第14歩 謎の女
弊社の都市伝説
1、備品を故意に持ち帰るとバレる
2、休日出勤をすると査定が下がる
3、社長には実権がない
4、営業部に属さない営業社員がいる
5、自社ビルに貸しテナントを入れているのは総務がそう決めたから
これらには共通点がある。
陰に一人の女、総務のお局杉本さんがいるという点だ。
備品をうっかり持ち帰っても、誰にも何も言われない。
でも故意に持ち帰ろうとすると、なぜか総務の杉本さんが近づいてきて「何か、忘れていませんか?」と言われるらしい。
その時の杉本さんはポッケであれカバンであれ、備品のありかを知っている様子で、家でこっそり仕事をするためにUSBを持ち出したところ呼び止められた直後にスーツのポケットを探られた人もいると言う。
休日出勤をすると査定が下がる、のも確かな情報で、育休を取ったはずの的場くんが家から会社のパソコンにアクセスしようとしたところ、杉本さんから「ボーナスが惜しけりゃ家族のために時間を使いな」と電話がかかってきたそうだ。
社長に実権がないのは見ていれば誰でも分かる。彼は杉本さんや大岩さんの傀儡にすぎない。杉本さんは社長が海でおぼれた時に助けた命の恩人。大岩さんは会社に不動産投資を強引に持ちかけ、おかげで一時期業績が下がった時にもなんとか持ちこたえさせた。
あとこれは本当に根拠はないけれど社長は杉本さんにぞっこんらしい。
営業部に属さない営業社員、またの名を水曜日の女たち、は、決まって水曜日(毎週ではない)に突如現れる普段見かけない女2人組で、カツカツ音を立てて颯爽と社内を闊歩しては営業の朝日課長の机に契約書を置いていく。
たまに木下次長の机にお菓子も置いていく。
その正体に関しては杉本さんと大岩さんじゃないかと囁かれているものの、それにしては2人共いつも社内にいるし、社員を見張っているし、そもそもその女二人組はなんというか、違う。流石にお局のおばさん2人と一緒にしちゃあ失礼な気がする。まあこれは、謎が残る。
自社ビルに貸しテナント、例えば一階のコンビニ、カフェ、七階〜八階の貸しオフィスなんかをいれると決めたのが総務、つまり杉本さんの決定という情報は何の不思議も感じさせない。
一階の半分を占める駐輪場は広々としていてバイク置き場もあるが、これはバイク通勤をしたい杉本さんの決定に決まっている。
弊社を回しているのは杉本さん、だからくれぐれも杉本さんには
ここまで話していた噂好きの川中くんがピタリと口を閉じた。
弊社の都市伝説
6、杉本さんは神出鬼没
を、忘れていたようだ。
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