第4話 内なる声の発見

文化祭の成功以降、美咲は自分自身との関係が少しずつ変わり始めていた。彼女は、自分の感情や思考を絵画を通じて表現することに喜びを見出し、この新しい自己表現の形が自信を育てる源となっていった。しかし、内面の旅はまだ終わっていなかった。吃音との向き合い方、そして自分自身の声をどのように受け入れるかという問いが、美咲の心の中で静かに響き続けていた。


ある放課後、美咲は音楽室で一人の生徒がピアノを弾いているのを耳にした。その音楽は美咲の心に深く響き、彼女は足を止めて聴き入った。演奏をしていたのは、クラスメイトのユウタだった。ユウタは音楽を通じて自分自身を表現することで、自分の内面と向き合っている。美咲はユウタの演奏から、言葉以外の表現が持つ力を改めて感じ取った。


その日以降、美咲はユウタと話す機会が増え、二人は互いに自分たちの「声」について語り合った。ユウタから、人は誰もが独自の音色を持っており、それを見つけることが大切だという話を聞き、美咲は自分なりの「声」を見つける旅を続ける決意を新たにした。


その過程で、美咲は日記をつけ始めることにした。絵画と同じく、言葉を紙に書き留めることは、彼女にとって新たな自己発見の手段となった。日記には、彼女が日々感じる感情や思い、吃音との向き合い方について綴られていく。この日記が美咲にとって、内なる声を聴き、理解するための大切なツールとなった。


美咲はまた、クラスでのプレゼンテーションの機会を自ら進んで引き受けるようになった。これまでの美咲なら避けて通ったはずの場面だが、彼女は自分の絵を通じて、自分の「声」をクラスメイトに届けたいと思った。プレゼンテーションは完璧ではなかったかもしれないが、美咲は自分の言葉で自分の作品について語ることができた。その勇気と成長を、クラスメイトや先生たちは温かく受け入れた。


美咲が自分自身と向き合い、内なる声を探求する過程は、彼女にとって重要な成長の旅となった。自分の「声」を見つけることは、単に吃音を乗り越えること以上の意味を持っていた。それは、自己受容への道、そして自分の心に正直に生きることの大切さを美咲に教えてくれた。

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