第2話 日常 大杉健太の人生

 大杉健太の生活は充実していた。

 

 彼は東日本の地方都市であるN市、そこにある中堅企業の営業職を務めている26歳の健康な男性で、主にオフィスの照明を商品として日々市内、市外の企業を駆け回っている。

 やせ型で身長は175㎝、手足は長く、遠目に見るともう少し背が高く見える。顔立ちは特に目立ったものはないが、出会った人には基本的に嫌われることがない程度には整っている。

 

 元々は普通の一般企業に勤めるサラリーマンの父親とスーパーで働くパートタイマーの母のもとに長男として生まれた。父はやさしく、休日はよく一緒に公園でサッカーを教えてくれた。自分が友達と遊ぶようになってからそういうことは少なくなったが、それでも時にはともに出かけ、アウトドアを二人で楽しんだりしていた。母は最初のころは専業主婦をしていたが、妹が小学生になったころから学童保育に自分と妹を預け、パートにでるようになった。家ではやさしく、勉強をやらないと怒られたりしていたが、それでもたたかれたような覚えはなかった。

 

 勉学は特に得意ではなかったが、特別な苦労をすることなく小学校、中学校、高校を楽しく過ごし、そのまま推薦入試で愛知県の大学に進学した。どの時代でも友人は多く、小さいころからやっていたサッカーを続けながら、友達とよく遊びに行っていた。時に嫌なことやつらいことがあったが、友人や両親の助けもあり問題なく乗り越えることが出来た。

 

 また、大学は経済学部に在籍していたが、特に経済学に興味があるわけではなく授業も最低限しか出席せず、バイトと部活に精をだして4年間を過ごした。ここでも同様に友人は多く、バイト代で稼いだお金を使ってともに旅行に行ったり、恋人と遊んだり、夜遊びをしたりしていた。大学の4年間は今までと同じように楽しく、まさに青春そのものと言っても差し支えない4年間だった。

 

 就職後、最初は東京の本社での勤務、というよりも研修を受け、2年前からN市に配属された。また、学生時代に付き合っていた恋人はいたが就職を機に分かれ、現在の都市に転居してくるまでは忙しかったこともあり一人の生活を過ごしていた。就職してからは非常に大変で、毎日が流れるように過ぎていき、気がついたら4年がたっていたのだ。

 今は仕事にも慣れて落ち着き、出入りしている企業で事務職をしている藤崎由美のという女性と付き合っている。可愛い顔立ちの、とても心優しく、気遣い上手で何より一緒にいると安心できるような人だった。  


 仕事では特に秀でた能力があるわけではなかったが、責任感も人並みで、努力も人並みにしていた。その甲斐あってか今では仕事も十分にこなせており、先輩からはかわいがられ、後輩からも頼られるような存在となっている。


 今までの彼の人生には目立った出来事はなかったが、常に充実しており幸せであった。

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