森林公園
地元に森林公園という山の中にある自然公園がある。子供が遊ぶアスレチックやキャンプ場も備えている場所だった。
公園というには、自然がそのまま残っていて、場所によってはなんとなく不気味な雰囲気も漂っていた。
私たち一家はよくピクニックに行って遊びつくした思い出の場所でもあった。
学校行事でも夏のキャンプや、遠足などの催しが毎年行われていた。
昔、母から聞いた話、
母方の叔父が、その公園に家族で遊びに行った時のこと、暖かな昼時で広場では親子連れがフリスビーで遊んだり、お弁当を食べたり、和やかな日常が広がっている。
そこから遠くない場所に巨大滑り台がある。地元の子なら一番好きな遊具だったと思う、台がコロコロ回るタイプの滑り台である。
その滑り台の奥に桜の木が何本か植わっていた、そのうちの一本の桜木に首つり死体がぶら下がっていた。
叔父は警察に通報し、第一発見者として事情聴取を受けたらしい。
叔父は、広場から見える場所にその死体はあったのに、誰も気づかない、気づかないふりをしているんじゃないかと思うぐらいの異常さを感じたと言っていた。
その件を聞いてからは子供なりに、怪現象への好奇心に煽られた。
普段は人が寄りつかない竹藪のエリアを探検したり、学校行事のキャンプでも幽霊がでるかもとドキドキしていたが、そのような体験をすることはなかった。
時間が流れ、私が大学生くらいの頃、弟から聞いた話。
弟の友達(仮にK)が複数の仲間と森林公園で肝試しにいったらしい。
整備された杉林の森の中には周回できるルートでアスレチックが点在している。中でも一番目立つのはルートの真ん中あたりにある海賊船型のアスレチックだった。
真夜中、灯が一つもない森の中を懐中電灯を頼りにギャーギャーいいながら特に怖がらずに進んでいったに違いない。
そして、海賊船のアスレチックに到着した。木造で先頭には舵があり、帆も張ってある。甲板の中心に鉄の滑り棒があり、そこから船内へ出入りできる、中には3つほど空間はあり、かくれんぼや追いかけっこで昼間は賑わっていた。
Kは中を探検しようと入っていったそうだ。船の中心のすべり棒からゆっくりと降りる。大人だと船内は腰をかがめるほどの高さだろう。
懐中電灯で照らすと、目の前に首を吊って死んでいる男がいた。
後のことはよく覚えていない、嘘だったのか本当だったのか…。
その話を聞いたしばらく後、車の運転を覚えたばかりの私は練習ついでに森林公園まで一人でドライブすることにした。
森の周回ルートを歩いて辿っていくと、例の海賊船のアスレチックの場所についた。そこには船の痕跡はなく、ただの更地になっていた。
弟の話は真実だったのではと悪寒が走った。
叔父の話と弟の友達の話、偶然かもしれないが何か寄せ付けるものがその公園にはあるのかもしれない。
私の幼いころのアルバムにもその海賊船の中ではしゃぐ写真が残っている。楽しい時を刻んだその写真も突然悲しいものに見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます