遠野対策機関 弐
トモフジテツ🏴☠️
第一章 プロローグ
第一話 草木が燃える丑三つ時(前編)
「こちら
ダメだ、通じない。
令和になってから大量の基地局を増設して強化したって話はどこにいった?
高速道路では使えたスマホも、圏外。
本来ならば繋がる場所、つまりこれは外部からの通信阻害を受けている可能性が高い。
「カナヤ君、
「ありがとう佐原! 谷丸、寺はもう見えたか!?」
通信環境の確認、隣にいる俺への伝達、上空を飛ぶ谷丸に対しての呼びかけ、それら全てを同時にこなすのが
タイトスカートもビジネススーツも長い黒髪も、山道での襲撃から逃げ走り続けたことで泥だらけになっている。
俺もそろそろ体力が厳しい。
谷丸、さっさと状況報告してくれ!
『謙一先輩、お寺! 見えてきましたよ! あと葵さん、敵の様子ですよね? ぶわーってきてドーンですっ!』
翼を生やし空を飛ぶ
機関が量産した通信用
『カナっち、それじゃ伝わんないっすよ! カナヤさん、小型の群れと大型樹木は進路変わってないっす!』
通信にもう一人の声。
谷丸に抱えられ、共に上空から観測する
『サナっち、速度や高度……向きとかリクエストあります?』
『アタシ的には今のまま飛んでくれて大丈夫っす、いつでも撃てるっすよ!』
谷丸と沙苗の二人は、俺達の頭上より遥か上にいる。
再び
運動を苦手とし、虚弱体質な固定砲台である沙苗を運び支える役割を……谷丸が担っている!
『サナっち、撃っちゃってくださいっ!』
『おっけーっす! いくっすよー!』
ノイズ交じりに、断続的な……上空からとはまた別な声、通信! 声の主は男!
『……こちら……隊……こちら遠野協力分隊!』
「陸自の
『そうだ! 貴官らの目的地は山間部を抜けた先の寺社と判断、可能なら手前の路面で合流、問題は?』
「問題なし、助かる!」
やはり、対
『俺は陸上自衛隊、
「
*
『どうです? サナっち』
『ダメっすわ。カナヤさんも聞こえるっすか? あんましダメージ通ってないっすー』
高速道路で俺達を襲撃した巨大な樹木型の
奴に当てた沙苗の
『健一先輩、火! 火が来てます!山!』
『カナヤさん! カナヤさんと
「火災!? いきなり!? くそ、どうする佐原!」
「谷丸ちゃんサナちゃん観測ありがと、カナヤ君は……こっちに!」
耳元から谷丸と沙苗の声。俺と佐原に迫る危機をいち早く伝えてくれている。
その時、隣を走る佐原に俺は突き飛ばされた!
「カナヤ君、下がって!」
そのまま、佐原が火だるまになる!
「熱、あっっっつ! 厄介なの来た!」
機関謹製のビジネススーツは燃えることなく、炭化したはずの皮膚も艶やかな黒髪も即時復活した。
『わ、健一先輩! 炎以外にもう一体、空にっ!私達の方に来てますっ!』
『瞬間移動!? 危なっ、ブレード攻撃!? カナヤさん、怖ぇの出たっす!』
まだ増えるのかよ! いい加減にしろ!
ひとまず状況確認と、指示!
「谷丸、飛んで逃げ切れそうか!?」
「カナヤ君、こっちはもう少し下がって!」
『逃げれます、謙一先輩!』
『あんま高くは飛べないみたいっすね?』
「カナヤ君、この赤い個体は以前話してくれた……」
「ああ、可能性は高い。イフリートかもしれない」
『新しい敵、割と弱かったりしますー?』
『カナっち調子こいたらヤバいかもっすよ!』
谷丸がイキりだした、まずい!
俺と佐原の眼前に立ちはだかる灼熱の驚異も看過できない。
だが、俺の読みが確かなら谷丸と沙苗を襲っている〝瞬間移動〟と〝ブレード〟を使う奴の方が危険だ!
「佐原は赤い奴に対応、格闘か遠距離かは任せる! 谷丸はガン逃げ!」
「カナヤ君、了解!」
『ギリ避けれる速度ですっ!サナっち、もっと高く飛ぶからしっかりつかまってくださいね!』
『おけっす! カナヤさん、この敵……前世のお話で心当たりは? ヨウカイっすか? 都市伝説っすか?』
もう一つの、令和日本。
それは中学生の頃、俺が転生してきたこの世界。
ここには妖怪の「妖」という字が存在しない。
竜の文字もドラゴンという単語も、鬼もオーガも、ネットで検索しても何も出てこない。
伝承も民謡も都市伝説も架空の財団も、俺が愛した「物語」のほとんどが消えている。
文献からウェブサイトまで多くが、消えたというよりも最初から「なかった」世界。
しかし、この世界には怪異も収容物も「実在」する!
「谷丸、沙苗、聞け! ブレードの奴は今確認できてる四種の中で一番ヤベえ! 引き続き逃げろ!」
「カナヤ君、仮称イフリートは足が遅い!私達でも振り切れる!」
『謙一先輩、やってます! 飛んでまーす!』
『動物っぽい奴は全部、高速道路から山に入ったみたいっす! あっちはユーマか宇宙人っすか!?』
佐原と二人、炎の怪異から走って逃げる!
そして上空の谷丸と沙苗に指示を出す!
俺は転生前の現代日本で、多くの神話やオカルトに触れてきた。
そして転生後、前世で大好きだった「財団」と少し似た組織である「機関」の職員として生き抜いてきた。
俺は覚えている、多くのバケモノや異常実体……その
前世の知識、それが俺の第一の武器だ!
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