流れ作業

 裁判は続く、判決は怒涛のごとく下る。

 さながらコンベアの流れ作業のように。


「タルタ財閥、カモルゾー商事ゲドンド国外営業課長、無罪。当該時期にトルリア公国出向のため問題なし」

「ありがとうございます」


 何も無い者。


「ベルソンヌ財閥、キュワ鉄鋼社長ベルドドン、罰金大金貨5枚、賠償白金貨13枚、及び社長退任、懲役15年、執行猶予5年」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「証拠を提出したカトリノー氏にいうとよろしい」

「はい、はい、直ちに!」


 救われたもの。


「ベルソンヌ財閥、ベルソンヌ商事マリリーズ経理課長、帝国の利益を損ねた罪により死刑」

「なぜ!なぜですか!私は上の命令で」

「旦那のでしょう?極めて悪質であり列挙すれば罪状はきりがない。よって一番大きい罪状のみを提示する、それに他の罪状でも死刑が決まっている。すべての死刑を実行されたいのであれば処刑人に凌遅刑の準備をさせます。斬首とギロチンと絞首刑と……。ああ、最初であればギロチンでよろしいですが」

「私は被害者です!」

「凌遅刑がお望みだそうだ、それでは罪状をすべて読み上げ……」

「いやぁ!ギロチンでギロチンでお願い致します!」


 相応の報いを受けたもの。


「ロートルド財閥、ゴルゴル出版アクトジエット社長、欠損金の繰戻しによる還付」

「うおおお!ありがとうございます!」

「僭越ながら財閥解体でやっていけるのですか?」

「無理です!この金でたたみます!」

「…………以上です。この度は国税庁国税局のミスでご迷惑をおかけしました」

「いいえ全然!ようやく財閥から解放される!なにがすべての仕事を網羅するだ!やっほー!」

「…………」


 別のところから帝国の不備が見つかったもの。


「ベルソンヌ財閥、ベルソンヌ馬車株式会社イントツルス社長、此度の告発と財閥解体のきっかけにおける功績により帝国の利益を考えた行動として無罪」

「自主的に被害者へできる限りの賠償させていただきます」


 功績と帳消しにされたもの。


「ベルソンヌ財閥、ベルソンヌ不動産ベルトラン社長、外患罪、外患援助罪、外患予備罪、族滅。三親等」

「それは娘は!」

「売国奴の末路はこういうものだ。安心してほしい君の叔父たちも死刑になったから変わらないとも」

「欺瞞だ!なにが外患だ!これで死刑は……」

「連れて行け」


 詰んでいたもの。


「タルタ財閥、コンクリッジ保険ゼジュユルド・ホーム社長、保険金不正請求、詐欺。寄付金強要含めて罰金アルミ金貨20枚、賠償アルミ金貨10枚。会社は業務停止を命ずる。懲役20年」

「寛大な判決ありがとうございます」


 運よく死刑を回避できたもの。


「ロートルド財閥、アシュルトム造船所バーゲンハイム会長、無罪。引き続き帝国のため働くように」

「寄付金強要に関しては自主的に被害にあった会社に弁済いたします。以降は心を入れ替え帝国の為働きます。上の命令であった言い訳はできませんので」


 国家のため完全に見逃されたもの。


「高田財閥、高田鉱山開発公社高田・ガンギブソン・忠生社長。保険金詐欺、帝国の国家横領、帝国に不利益を与えたとして死刑」

「なぜだ……なぜ私が死刑なのだ……」


 国家が見逃す価値もないとされたもの。


 それぞれ結末は異なるが大急ぎで出されていた判決はほぼ1日で大物を残り終わった。ことは謀反騒動に匹敵するので手続きの大幅な簡略化をした結果である。

 証拠の真偽に関しても押収資料で大まかわかっており、詰められなかったが極めて怪しいものは他の真っ黒な人間の族滅で処理した。

 被害企業がしれっと後釜に座るのであろうがウェラー公爵の統制を外れた財閥よりは帝国の統制ある新しい企業のほうがよほどマシである。

 ウェラー公爵の財布の残りを粉砕したのだと思う反面、ただの打ち出の小槌のようなものに過ぎなかったではないかと思う中で傍聴人もこれでよくなるならいいだろうと思っていた。


 無罪をすでに言い渡され席次授与を内々に伝えられたカトリノーは傍聴人席で自分がとどめを刺した人間と、刺すまでもなかった人間、存在も知らないのに罰せられてる人間、国家の問題で見逃さざるをえなかった人間を見てため息を付いていた。

 全員殺してしまえば後腐れもないのに、大半が平民である以上反貴族派がでしゃばるからだろうか?それとも平民派が中立をかなぐり捨てるか?

 全く愚かしい、罪は罪だ。貴族排斥派のバカどものように見逃したうえで帝国の利益といいつつ制御できなくなる日が来るだろう。

『法を為すの弊、一にここに至るか』となったほうが私はマシだと思うがね。

 この国に必要なのは判例を引き出すのがうまい法務大臣ではなく商鞅だと思うよ。


「これより財閥のトップ達の判決を下す」


 これで終わりだろうな。


「お隣よろしいかしら?」

「ええ、どう……」


 ちらりと見て許可を出そうとすると一回り小さい子供が立っていた。


「ありがとうございますわ。昨日は高い評価をどうも」


 リリーナ・シュツッテンファンベルクはそういうときれいな所作で隣りに座った。

 カトリノーの左席には最初からビルゾンヌ・シャロレー子爵が座って動向を見ていた。

 彼の周りはリリーナ派閥で固められていたのである。


「言いたいことも思うこともあるかも知れませんけど、まずは判決を見届けましょう」


 ニッコリと微笑んだリリーナは、すぐに裁判長を見つめていた。

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