暇つぶしに探偵中。

ミッシェル(野郎)

第1話 始めに。-どのような物語か、警告、そして解説を-

 ミステリーといえばなんと言っても殺人事件である。密室とかトリックとか現実離れしている世界、それがミステリー。

 早い話がフィクション−作り話の虚構の世界である。

 昔、とある漫画に探偵に最も必要な才能は殺人事件に遭遇する体質だ、とか描かれていた作品があったが、早い話、そんな体質がありえないように、普通の人間が殺人事件に遭遇するなど、あり得ない。よって、その漫画で描かれた体質が最も必要な才能なら、探偵の才能がある人間など、基本いないわけである。

 当然、私、小松香織(コマツカオリ)にも、そんな体質はない。よって、探偵の才能はないと言うことになる。

 だが、しかし。ミステリーとは広義な意味を持つ言葉で、もちろん、殺人事件の謎解きもミステリーだが、それは狭義であり、ミステリーとは殺人事件もの以外でもミステリーとされる言葉である。

 謎。別に人が死ななくても、謎が存在し、それを探偵のような役割を果たす誰かが解きほぐし解決する。それも広義の意味で物語のジャンルはミステリー。

 だから、このお話もまた広義ではミステリーで、あの人は探偵みたいなものだ。

 劇的な解決は用意されていない。

 御涙頂戴モノのエンディングも用意されていない。

 ただただ、たまたまの暇つぶしで、遭遇した事件の謎を解き、人生を変えるような薫陶は何ももたらさず、ただただ暇つぶしの時間を提供するだけの物語。

 そんな感じで。今日も彼、彩瀬夏一(アヤセナツヒト)は暇つぶしで探偵中。

 ありふれた日常世界で見つかった謎を、解きほぐす物語。

 過度な期待を抱かず、そんな気楽に楽しめる小話をご所望の方はどうぞ、続きへお進みください…。

 

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