第18話 人形保護施設で動きつつも、仕事はしっかりとこなしていく。
――次の日、朝からミルキィにも手伝って貰い人形たちの身体を作る事になった。
パーツを出して行く間は問題ないのだが、流石に男性の裸を見るのは恥ずかしがったので途中から俺一人となった。
時間は掛かるものの、一日では無理だと判断したので二日にかけて身体を新品にしていく。
核となるものは古代文明で作られた物らしく、ニャムに注ぎ込んだ際には動いたので問題は無かった。
恐らくとてもレアなモノを使っているのだろう。
そのまま二日掛けて男性陣を全員新しい身体に切り替えが終わり、女性陣は一日で終わっていたそうです。
「新しい身体になるとギシギシならないからいいわね!!」
「気持ち良くなりました!」
「皆さん動きが鈍ってましたからね。これもトーマさんのお陰です」
「無事に作れて良かったです」
「ワシも皆みたいな見た目に憧れるがのう」
「メテオはそのままが良いと思うよ? アンタが大きくなるとアタシの胸の中に入れられないからね」
「むう、そういう事ならしかたないのう」
「そう言えば、現代は人形と人形の結婚はどうなってるの?」
「させて貰える筈ないだろう? そんな話来たことも無いよ」
「そうじゃな、聞いたことも無いな」
「ふーん、じゃあ何時か施設に保護されるまで生きたら、マナリアちゃんとメテオちゃん結婚して子供作ったら?」
「「へ?」」
「あれ、相思相愛かと思ったけど違った?」
そう山に言われた二人は顔を見合わせ、腕を組んで暫く考え込むと――。
「相思相愛とも違うのう」
「そうだねぇ……どっちかと言うとトーマの為の運命共同体って感じだね」
「俺の為のって」
「現代の人形を頼む人間の中には悪い奴もいるんだ。この前何て襲われそうになってたし、私は護衛もしてるからねぇ」
「え、そうなの!?」
「やはり人形を大切にしない人間は多いですか?」
「そうですね……」
「やっぱり多いです。特に田舎に行けば行くほどって感じかなぁ」
「そうじゃな。例えば介助要員の人形に農作業を延々とさせようとしたりとかもあるんじゃよ」
「それはまた……」
「人形を理解してないんですね」
「そういう事です。田舎に行けばそれが顕著ですね」
「今は作るのさえも断ってますけど」
「だろうな」
皆さんがウンウンと頷く中、マリシアは更に爆弾を投下する。
「それに、死んだ人形を愛玩として持っていたいって言う変態も多くてね」
「ああ、貴族の弟妹人形なんかは特にそうじゃな」
「それはその時代でもあるんですね」
「と言う事は古代でもありますか」
「あったな。アルマティやイルマティが出始めた頃、それを盗んだ人形に着けて」
「自分の憂さ晴らしの為に狂わせてた輩がいたよな」
「最後はデュオが殺しちゃったけど、確かにいたそうよ」
「アルマティとイルマティはそういう使い方もあるんですね……」
「実は西大陸から使節団が来たことがあって、その中にアルマティやイルマティの開発に成功した人も来ていたんです。詳しい話は分かんないんですが、ハルバルディス王国の地下にある脳だけの人形の視察だとかで」
「あの脳だけのアレはもう動かないぞ。俺と切断したからな」
「そうなんですね」
「今や古代文明の化石だな」
そう語るアンクにピリポも「実際化石ですよね、我々も」と遠い目をして口にし、コウは「やだ、お爺ちゃんなんて呼ばないで!」と言って場を和ませていた。
脳だけの人形がもう二度と動かないと言うのはホッとする。
もし動いたら怖い事にでもなりそうだと思ったからですが……。
「それに、あの人形を壊したのは西の大陸から来た軍事国家の人間だ。チップに仕込んだ爆弾をばらまいておいて、自分たちが出て行ってからドカンって奴だな」
「それで、アンクさんに被害は?」
「一瞬痛みは走ったがそれでバツッと回路を切断したんだ。あの時既にあの人形はまともに機能しなくなり動かなくなった」
「そうだったんですね」
「まぁ、それがもとで愛しいニャムと会えなくなってしまった訳だがな」
「戻って来ただろう?」
「ああ、君がいないと息も出来ない」
「ラブラブですね」
「俺達は慣れたが、慣れるまでは見ているこっちが恥ずかしかったぞ」
「安心しな。トーマとミルキィも似たような感じだから」
「「え!?」」
「自覚なしか? あれだけイチャイチャしておいてか?」
メテオに驚かれながら言われると……そんなにイチャイチャしていただろうか?
していた――かも知れない。
ハッキリ言えない所がアレですが……。
「新婚なので許して貰いたいですね」
「ほう、新婚なのか」
「ええ」
「新婚なんです!」
「なら思う存分イチャイチャするのは仕方ない。大体此処にいる奴等だってイチャイチャするし、それは古代からずっとそうだぞ」
「それは……凄いですね」
「是非私達も!!」
「そうですね!」
「胸やけしそうだよ……」
「まぁ、二世は早そうではあるがのう」
そんな事を言われつつも、色々な質問をして古代時代と今のとの違いが本当にはっきりしていて面白く、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
それに、箱庭はプリポと千寿の遊び場でもあり、コウが昼寝をしによく来るようになった。
「兄さんがいない時は大抵箱庭だ」とエミリオが言うくらいには。コウ曰くとても居心地がいいそうだ。
元々研究職であったシャルロットは世界樹の研究に没頭した。
謎の解明が出来るかも知れないと嬉々として調べているらしい。
畑は毎日新鮮な野菜が出来る。
悪くなった葉物は鶏に餌として与え、ヤギにも食べられる野菜は食べさせた。
そして新鮮で魔素タップリの野菜のお陰で、皆は魔素不足からは解消されているらしい。
時折魔素詰まりが無いか確認はするし、魔素の流れに問題がないかもチェックして上げると喜ばれた。
そんな人形保護施設での生活も楽しみながら、本来の仕事にも積極的にやる事が出来る。
人形のメンテナンスは相変わらず多いし、朝は翻訳の仕事がない為、ノートに記入した古代の事と今との違いを纏めた数冊の本位の物が出来た。
これは表に出すつもりは余りない。
必要に迫られた場合にと同じ物をもう一つずつ作り備えた。
「さて、今日のメンテナンスは……ファーボさんから?」
「ええ、母に似せて作った人形の調子が悪いんですって」
「それって……所謂アレな人形だよな? 俺じゃなくてホーリーの方がいいんじゃないか?」
「ホーリーさんには見せたみたいよ。ただ、魔素詰まりが最後まで取れなかったらしくって」
「なるほど、それなら急いでいこう」
「そうね」
こうして俺とミルキィ、そしてマリシアとで町長の屋敷まで向かうと、玄関をノックして出て来たファーボさんが俺達を見てホッと安堵した。
「ああ、来てくれて助かったよ。魔素詰まりが最後まで取れきれなくてね」
「直ぐ取り掛かります。その人形はどちらに?」
「屋敷の外にあるもう一つの家にいるよ。案内しよう」
奥さんがいるのに同じ家で……というのは流石に出来なかったらしい。
その為、その人形と愛し合う時用の家を建てる辺りがなんともファーボさんらしい。
男は何処までも性欲にどん欲だなと改めて思いました。
「しかし、本当にトーマ君はミルキィ人形を作らないのかい?」
「ええ、今は男性用の避妊具も高性能ですし、定期的に購入してますので」
「そこまでミルキィ一途で嬉しいよ!!」
「今は何かと忙しい時期ですし、子供はまだ先になりますが」
「うんうん、暫くは愛し合いたい時期だね!」
「そうですね」
「もう、お父さんセクハラよ?」
「ははは! 二人が愛し合っているのが父さんは嬉しいんだよ」
そう言うと小屋に到着し、中にはいるとファーボさんの奥さんの若い頃に似た人形が出迎えてくれた。
そして魔素詰まりを取るべくハッチに手を当て、魔素詰まりを直して行くと30分もすれば魔素詰まりは取れて、魔素の循環も良くしたので大丈夫だろう。
魔素詰まりは出来ていたのは1個だけだったが、結構頑固だったのだ。
「この方は作ってもうどれ位になります?」
「この子で二代目だからね、まだまだ持つはずだよ」
「二代目なんですね。魔素の残量はしっかりあるので大丈夫と思います」
「それは良かった。すまないね、急に着て貰って」
「いえいえ、魔素詰まりは早めに直してこそですから」
こうしてファーボさんがどれだけ奥さんが好きかも分かった所で家に戻った訳だが、魔道具から手紙が届いていて嫌な予感を感じつつ中を開くと、古代書の翻訳作業をさせていた相手からの連絡だった。
そこには――。
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