬢さんのもとに寄っていった。よく見ると俺の着ていた服の胸ポケットあたりにあった紋章と同じ紋章が、彼女の服の肩にもあったため、同じ騎士軍なのかと気づいた。


「なんで途中で寝たんですかエデン様。」


彼女がそう言ってきたので、適当に「ごめんごめん、眠かったんだ。」と、話を合わせた。


「っていうか、俺たちは誰と戦ってたんだ?」


そう聞くと、とぼけるなと言わんばかりの表情で全員が俺のことを見てくる。


「勇者様です。」


「え?なにしてんのまじで。」


「あなたが命令したんですよ。」


「え?俺なにしてんのまじで。」


「俺たち軍隊のはずだろ?なんで勇者様なんか倒しちゃってんの?」


「あなたが命令したんです。」


お嬢さんはずっとそう突き通してきた。その女性魔法使いによると、俺の所属している軍はウォーデンズ騎士軍らしく、その騎士団長が我々に勇者様討伐を命令したと言うのだ。


俺は正義の味方だと思っていた軍隊に入ったが、この異世界では騎士軍は己の地位を駆使して、世界を無茶苦茶にしていた。国民を奴隷として扱い、過度な労働をした末に、全ての富を軍が独り占めしていた。王様よりもその軍が強力となっていた軍事政権の異世界に私は来てしまった。全てはウォーデンズ騎士軍と魔王様が手を組んだことから始まったらしい。


「俺こんな異世界、嫌やわああ!」

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