第53話 最下層ですわ

女神追放の準備が終わり、魔剣が光り始めたので、ガルロンの屋敷を訪れたらガルロンが完全に中年のおっさん腹になっていましたが戦えますのあなた?……いえ、お腹が出ている以外は特に太ってなく、外見に変化はないので、お腹に何か隠し入れていますわね。私が一瞬騙されたということは、結構ガルロンの変装技術は上手いですわよ。


ガルロンの服が小さくて、服の下に膨れたお腹が直接見えるので自然と騙されましたが、軽く叩くと鉄以上の強度はありそうなので何を収納しているのかは気になりますわ。


「中に何が入っていますの?」

「単純な防具だから気にしなくても良い。こちらはこちらで女神を陥れる方法を確立したが、そちらが失敗してから動こう」

「……防具としての役割もありそうですが、中に絶対何かあるでしょうそれは」


役割分担としてはガルロン側の冒険者集団8人が道中の露払いをし、女神と相対したタイミングで私、メイ、メルトの3人が前に立つこととなりましたわ。ガルロンが動くのは私達が失敗した後と決まりましたが、こいつの性格的に後ろから刺してくる可能性は捨てきれませんので期待しておきましょう。


まあ私達の方法もガルロンの方法も一時的に女神を動けなくする必要はあるようなので、結局戦闘で女神を押さえつける必要がありますわね。


「私、この女神との戦いが終わりましたら大陸を統一する王となって孫達に囲まれながら幸せに余生を過ごしますの……」

「雑な死亡フラグ作りはやめろ」


死亡フラグも立てるため、ガルロンに私の最も望んでいない末路でも語りますが即座に見抜かれますわ。元男の感覚として、子供を作るのは複雑な感情を抱きますわ。ですが子供達が跡継ぎ争いをしたり子供同士で殺し合いをする未来を考えると、思わず身体が震えたのでちょっと子作りは真剣に考えますわよ。


特に仲の良かった兄弟姉妹が、権力を手にするために互いに暗殺し合う未来とか素晴らしいにも程がありますわよ。そう考えると子供を作るのもありですわね。出産の痛みは是非とも味わいたいですし。


準備が整ったらダンジョンへと突入しますが、この3年の間にエイブラハムはSランク冒険者として活動を続け、魔剣を合計で5本取り込んでいるみたいなので冒険者集団の中でも目立って強いですわね。ちなみにガルロンに、どうしてホルダー持ちに16本の魔剣をそのまま渡さなかったのか聞くと、16本も取り込んだら身体が壊れる恐れがあるからとの返答が。もはや人間を人体実験の素材としてしか見ていない畜生発言ですわね。


エイブラハムの揃えた感情は空虚、復讐、嫉妬、殺意、苦しみと負の方向に振り切れているので戦闘中は苦悶の表情ですわ。空虚の魔剣のお蔭で中和していてなお苦悶の表情なのでちょっとあれは味わってみたいですわね。超高速で動きながら、剣先が伸びる魔剣で串刺しにしていくのを見てるとかなり強くなっていますわ。


そして最下層へと足を踏み入れますが、女神産の魔物と遭遇する頻度が上がっても冒険者集団が強いので何もしなくて良いですわね。女神産の魔物の中には人間廃材アートが多いですが、外見で正気度を削って来るだけで冒険者集団にリンチされてますわよ。


「死ねええええええ!」

「……ぐすっ、ひっく」

「どうせ僕なんて……」

「また殺してしまった」


冒険者集団8人の内、前に立つのは殺意に溢れたエイブラハム、ずっと泣いている女性、劣等感に包まれている黒髪目隠れ少年、ずっと後悔しているおっさんの4人ですわ。感情が迷子になっている方が多いですが、それを見て愉悦に浸っているガルロンはやべーですわね。


後列の4人も遠距離攻撃でサポートしていますし、背後から襲って来る敵に関しては私が対応しているので何も問題は起きませんわね。ちょっと間隔を設けてメイと2人歩いているのですが、こうしていると突然食べられたり酸をぶっかけられても前方の冒険者集団には気づかれないので思う存分ダメージを堪能できますわよ。


「もしかしなくてもマゾか?」

「気付くの遅くありませんこと?」

「いや、あまりにも威風堂々としていてな……。単純に避けたりしない性格なのかと思ったぞ」

「いえ、避けたりはしない性格ですわよ?」

「……その消化液、俺が触れたらどうなる?」

「1秒以内に溶けてなくなると思いますわよ。金属すら溶けてますし」

『ちょっと!鞘が溶け始めているんだけど!』


ガルロンにマゾバレしましたが、特に言及してこないのはつまらないですわ。酸のせいで服が溶けているのですが、魔剣のシュパースとその鞘はあまり溶けていないところを見ると素材からして違いますわね。


そうこうしている内に、最奥に辿り着きましたが本当に巨大な繭が空中に浮いていますわね。あの中に女神が居て、魔物を生み続けているとか羨ましすぎですわ。既に繭の中の女神は意識があるようなので、繭を解除した瞬間に戦闘開始ですわね。全員が封印を解除した瞬間、最大火力を叩きこめるように準備した後、メルトが封印を解き始めますわ。

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