45. IL BALLETTO DI BRONZO『YS』(1972)

今回はまたぐっと時代をさかのぼります。


1970年代、プログレッシヴ・ロック華やかなりし頃、イタリアの地に突如とつじょとして狂い咲いたダーク・シンフォニックの毒花、IL BALLETTO DI BRONZO(青銅のバレエ、の意)の登場です。


1stアルバムは典型的なビートロックで、プログレ要素は皆無。その後加わった鬼才Gianni Leone(Vo./Key.)を中心に制作されたのが、2枚目にして最終作となるこちらのアルバムです。



◆IL BALLETTO DI BRONZO『YS』(1972)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/6VLGPG3GiiwBXt6LBHus7K?si=cvGBhjh8TqaQOvr22qu-wQ


https://www.youtube.com/watch?v=aLF2nODFpKs&list=OLAK5uy_m3hJNA0FiloRPx6gkoVZBePGg1kmP_ack


前作とは別バンドと言ってもいいほど音楽性が激変。KING CRIMSONの暗黒とEMERSON, LAKE & PALMERの熱狂がぶつかり合う混沌、それでも足りないとばかりに民族的土着性や現代音楽の要素をまぶした毒々しい色模様に圧倒されます。


ピアノ・チェンバロ・オルガン・メロトロンといった、あらゆる鍵盤類が惜しみなく投入された贅沢ぜいたくぶり。変拍子を多用し、時に調性を無視した破壊的な演奏が繰り広げられるも、たんしないギリギリの均衡を保っています。


アルバムの構成は5つのパートがほぼ切れ間なくつながった組曲形式で、ジャズのグルーヴ感とクラシックの様式美、そしてロックの熱量が渾然一体こんぜんいったいとなったプログレッシヴ・ロックのだいを存分に味わうことができます。



◇「Introduzione」

https://www.youtube.com/watch?v=aLF2nODFpKs


15分超と最も長いパートです。以降も度々出没する妖美な女声スキャットが、聴者を狂気と正気の狭間へといざないます。12:19~「窓、ベランダ、あ~転んだ」の空耳は、日本語話者限定のお茶目なサプライズ。



◇「Primo Incontro」

https://www.youtube.com/watch?v=XxeuHZritdg


前パート後半の流れを受け継いだとうのヘヴィロック。ファズギターの狂乱が鳴り止んだ後は、チェンバロの即興的な演奏でしめやかに幕が閉じられます。



◇「Secondo Incontro」

https://www.youtube.com/watch?v=5KVDMQKVvH8


B面の開幕を告げる3分ほどのパート。冒頭から訴えかけるような叫びが高らかにこだまします。静と動が交互に訪れる展開が、これまでになく不安と混迷をあおり立てます。



◇「Terzo Incontro」

https://www.youtube.com/watch?v=hMFXXeSOW5E


地を跳ね回るベースに覆い被さるようにして響くのは、変化の訪れを告げる不気味なスキャット。ギターと鍵盤類も左右から圧迫をかけ、しょうそうを駆り立てます。



◇「Epilogo」

https://www.youtube.com/watch?v=aN2EdSClu3Y


最後を飾る11分半。鬼気迫るピアノとベースのユニゾンフレーズは圧巻。不気味に響き渡るベースのリフレインにギター他が合流。静謐せいひつを挟んでの終盤、再びのユニゾンにクワイアが重なり、最高潮へと達した狂気を道連れに終幕を迎えます。



現実と夢幻の狭間を行き来するかのような唯一無二の音楽体験は、ロックミュージックが表し得る到達点の一つと言っても過言ではありません。想像をき立てるレトロで意味深長なアートワークも相まって、強く記憶に刻まれる秀逸さです。


とりあえずは、最終パートの「Epilogo」だけでもお聴きいただければ、その凄まじさの一端は伝わるものと思います。



【おまけ】


◇「La Tua Casa Comoda」

https://www.youtube.com/watch?v=NPpo8F4hlkE


CD化の際に追加収録となったボーナストラック。元はシングルとして発表された哀愁ただようバラード曲で、本編とは違った味わい深さがあります。余談ですが0:42~「お荷物よね、小茂田こもだセコンドって」に空耳します。

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