第4話 可愛くあるべし?
僕の名前は時方悠。
この現代社会を憂うる者である。
今日はぶらりと散歩に出かけている。
もうすぐ桜の季節。
公園の桜並木はまだ芽吹いていないけれど、
「おや?」
町内会のポスターが出ているぞ。桜がピークとなりそうな土日に町内会主催で催し物をやる、そんなポスターだ。
桜色の頬の可愛い女の子が描かれている。
「うーむ……」
しかし、こういうのはほぼ女の子か可愛い犬か猫のような気がするな。
中には女性蔑視だってクレームをつけられるような子もいる。
ちょっとワンパターン過ぎるのではないだろうか?
たまには、花見酒とか、桜が似合う男子とかいても良いのではないだろうか?
「それは無理だと思うわ」
ここで幽霊兼AIの新居千瑛が登場だ。
「私が思うに、この町内会も含めて99%のところに女性蔑視のような意図はないのよ。でも、彼らは女の子や犬や猫に頼るのよ」
「どうして?」
「逆に考えてみれば良いのよ。どうして女の子に頼るのだと思う?」
「うーん、可愛いから?」
「そうね。可愛いし、自分を痛めつけるようには見えないからよ」
痛めつけるとは物騒じゃない?
「でも、そうなのよ。基本的に人は自分の願望を現すものなのよ。つまり、この女の子のように無害で、優しい存在でありたいと」
何だかフロイトっぽい感じの話だな。
「現実はそうじゃないのよ。騙し、ハラスメントがあり、ぼったくりだったりするわけよ。彼らは自分達のことが後ろめたいから、疑われたくないと無害そうな存在に頼るわけね」
「そ、それは言い過ぎじゃない?」
花見の販促で騙したり、ハラスメントとかはないんじゃないだろうか。
いや、絶対にないとは言えないのかな?
「そうかしら? 例えば本当に美味しくて値段も適当なラーメンだったら、いかつい男が作っていても、ヤクザが作っていても、川野遥が作っていても食べるでしょ? そうじゃないところは可愛い女の子で呼び込むしかないのよ」
「確かにそうかもしれないね」
「そういうことなのよ。まあ、悪意はないとしても、少なくとも自信の無さは現れているわね」
なるほど、自信がないから可愛いものを前面に出して呼び込みたいと。
自信のない国民性と言われる日本人なら、ありえないではないのかも。
「実は全く逆のパターンもあるわ。シカゴ・ベアーズのプロモーションには、三毛別のヒグマもかくやというくらい怖いクマが多数出て来て、相手チームを破壊しているわ。でも、実際のベアーズにはテディベアとか生後3日の子熊と言った、頼りなくだらしないクマしかいないのよ。だから試合になると簡単にだっこされて押しやられて見るも無残に負けてしまうわけ」
あぁ、現実が弱いから、広告くらい強くあってほしいとなるわけね。
「マッチョ志向の強いアメリカ人にはこういうものが多いのかもしれないわね」
「確かにそうだね」
「……今回はちょっとパンチが弱い話になってしまったわ」
言われてみれば確かにそうだ。
一時期沢山あった心理学系のマンガに同じネタがあるかもしれないくらい普通の話という気がする。
「当初もう少しパンチのあるネタを用意していたけど、パンチがありすぎて『まだこれを出すほど慌てるような時間じゃない』ってネタばかりだったから。フィニッシュホールドばかり覚えたプロレスラーが試合の序盤に出す技が無くて困っているような事態に陥っているわ」
さいですか……。
作者注:ちなみにどんなものがあるかと言うと、『LGBT』とか『誹謗中傷』とか『国会議員』とかそんな感じ……(笑)
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