⸺⸺シュナイダー城⸺⸺

「な、なんと！？　い、今一体なんと！？」

　皇帝陛下は驚いた表情で目をぱちくりとさせている。だが俺も限界だ。絶対に引く訳にはいかない。

「ですから、私はこのままシュナイダー領のみを統治させていただきます。また、5日に1度は休暇をいただき、フローラと1日過ごす時間を確保させていただきます」

　俺はそうキッパリと言い切った。

「フローラと……。その指輪の片割れは渡せたのか？」

「はい、ようやく渡すことができ、私とフローラは上辺だけではない、本当の夫婦になりました」

　俺がそう答えると、皇帝陛下は諦めたように微笑んだ。

「良い顔をするようになったな、オスカー。そうか、急にお前が公務をものすごい勢いでこなし始めたのも、1秒でも早く帰ってフローラとの時間を作ろうと思っていたのだな……。それなのにワシはシュナイダー領の景気の良さも相まってお前に更に負担をかけてしまっていたということか……」

「陛下が私を評価して下さっていることはとても光栄に思います。また、陛下が私に結婚を勧めて下さったおかげでフローラとの結婚も叶い、大変感謝しております。その御恩をお返しできるようにと、なるべく努めて参りましたが、フローラとの時間がなくなってしまっては、本末転倒なのです……」

「そうだな。ワシもお前を虐（いじ）めるつもりなどはなかったのだよ。許しておくれ。相（あい）分かった。お前はこれからもシュナイダー領の統治に努めてほしい。だが、お前でなくてはならない出撃だけは、応じておくれよ？」

「勿論です。魔道将軍としての責務もしっかりと果たします。その際はフローラの事を忘れ、この国のため非情に務めることを、お約束します」

「おぉ、魔道将軍としての心構えも忘れておらんようで、ワシも安心だ。ならば、今日はもう帰って良い。今日明日と、早速休暇としてフローラとの時間を過ごして来なさい」

「よ、宜しいのですか！？」

「うむ。これは皇帝としてではない。伯父からの結婚祝いだ」

「！　ありがとうございます、伯父上……」

　俺ははやる気持ちを抑えて、フローラの待つ屋敷へと飛んで帰った。

　しかし、屋敷の入り口では何やら揉め事が起こっていたようだった。

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