買い物
陽太が本当の意味で彼から彼女になっていたと知ったその翌日。
僕は一人、スーパーの方にやってきていた。
今日は土曜日、高校の方はお休みである。
「……本当に女が増えたなぁ」
確率としては一万分の一である。
だが、こうしてスーパーに来てみても明らかに女が増えていることがわかる。
元々主婦で賑わっていることの方が多いスーパー。
だが、今のスーパーにはずいぶんとブカブカのスーツを来ているくたびれた様子の女児や、夫婦と思われる二人の女性組がいたり。
TSしたのだな、と思わせるような人の姿が本当にちらほらと確認することが出来た。
「えっとぉ……今日は何を作ろうかなぁ?」
そんな風に変わり果ててしまった世界ではあるが、その中でも僕のやるべきことは何も変わらない。
我が家の主夫として今日も美味しくご飯を作るだけである。
「あっ、ひき肉安いな……ナンプラー余っていたよな?今日はガパオライスでも作るか。卵はー、よし。ちゃんと特売日だな」
安くなっているのを優先に。
僕は手際よくスーパーを回って目についたものを籠に入れていく」
「さぁ、蓮ちゃん。今日は何を食べますかー?しっかりとその可愛い体にたくさん栄養をつけてあげないとねぇ?何でも食べさせてあげるわよぉ?好きにしてちょうだいねぇ」
「……うぅ」
そんな風にスーパーを巡っていた中。
「……ん?」
僕は聞き覚えのあるような声がした気のして足を止める。
「……蓮夜?」
そして、そちらの方に視線を向ければ。
「……っ!?」
そこには母親に連れられる形でスーパーへとやってきていた蓮夜の姿があった。
そんな彼の体を包むのはずいぶんと可愛いらしく派手なお姫様のような服装だった。
「いや、そのこれは……ち、違くて……そ、その」
僕とバッチリ視線のあっている蓮夜。
彼は自身の視線をキョロキョロとさせながら何かをごまかすように言葉を話し連ね、今にも泣き出しそうに瞳を震わせ始める。
「……蓮夜」
「や、やめろ……やめてくれ。見るなぁァァァアアアアアア!!!」
思わず漏らしてしまった僕の言葉。
それを受け、弾かれたようにその震えを止めた蓮夜そのまま流れるようにしてその場から背を向けて逃走していってしまう。
「蓮ちゃぁぁぁあああああああああん!?」
そして、それを前にして。
以前にも会ったことのある蓮夜の母親が彼の名前を叫んでいる。
うーん、あぁ……ね。
「あー」
僕は逃げていく蓮夜を見ながら、なんとも言えない声を漏らすのであった。
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