響き渡るトランペット

るい

第0話 吹き鳴らされたトランペット

 その日は晴れた、さわやかな夏の日であった。太陽がさんさんと照り付け、穏やかな風が海面を撫で、海面が日光を乱反射し、まるで万華鏡のように輝いていた。この海域は美しい見た目だけではなく、微生物から大きな魚類まで様々な生命を含む豊かな生態系をその内に抱き、まさに母なる海と呼ぶにふさわしい場所であった。


 だが突如、轟音が鳴り響く。熱、光、力、それらが海を引き裂き、目がつぶれてしまうような閃光を放ちながら空へと駆け抜けた。その力は空へと向かうだけでなく海の底へと向かって突き進み、その力が届く範囲のものを原子レベルまで分解しながら薙ぎ払い、静寂の支配する死の海へと変えてしまった。遠く離れた場所にいた生命の中には、辛うじて生き残ったものがいた。しかし、その力は毒を海に残しており、この毒に侵された彼らのほとんどはやがて死に絶えた。


 しかし、すべてが潰えたわけではなかった。熱、力、光、そして毒のすべてから生き残ることに成功したものも少数だがいたのだ。彼らは何が起こったのか、何がこれから起こるのかもわからず、ただただ凄惨な状況に耐えていた。

生き残った彼らの多くは飢えに苦しみ、やがて死んでしまった。だが、その中でも生き残り、残された毒を克服し始めたものがいた。彼らはその毒を自分の力として取り込み、生き残れるように自分自身を作り替えたのだ。


 彼らには知性がなく、この先どうなるかもわからなかった。だから彼らは待ち続ける、自分たちにとってのチャンスが来るまで。繁栄の時に向かって、慎重に、辛抱強く待ち続けるのだった。


 こうして鳴り渡った轟音は、トランペットのように響き渡り、すべての始まりを告げたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る