第33話・わたしの事をあなたがどう思うかは勝手です

「どうした? ベラ」


「ん。何でも無い」




 バーノはジネベラの様子が気になるようだ。彼との楽しい時間に横槍を入れられたような気分だ。黙々とショートケーキを食べ続けていると、バーノがそわそわした感じで言ってきた。




「ベラ。この後さ、買い物にいかないか?」


「お買い物?」


「ね、ねえさんに頼まれたものがあるんだ。付き合ってくれると助かる」


「良いわよ」


「良かった」




 程なく食べ終わるとバーノが、トイレにと席を立った。そこへ離れた席にいたエトワルが近づいて来た。その後を、連れらしい茶髪の女の子が付いてきたが、エトワルの袖を引く。その態度には、エトワルが何かしでかす気では……?と、警戒しているようにも思えた。




「や、止めよ。エトワル」




 彼女が止めるのを無視して、エトワルはジネベラに声をかけてきた。




「ねぇ、あなた。バーノくんとどのようなご関係? 親戚か何か?」


「友達ですけど?」


「それにしては親しすぎない?」


「幼馴染みですから」




 ジネベラの淡々とした表情が気に喰わなかったのか、エトワルが不服そうに言う。




「幼馴染みか何だか知らないけど、バーノくんに付きまとうのは止めて欲しいわ」


「付きまとうですか?」


「エトワル。失礼よ」


「何よ、邪魔しないで。ナーナ」




 最近、同じような言葉で批難されてきたジネベラだ。彼女の言葉に「ああ、またか」と、自虐的な笑みが浮かぶ。それを見たエトワルは馬鹿にされたとでも感じたのだろうか、キッと睨み付けてきた。




「彼はね、薬草学科の博士と呼ばれているのよ。学園でも優秀な成績を収めているし、学年一の成績を収めているの。彼にあなたのような人は相応しくない」


「わたしのことをあなたがどう思うかは勝手ですが、わたし達の付き合いに、あなたが口を挟む権利は無いと思いますけど?」


「その通りだよ。エトワル。席に戻ろう」




 ジネベラの発言に、彼女にナーナと呼ばれていた少女は頷き、エトワルの腕を引いてこの場から遠ざかろうとした。しかし、エトワルはその腕を振り払い、ジネベラと向き合った。




「あなたは最近まで、アヴェリーノ殿下に侍っていた人よね? 何が目的なの? そんな人がバーノくんと一緒にいるだなんて許せないわ。あなたのせいで彼の印象が悪くなるのよ」


「……!」


「分かったらさっさと、バーノくんから離れなさいよ」




 彼女は強気でジネベラに言い放った。その直後、冷たい声が背後で上がった。

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