第29話 古代人形達による現代王国に対する厳しい言葉と?

「そう、つまり現国王は心臓の病で次の発作次第では……と言う事でしたのね。その上で仕事をせず部屋に閉じ籠っていると。そして、その穴を埋める為に王妃と王弟である二人が何とかハルバルディス王国を支えている事までは理解しましたわ」



――と、現状を王弟殿下が話し、それを大まかに纏めたシャルロットに俺は紅茶を飲みながら次の言葉を待っていました。

すると、思わぬ言葉を口にしたのです。



「心臓病で子を成す事も出来ない者を王にしたとして、先は無いでしょう。早急に王弟殿下が王位を継ぐことが肝心かと思われますが、そう簡単な話ではなさそうですね。派閥、利権、裏金等々と言った所でしょうか。随分と腐敗しているようだ」

「あら、わたくしたちの時代でもそうでしたでしょう? 権力者は金さえあれば国民なんてどうでもいいんですのよ? でもお可哀そうに……お金は死後持って行けませんものね?」

「永遠の命が欲しいと色々と実験も為さっていましたが、結局は……でしたね」



そう語るピリポとシャルロットに王弟殿下を含めて三人がどう答えていいか迷っているようだった。

それもそうだろう。一を言えば中身のドロドロまで見透かす二人だ。何かを言えば何を返されるか分からないと言う恐怖はあるのだろうと思われます。



「しかし、一国民として言わせて貰えれば、上に立つ者達が金の亡者になるのは、まぁ当たり前の心理かなと思うんですよ」

「トーマ殿!!」

「何故そう思う?」

「身の丈に合った諸々を手に入れたいと言う欲求は出て来るでしょう? 大臣職ならばそれに見合った身の丈をとか、そういうので利権が絡んだり裏金が動いたり、まぁそういう事かなと理解は出来ます。ただ、国民の将来を蔑ろにするのならサッサと辞退して頂いて、罪を暴いて国民にそれらを示し、それこそ断頭台でバツーンとして貰ってもいい感じで消えて貰うのも一つの手ですよね。無論、一部では暴君等と言われたりするでしょうが。殆どの国民からすれば金の亡者となり下がった大臣や偉い人間って、許せる存在ではないので英雄、賢王扱いにはなるんじゃないですか?」

「あら、わたくしもその意見に同意ですわ」

「私もです。生かして置いて国民の税金を使うなんて勿体ない事出来ませんよね」

「ええ、温情を与えるのでしたら一年一般牢で生活。その間に更生すれば貴族籍は無いけれど一般庶民に落とすと言うのは一つの見せしめとしてはアリかと」

「え――? トーマってぇ、結構えげつねぇ~のな?」

「国民の税金を貪り食ってる連中が悪いんですよ。今でいう側妃とかもそうですよね? 余りいい話を聞きませんよ? 孤児院を潰したとかそういう話は聞きますけど、そんな側妃をおいている国王のまず人間性を疑いますし、国王たる資格なしと判断します」

「まぁ~アレな~。アレはねーよなぁ」

「直ぐに私が動いて違う孤児院を私財をなげうって作ったが、あの時は肝が冷えた」

「で、あなた方どういたしますの? 王妃様は兎も角として、側妃と国王はハルバルディス王国には必要ないのではなくて?」

「必要ないが処分に困る、と言う奴なのでは?」

「的を得てますね」



と、俺が口を挟むとピリポさんも頷いていた。

そう、必要はないが処分に困っていると言うのはそこかしこにある問題でもある。

特に【人間】という生き物に関しては、場合に寄ってはその手の事は往々にありますし。



「一つ、王弟殿下の権力で二人を幽閉。これが一番手っ取り早いでしょうね。理由としては仕事をせず引き篭もって問題を起こしているからと言うのが挙げられます。国の法律では、国王は国民の為に常に心を砕いて働かねばならないと言う決まりがあった筈です。それを無視していると言う事は国王たる器無し、と言う事ですよね?」

「ええ、その通りですね。トーマさんは聡いので話していて楽ですよ」

「ありがとう御座います」

「それで駄目な場合は毒薬で殺す。これでしょうね。一般的に毒なんてものは薬として使われるより暗殺に使われる事の方が断然多いんですし、もし毒を警戒していると言うのなら、寝ている隙に……と言う手もありますよ」

「流石ピリポさんですね。寝ている時は無防備になりますからやりようは幾らでもある」

「ふふふ、そうですね」

「あ、これって不敬罪になりますかね?」



そう俺が王弟殿下の方を向くと、暫し目を閉じていた王弟殿下は「ここでの話は不敬罪には問わない」と絞り出して口にした。



「寧ろ、私もそう考えていた所だ……」

「父ちゃん?」

「王弟殿下……」

「今のままでは王妃様はそう長くはもつまい。かといって放置も出来ない。派閥関係を気にしていれば、国が傾く。もう猶予は殆ど残されてはいないのだ」



そう絞り出した声に俺は「そうだろうなぁ」と内心思いつつダーリンさんからお茶のお代わりを貰い、今後の事を考えてみる。

現国王と側妃がいなくなれば、間違いなく城の中の淀んだ空気は綺麗になるだろう。

その上で派閥が云々と言う輩がいたとしても、幽閉となっている以上手を出すことは不可能。

そもそも国の憲法違反を最初にしたのは現国王であり、それを助長させたとして側妃を入れればいい。

王弟殿下は「国民の為には止むを得ず」と言う大義名分が出来る。

指示する国民はさぞかし多いだろう。

貴族はどうか分らないが、ちゃんとした志のある方なら理解はする。

だが、目の曇った輩はそうは思わないだろう。



「聡明な者は王弟殿下に賛成するでしょうね。ですが、目の曇った輩はそうは思わない」

「ああ、その通りだ」

「なら、一度国を支えるべき大臣を入れ替えればいいんですよ。今に固執する必要はないでしょう?」

「それはそうだが」

「私もトーマさんに賛成ですね。目の曇った輩は貴方に必要ですか?」

「っ!」

「聡明な方を傍に置きなさい。聡明たる国王になりたいのならばそうしなさい。目の曇った輩の末路なんて決まっているんですよ」



そう言ってほの暗く笑うピリポさんに俺は強く頷いた。

大体目の曇った輩の末路何て決まっている。

無駄に足掻いた挙句死ぬか、失敗して全てを失うか……そういう未来が多い。

冷静に分析すると言う事が出来ないからだ。

それに、どこかで失敗すればそこから足が着く。

尻尾切りするとしても、どこかで繋がれば逃げようはない。

そういう輩は蜘蛛の巣のように糸がはびこっている場合が多いですからね……。

無論、対応する此方はもっともっと糸を相手よりも伸ばさねば喰われるわけですが。



「と、思うんですがどう思います?」

「俺ぇ……トーマって切れ者と思ってたけどぉ……マジおっかねぇって思ったわ」

「ありがとう御座います」

「褒めてはねぇかなぁ」

「そうですか? 私はとても気に入りました。流石トーマさんですね」

「わたくしも同意見でしてよ。敵対するというのならこちらは更に手を伸ばす必要がございましょう? アンクはどう思いまして?」

「王が交代すると言う事に関しては、歴史上そう難しい事でも珍しい事でもない。物事は単純かつ分かりやすく見るべきだ。その上で対処すべきは対処する。腕は相手に負けぬ程伸ばさねばならないがな」

「それに、王弟殿下の功績として古代文明との今後のやり取り等があれば、アンクさん達が王弟殿下の後ろ盾ともなれます」



そう俺が口にするとアンクさんは「ふむ」と王弟殿下を見つめ、お互いジッと見つめ合っておられます。

すると――。



「悪い話ではない。俺が王城へ行く事など無いだろうがな」

「それでしたら、わたくしとダーリンが赴いても宜しくてよ?」

「シャルロット!?」

「現代の人形師の様子を見に来た……とでもしておけば宜しいでしょう? そこでぼろ糞に言って差し上げますわ。ふふふ」

「流石歴代きっての悪女……シャルロット・フィズリーですね。ああ、そんな貴女だからこそ美しい花に毒を持った蜂共が寄って来るとも限らない」

「ええ、ですからわたくしをお守りになってねダーリン」

「つまり、シャルロット様とその夫、ダーリン様がお越しになって下さると言う事ですか?」

「ええ、その通りですわ。王弟殿下の功績としてはそれなりのものではなくて? だってわたくし、有名ですもの」



そうバラが咲き誇るように微笑んだシャルロットさんに、三人は頬を染めつつ我に返って咳をし「それは大変有難いですが」と口にするとシャルロットさんはモリシュを見ました。



「そこのチンチクリン。箱庭師の名前何だったかしら?」

「モリシュでぇ~す」

「そうそう、モリシュ、貴方わたくしとダーリンの為に城までの通路をお貸しなさい。帰りも無論貸すんですのよ」

「えぇ~~……」

「王城に泊る気はサラサラありませんけれど、各所を見て回るくらいは可能でしてよ?」

「そうですね、もう動かないとはいえ、脳だけのアンクさんの様子を見に行くのも大事ですね」

「ええ、二度と動くことのない過去の遺産。今どうなっているのかは気になりますもの」

「そういう事でしたら、近いうちに場を設けましょう」

「是非早めにお願いしますわ。トップをサッサと変えて、本来あるべき姿に戻す為に手伝うんですからそれ相応に急いで貰わなければ、ねぇ?」



シャルロットさんの言葉に王弟殿下は膝をついて恭しく頭を下げ、慌てて二人も頭を下げていた。

俺も頭を下げようとしたけれど、それはダーリンさんに止められてしまった。



「では急ぎなさい。あなた方にある時間は無限ではないのですから」

「はっ!」

「畏まりました!」

「うー……がんばりまぁ~す」

「んふふ、励む事ですわね」



こうして会談は一先ず解散と言う事になり、俺は三人を連れて家に帰り、お三方は顔を引き締めると直ぐに行動に移るようだ。



「ではトーマ君、また来る時は是非頼むよ」

「畏まりました。モリシュも大変だろうけど頑張りましょう」

「お前も怖いけどぉ~シャルロット様はもっと怖いから頑張るわ~」

「それが宜しいかと」

「貧乏くじ引いた気がするけど、歴史的瞬間っていうの? そういうのに立ち会えた気がするから、良しとするわ」



こうして彼らはモリシュの箱庭から王都にある城へと帰って行き、俺は扉を閉めてシャーロック町に行き、服を購入してかえら帰った訳だけど――。



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二人だけで旅をしていた、その内仲間も増えた。だが僕達は狙われている。


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