第16話 ハーレム主人公

俺の名は西村大河。

最近、いろんな女の子が俺に寄って来る。


まずは、幼馴染の柴田栞奈かんな

いつもいつも、朝俺を起こしにくる。


「大河、そろそろ起きなさいよ!」


ああ、いつもの朝だ。

栞奈の声が聞こえる。

でも、俺はあえて寝たふりをする。


「もう!いいかげんに起きろ!!」


そして、栞奈は布団を奪い取る。

そして、俺の大事なところが大事な状態になっていることに気づく。


「バ、バカーーーーー!!変態!何なのよコレ!!」


奪い取った布団を投げつけてくる。

相変わらず、初心うぶだな栞奈は。


そんなこんなで着替えた後朝食を済ませ、俺は栞奈と一緒に学校へ向かう。

すると、正門でいつも通り同じクラスの生徒会長の飯島紗耶香さやかがいた。


「ちょっと西村君、ネクタイがズレてる。ちゃんとしなさいよ!」


そう言って、生徒会長は俺のネクタイを正してくる。


「ちょっと、生徒会長さん!なんで大河にはいつもそんなに面倒見がいいんですか?」

「べ、べつに、生徒会長として当然でしょ!」

「でも、この前も大河にお昼誘ってたよね。その前も、大河が教科書忘れた時に積極的に貸してたよね?」

「た、たまたまよ!たまたま貸してあげただけよ!!」


生徒会長は顔を真っ赤にしながら、必死で言い訳をする。

こういう時の会長は、とてもかわいい。


栞奈と会長が言い争いをしている間に、クラスのアイドルこと竹本心愛ここあが来た。


「心愛ちゃんおはよ~!」

「おはよ~!」


多くの生徒から挨拶をされる。

本当に人気者だ。

聞いたところによると、今まで30人以上の男子から告白されたらしい。

中学時代も含めると、倍近くいるんじゃないかとの噂だ。

けど、誰とも付き合わなかったらしい。

すでに彼氏がいるという噂もあったが、本人はそれを否定している。

でも、誰か好きな人がいるっぽい。


「おはよう、西村君!」


いつもの最高な笑顔で挨拶してくれる。

ホント、天使みたいだ。


「ちょっと大河、何デレデレしてんのよ!」


栞奈が嫉妬してくる。

これはこれで、すごい優越感がある。


「西村君、あんまり女の子に愛想振り撒かないでよね。

いつもいつも、女の子にだらしないんだから。

そんなに女の子が好きなら、わたしが・・・」


と、徐々に小声になる生徒会長。

やっぱり、かわいい。

俺はあえて、「えっ、何?」と声をかける。


「い、いいから早く教室に行きなさい!!」


この反応が楽しい。


教室に入り、席に座る。

栞奈とは少し離れた席だ。けど、生徒会長とは隣り合わせという不思議な状態になっている。

だから、あの席間はいつもピリピリしている。


そして、竹本も教室に入って来た。

そして、俺の席まで来る。


「ねえ、西村君。良かった今日の放課後、屋上まで来てくれないかな?

大事な話があるから」


えっ?屋上で大事な話?

なんだろう、とてもドキドキする!

そして、栞奈と生徒会長はこちらを睨んでいる。


放課後になり、俺は屋上へ行った。

待っていると、竹本がやってきた。


「ごめんね、西村君。放課後に時間取らせちゃって」


そんな事、気にしなくていいのに。

むしろ、学校一のアイドルに呼ばれるなんて、勲章でしかない。


「でも、来てくれてうれしかった。今日は、思いを伝えるね」


お、思いを伝えるだと!?

こ、これはまさか!!?


「実は私、ずっと前から西村君のこと・・・」


と言った瞬間、栞奈と生徒会長が入って来た。


「ちょっと待ちなさいよ!」

「不埒な行為は許しません!」


人生で最高な瞬間を、二人に妨害される。

ていうか、不埒な行為ってなんだよ・・・


結局、竹本の言おうとした事は告白だったのか?

うやむやになってしまったが、またチャンスはあるかな?


栞奈と一緒に家に帰る。

栞奈は、すごく不機嫌そうだった。

全然口をきいてくれない。


「大河、今後は絶対に竹本さんと二人きりになっちゃダメよ!!」


なぜ?と聞き返すと、


「そ、それは、あんたが竹本さんにエッチな事しないようにするためよ!」


二人きりになったからって、いきなりそんな事はしないってば。


そして家に着き、玄関の扉を開ける。なぜか、栞奈も入ると言ってきた。

仕方ないので栞奈と一緒に家に入ると、客人らしき靴があった。

誰か来たのかと思いながら靴を脱いでいると、


「やっぱり、お兄ちゃんだ!!」


そう言ったのは、親戚の1つ下の陽愛ひめだった。

そして、俺に思いっきり抱き着いてきた。


「会いたかったよ~、お兄ちゃん!」


3年ぶりに会ったが、すごく可愛くなっていた。

いや、元々かわいかったんだけど、より可愛くなっていた。


「お兄ちゃん、大好き~!!」


まさか、クラスのアイドルより先に、妹のように可愛がっていた

陽愛から告白されるとはね。


「な、な、な、何してんのよ~!!」


栞奈が、陽愛を引き離そうとする。


「大河のスケベ!何いやらしい事してんのよ!!」


だから、別にいやらしい事はしてないってば。


「お兄ちゃん、今日は一緒に寝ようね!」


幸せに幸せを重ねたような嬉しい言葉だ。


「い、い、い、一緒に寝るぅぅぅぅぅ!!!??」


栞奈の顔は真っ赤になり、俺を見る目はまさに変態を見る目だった。


「た、た、た、大河のバカ~!!!!」


栞奈から、なぜか強烈なビンタが飛んできた。

俺の右頬には、綺麗な紅葉が出来上がっていた。


「おにいちゃん、大丈夫!?」


優しい陽愛は、俺を本気で心配してくれている。


「おにいちゃん、痛くなくなるおまじないしてあげる!」


そう言って、陽愛は俺の右頬にキスをしてくれた。

俺は、一瞬で痛みが取れた。


「こ、こ、こ、このスケベ~!!!」


栞奈はずっとワナワナしていた。

ホント、俺は毎日賑やかな楽しい日々を送ってる。

こんな日々が、ずっと続けばいいんだけどな。






ここは、とある警察病院の精神病棟。


「先生、あの患者は、一人で何を言ってるんですか?」

「ああ、ここに来る前、PCでよくやっていたゲームの主人公になった状態だ」

「どういう事です?」

「あの受刑者、元々は引きこもりでずっと部屋でPCゲームをしていた。

外にも出ず、ひたすら部屋にこもっていたらしい。

ただ、父親が怒ってPCを勝手に処分したところ、怒り任せに父親含め家族を殺害。

逮捕後、精神がゲームの中の住人のような状態になり、もはやまともなコミュニケーションも取れない。

おそらく、もう元に戻る事は無いだろう」

「そうなんですね・・・」

「それに、彼は今、末期ガンを患っている。おそらく、あと1ヶ月の命だ。

だが、彼はその方が幸せだろう。

このまま、ゲームの世界に浸ったまま生きていくよりは、その方が・・・」

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