最近雇った独占欲の強い美少女メイドが、実は王女様だった。

神月

第1話 メイドと王女様

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「ただいま、シアナ」 


 図書館に行っていた僕が、僕の家であるロッドエル伯爵家の屋敷に帰ってくると、白に近い艶のある銀髪を靡かせてメイド服を着ている十五歳の少女、シアナが出迎えてくれた。

 シアナは、今後貴族学校に通うことになる僕のお手伝い係が欲しいと家で結論が出て、メイド雇用ということで町の掲示板で募集してみたら、募集から三十分もしない間にこの屋敷まで来て、是非ともメイドとして働きたいと言ってきた、メイドという仕事にとても前向きな少女だ。

 過去にメイド経験は無いということらしいが、シアナはメイドのことをとても熟知していて、とても優秀だ。

 頼んだことや、頼んでいないことまでも僕が困りそうなことがあれば全て完璧に対処してくれる。


「ご主人様、今日も図書館ですか?」

「うん、今後貴族学校で学んでいくなら、事前に学んでおいた方が良いこともあると思うし、そうじゃなくても伯爵家の長男として生まれたからには、しっかりと領地の適切な運営方法とかも学んでおかないといけないからね」

「流石ご主人様です!もしかしたら女遊びでもしているのかもしれないと、肝を冷やしていましたがそんな心配はないようですね」

「僕は今までそんなことをしたことないのに、どうしてそんな心配を……それに、シアナだってすごく頑張ってるから、もっと休んでほしい」

「そ、そんな……!私なんて、ちょっと国の方針に口出しするぐらいで……!」


 国……?

 そのシアナの発言に少し思考が止まってしまった僕だったけど、もう大体一月と少しの間シアナと過ごしているから、僕はしっかりとその言い間違いの意図を汲み取る。


「国っていうのは、屋敷の庭のこと?」

「え、え?は、はい……!その通りです!お庭の手入れをちょっとするぐらいなので、ご主人様に比べたら私なんて全然……!」


 シアナは基本的になんでもできるけど、時々こんな感じで抜けているのも僕はシアナの魅力の一つだと思っている。

 それでいて、何故かはわからないけど異常なほどに僕のことを敬ってくれている?から、僕もそれに応えてより頑張っていかないといけないという気持ちになる……そのことを再認識すると、僕は口を開いて言う。


「庭の手入れでも十分すごいことだよ、僕は貴族に生まれたからその領土ができるだけ繁栄できるように色々と学んで行かないといけないけど、やっぱり直接的に繁栄を促すのはシアナみたいに、直接的に何かをできる領民の人たちだと思うんだ」

「素晴らしいお考えです……!やはりご主人様は、領主で収まるような器ではなく、王の器ですね!」

「王様なんて……僕には目の前のことだけでも精一杯なのに、こんな僕には荷が重いよ」

「いえ!いつかきっと王になれると思います!」


 僕のことを心の底から敬ってくれているのはわかるが、シアナはたまにこんな感じでスケールがデカいことを言い出すからそこだけ困っている。

 シアナの家庭環境は知らないけど、もしかしたら結構世間を知らないのかもしれない。


「そもそも、器がどうだったとしても、元々王族じゃない僕が王様になるためには、現王様とその血を引く王女様の誰かに認めてもらった上で、王女様の誰かと婚約しないといけない……とてもじゃ無いけど、王女様たちは僕なんかと婚約したいなんて思わないと思うよ」

「そ、そ、そんなことありませんよ!誰か一人ぐらいはご主人様と婚約したいと思っている人も居るはずです!」

「それこそあり得ないよ、公爵家の人たちならまだしも、伯爵家の僕とそんなことを思ってる人なんて居ない」

「……ご主人様、私少し外に出ます!」

「シ、シアナ!?」


 僕がどうして外に出るのか聞こうとした時、シアナは走って屋敷の外に行ってしまった。


◇シアナside◇

「────お嬢様、どこへ行かれるおつもりですか?」


 屋敷から出たシアナに、黒のフードを被った長身の少女がそう話しかけた。


「今からお城に帰って、お父様にルクスくんとの婚約を認めてもらうの」

「相変わらず婚約のこととなると考えが甘くなるようですが、それは無茶です」

「やってみないとわからないじゃない」

「お嬢様がそれを試行した回数は、百二十九回ですが、全て失敗しています」

「……だから何?千回やって婚約を認めてもらえるなら、私は千回になるまで同じことを言い続ける」

「お嬢様、聞き分けを────」


 屋敷のドアが開いた瞬間に、黒のフードを被った長身の少女はシアナの前から姿を消した。

 シアナがそのドアの方向に目を向けると、そこから姿を見せたルクスがシアナに声をかけた。


「シアナ……?さっきは走って出て行ったけど、何かあったの?」

「ご、ご主人様……!い、いえ、なんでもありません!」

「そう?」


 何も気付いていないルクスのことを見て、シアナは少し微笑みながら屋敷の中に入った……シアナはこの時────第三王女フェリシアーナではなく、ロッドエル伯爵家のルクスに仕えるメイドとして、ルクスと関係を進めて行くしかないということを決意した。



 今日から毎日18時15分に最新話を投稿させて頂こうと思います!


 心優しく純粋な主人公と、メイドとしての顔と王女様としての顔二つを最大限に利用して主人公との関係を進めようとするヒロインのお話です!

 この第一話を読んだ段階での皆様のこの作品に対する評価や期待値などを教えていただきたいので、積極的に素直な評価をしていただけると嬉しいです!

 その中で、もしこの作品を楽しみだと思ってくださった方が居ましたら、この作品を応援すると思っていいねや⭐︎、コメントなどをしていただけると本当に嬉しいです!

 今日からよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る