レンタル、おにめんたる!
学生作家志望
気弱?ばああああか!レンタルすりゃええんだよ!
「ごっめえんw罰ゲームだからさw期待しちゃった?」
「して……ないですよ。」
「あれ?泣いてる?wだっさ!期待してたんじゃないの??」
夏のジトジトした日だ、僕はクラスのマドンナ的存在の
僕は耐えられなくて何度も涙を流してしまった。
「はあ…。」
夕日に照らされて僕の後ろに影ができた。でも今はただ黙ってため息をつけるだけつきたい気分だ。多分今世界から酸素がなくなっても死ぬまでの時間をため息に精一杯使うと思う。というかそうなってしまえばいいんだ。そうなってしまえば、あの腹立つ女子たちともおさらばだ。
なんて起きもしないことを想像してその想像の中で鬱憤を晴らすのが僕の中の精一杯のやり返し。僕がクラスの女子や男子から日々ストレス発散のサンドバッグとなるのは、恐らくクラスに入った時から必然だったんだろうな。毎日休み時間は喋り相手がいなくて机に突っ伏してるし、弁当もいつも誰もいないような場所でこっそり食うし。後…、メンタル弱いし。
多分僕がどんなことをされても先生に言わないことをいいことに、僕がメンタル弱くていじめがいがあることをいいことに、毎日僕をサンドバッグにしているんだろうな。
僕はコンクリートの上に転がっていた小さい石を足でおもいっきり蹴った。その時だった。
「あの、そこの学生さん!人生変えませんか??」
「え…あ、はい?」
え、な、なに、何を言ってるんだこの人?僕、石蹴っただけだよ!?人生変えなきゃなんないの!?
……まあでも確かに、今の友達もいないしまともに恋愛もしたことのないような黒歴史だけ作りまくる学生生活は可能なら今にでも辞めたいところである。
「言い方悪かったですね、メンタルですよ!メンタル変えません?」
「メンタルを変える…?」
「変えるというか借りるというかなんというか…」
「し、しりませんよ。あ、でんしゃっ!乗り遅れる!」
僕の時計はいつも乗っている電車が駅に着く5分前を指していた。
「ややや、やっ!ばっひ!」
「あ、あの?話、どうしましょう?」
「あああもういいですよっっ!も、もう、もう、電車が5分後には来ちゃうんです!」
「え?あの、時計間違ってません?30分の電車ってことですよね?なら今5分前じゃなくて20分前ですよ?」
「え?ひぇ?なんで?あ、もしかして…」
あの腹立つクラスの男…、時計いじったなあああ!?
「くっ…、直さねえと。」
「あの、5分でいいんで、あなたの時間をくれませんか?」
「失礼?します?」
「はい、そちらへお座りください」
「……あの、メンタル変えることができるんですか?」
僕が座ったこの椅子も、なにもかも、この建物は古臭すぎる。入る瞬間になんて怪しいんだ。とも思ったがやはり人生を変えるというワードに僕はつい引っ張られてしまった。
「レンタルをするための条件、お金などは一切いりません。」
「レンタルっていうんだからいつまでとかあるんですか?」
正直言って意味がわからない。そもそもメンタルをレンタルってなんだよ??でも、一回でいいから奴らに妄想じゃなくて現実で鬱憤を晴らしてやりたい。
「期間は2週間程度だと思ってください。それ以上メンタルをレンタルし続けると危険ですのでね。」
今思えば、この時にどんな危険があるかなどを全て聞けばよかったのだ。僕の失敗はここから始まっていたんだ。
「それでは、どのメンタルがいいですか?」
そう言って心臓の模型をずらりと並べると店員の男は1つ1つに名札を模型の前に順に置いていった。
「まず、こちらが心の優しいメンタル。そしてこちらが鬱の症状があるメンタル。こちらがネガティブ。こちらがポジティブ。そして最後に、」
「あ、」
「鬼メンタル、最強のメンタルです」
まるでカードゲームで出された最強の手札のように同じ形をしている名札と心臓の模型がやけにそれだけ輝いているように見えた。僕の決断はすぐだった。
「これで!鬼メンタルをレンタルさせてください!最強のメンタルを!」
「まいどあり。」
店員がそう言った後、僕は気付いたら次の朝へと飛んでいた。しかもそこはいつもの寝室ではなく学校の教室のドアの前であった。もうすでにいつものやつらのうるさい声が聞こえてくる。
なんだろう、今なら言ってやれる気がする。全部ぶっ飛ばしてやれる気がする!おれ、俺はっ
ドンっ
「うっせええええんだよ!!!ばあああああか!」
「へ?いや、は?」
空気が固まったのを感じた。
「うっさ…、なにあいつ。」
俺は今言いたいことを言えた!このクラスで1番注目されている!初めてだこんな快感は!俺の名前がこんなに教室中で連呼されるのも初めてだ!
「羽田やばすぎ……せっかく、楽しく話してたのに。死ねばいいのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます