箱の中の小さな宇宙【KAC20243】
藤澤勇樹
第1話 不器用な陽一が曾祖父の冒険心を受け継ぐ
陽一は、箱の蓋を開ける手がわずかに震えているのを感じた。
部屋の中は静かで、ただ時計の秒針の音だけが響いている。
彼はこの箱を開けた瞬間、何かが変わるような予感に襲われていた。
「これは…ひいおじいちゃんの?」
彼が呟いた時、箱からは古ぼけた日記、黄ばんだ写真、そして手紙の束が現れた。
日記を開くと、曾祖父の力強い筆跡で記された冒険の日々が目に飛び込んできた。
「今日、未知の土地を目指して出発した。どんな困難が待ち受けていようと、私の好奇心を止めることはできない。」
陽一はその言葉に心を打たれた。
自分とは正反対の性格の曾祖父が、こんなにも冒険心に満ちていたなんて。
写真の一枚一枚には、曾祖父が様々な場所で笑顔で立っている姿が写っていた。
その背景には、陽一には想像もつかないような壮大な風景が広がっていた。
そして手紙。
それは曾祖父が家族に宛てたもので、
「私はいつも新しい世界を求めている。だが、本当に大切なのは、その旅の中で出会う人々とのつながりだ」と綴られていた。
陽一は、箱の中の小宇宙を前にして、自分も何か大きなことを成し遂げたいという衝動に駆られた。
「ひいおじいちゃんも、こんな風に新しい世界に飛び込んでいったんだ…」
彼はふと、自分の中に秘められた冒険心に気づいた。
「俺も、何か見つけたい。新しい世界を…」
と、陽一は決心した。
これまでの自分とは違う、何か新しい一歩を踏み出す時が来たのだと。
その日から、陽一は曾祖父の足跡をたどる冒険を自分自身で始めることを決意する。
それは彼自身にとっての「新しい世界」を見つけるためだ。
「ひいおじいちゃん、俺、やってみるよ。」
陽一は部屋に向かってつぶやきながら、箱を閉じ、窓の外を見た。
外はすでに暗くなり、星が輝き始めていた。この星々の下で、彼自身の物語が始まる。
そして、その物語は次の章へと進んでいく。
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