12話 愚か過ぎるアランに極刑を言い渡す

前書き


前半はアラン第一王子のクズ発言が続くので、不快に感じる方は流し読みで大丈夫です。後半にクリフトが兄に極刑を言い渡します。



──────


第一王子、アラン視点


「クソ、どうしてボクがこんな目に!」


 自分の部屋に閉じ込められたアラン第一王子はウロウロと歩きながらロレッタの事を呪い続けた。


「あの女さえいなければ全て上手く行っていたんだ! ボクは何も悪くないのに!」


 今までは少し悪い事をしても言い逃れが出来た。皆んな馬鹿だからどんな風にでも言いくるめることができる。ロレッタが現れるまではそう思っていた。


「ボクのプライドをズタズタにしやがって……」


 きっとこれはロレッタがボクを陥れるために考えた罠だ。全てあの女が仕組んだ事なんだ。クソ、魔女め、絶対に殺す!


 まずはそうだな……家族を拉致しよう。それでロレッタの前で皆殺しにしてやる。泣き叫ぶ表情が浮かんでゾクゾクしくる! そして泣いて謝っている所にお友達のカトリーヌも連れてくる。そしてこう言ってやるんだ!


「全部お前が悪いんだ! 家族や友達が死んだのは全部ロレッタのせいだからな!」


 そしてカトリーヌに毒を飲ませる。悶え苦しむ様子を無理やり見せつけて精神をズタズタにしてやる。そしてロレッタは自分の罪を受け入れて自ら命を断つ事になる。我ながら素晴らしい計画に惚れ惚れしてしまう。


 まずはここから抜け出そう。兵士に賄賂を渡せば簡単に出してくれるはずだ。どうせ兵士も人間だ。金で動く。だがその考えは甘かった。


「第二王子のクリフト様より、絶対にこの部屋から出すなと言われています。申し訳ございません」


 門番はせっかくの賄賂の話を拒むと、仕事に戻ってしまった。クソ、使えないやつだな!


 ──だったら代わりに出してやろうか?


(………!? だっ誰だ!?)


 ──お前が望むのなら力を貸してやる。ロレッタを殺したいんだろ?


(あぁ……あの女は魔女だ。全部アイツが悪いんだ! アイツさえいなければボクは今頃キャトラと結婚してこれまで通り贅沢が出来たのに!)


 ──それがお前の答えなんだな? いいだろう力を貸してやる。


(頼む。だがその前にお前は何者だ?)


 ──元魔王……今はかろうじて魂だけ残って生き延びている。少しの間なら力を貸そう。


(元魔王……ロレッタに復讐が出来るのなら構わない。好きにしてくれ」


 元魔王の黒い魂はフワフワとアランの前に現れるとボクの体の中に溶けて消えていった。黒い不気味なオーラが周辺に漂い、力が溢れてくる。


(すごい、これは凄い! 今ならあの憎たらしい弟のクリフトにも勝てそうだ!)


 ボクはもう一度、兵士に声をかけた。


「おい、ここからだせ。これは命令だ!」


「申し訳ございません、クリフト様より、絶対にこの部屋から出すなと言われています」


「いいからどけ!」


 ボクは兵士につかみかかると力任せに床に叩きつけた。そして兵士の腰に差した剣を抜いて首元に当てた。


「おい、ロレッタはどこにいる? 死にたくなければ答えろ!」


「ひぃい!! どうか命だけは! どうか落ち着いて下さい!


「うるさい、もう一度聞く、ロレッタの居場所はどこだ?」


「ロレッタ様は……間違えてお酒を飲んでしまい眠ってしまったので、今は客室で休まれています」


「それはクリフトの命令か?」


「はいそうです……」


 ボクは兵士の口を塞ぎ、腕を縛って拘束すると、部屋を出た。そしてロレッタがいる客室に向かった。


(この中にロレッタがいる。全部ロレッタが悪いんだ! ボクは殺人者ではない。魔女を倒した英雄なんだ!)


 ボクは剣を抜いて部屋に入ると、布団の上から何度も突き刺した。グサグサと刺しては抜いてを繰り返すと白いシーツが赤く染まっていく……


「死ね死ね死ねロレッタ!!!!!」


 ボクの呪う声と叫び声が部屋に響く。流石に廊下にまで漏れていたのか、兵士たちが集まって来た。


「どうされたのですかロレッタ様!? アラン様もここで一体何を?」


 兵士たちは慌てふためいた様子で部屋に入ってきた。そして赤く染まったシーツを見て絶叫した。


「遅かったな、ロレッタはたった今死んだ! ボクは英雄だ! この国から邪悪な魔女を倒した英雄なんだ!」


 ボクの笑い声がまた部屋に響く。でもその笑い声は憎き弟によって止められた。


「誰か英雄だ! ただの殺人未遂じゃないか!」


 振り返るとそこにはクリフトがいた。それともう1人……金髪の女がいた。


「どっどうしてお前が……」


 憎きクリフトの隣には何故か殺したはずのがいた。慌てて串刺しにしたシーツをめくると、丸めた寝巻きが出てきた。血もよく見るとただの血糊だった。これはまさか……はめられたのか?




* * *


第二王子、クリフト視点


「やはりこうなってしまったか……」


 クリフトは深いため息をつくと愚かな兄を軽蔑の眼差しで見下した。


「クソ、やられた! よくも騙したな!


「騙す? あんたは王子失格だ! 婚約破棄、および、税金の不正利用。さらにロレッタ殿の殺人未遂……もはや言い訳をする余地もない……」


 ボクは懐から封筒を取り出すと丁寧に取り出して読み上げた。


「何だそれは?」


「万が一の時のために父上から預かっていたものだ。父上の代理の名の元に、第二王子のクリフトが命じる。第一王子のアランから地位と権限を剥奪してとする!」


「なっ何だと?」


 アランは声を詰まらせながら聞き返す。もはやこの愚かな兄を救う手立てはない。結婚破棄をしたうえにロレッタ殿の命まで狙うとは……もはや呆れて何も言えない……


「ひぃい!! どうか命だけは見逃してくれ! ボクは悪くない! 悪いのはロレッタだ! 無実のボクを極刑になんかしたらどうなるか分かってるのか! 死にたくない‼︎‼︎」


「ロレッタ、君からも最後に何か言ってやってくれ」


 僕は兄の命乞いを無視すると、そっとロレッタの背中を押した。


「では、一言……こんな事になってしまって本当に残念です。それとさっきから自分は悪くないと言っていますが、婚約破棄をしてさらに殺人未遂まで犯しているのですよ? ちゃんと罪の意志は持っていますか?」


 ロレッタはハッキリとした口調でそう語った。相変わらずこの方は凄い。自分を殺そうとした相手を前にしても一歩も引かずに堂々としている。


「罪の意志? ボクを罪人みたいに言うな! ボクは第一王子なんだぞ! お前みたいな小娘が気安く会話をしていい相手ではない! 立場をわきまえろ!」


「失礼なのはどっちなんだ? こちらにおられるのはご令嬢のロレッタ様だ。ただの殺人未遂犯が気安く話していい相手ではない。立場をわきまえろ!」


 僕は兄を一喝すると、自らの手で兄にロープを巻きつけて牢獄に連れて行った。

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