第51話 出荷の日の朝 4


 ジューネスティーンが開発したパワードスーツから様々な商用展開が見込めるようになった事をヒュェルリーンは嬉しそうにボヤくと、様子を見ていたアイカユラは、少し気まずそうな表情をした。

「あのー、ジュネスの剣もでしょうか」

 初めて店に来た時に勘違いをしてしまい、仕事に追われて疲れていたエルメアーナを見て閑古鳥が鳴いている店だと判断してしまい、追加注文を取り過酷な労働を敷いた事を思い出して言ったようだが、ヒュェルリーンは、その事を気にする様子もなかった。

「あ、そうよね。それも有ったわ」

 ヒュェルリーンは、ヤレヤレといった様子で答えた。

 過酷な労働をエルメアーナに強いたアイカユラにより売上を伸ばした事にヒュェルリーンが気が付き、出荷調整を行なって事なき終えていた事について気にする様子はない。

 むしろ、自分のフォロー可能な範囲での失敗は経験値に繋がるので、ヒュェルリーンとしては現場で良い経験をしたか、成長の階段を一つ上った程度に考えていた。

「あれは計算外だったわ。ジュエルイアンと二人で会いにいった時は気が付かなかったのよね。まあ、こっちは商人だから、武器には疎いって事もあったからでしょうけど、あそこのギルド支部の人達も何も言ってくれなかったのよ」

 ヒュェルリーンとしたら、ジューネスティーンと最初の出会いの時には持っていた剣について気が付いていなかった事の方が自身の落ち度として印象が強い。

 商会のトップであるジュエルイアンの筆頭秘書として新たな市場の可能性について提案できずにいた事が悔やまれていた。

 それも、当時のジューネスティーンは、シュレイノリアの魔力と比較されてしまい、ギルド支部では職員からミソッカス扱いされていた事もあって、作っていた剣についてもオモチャ程度にしか思われていなかった。

 ジューネスティーンが欲しいと言った曲剣は、一般的に太く分厚い剣が当たり前だったので、子供の身体能力では重さを持て余してしまうと思われていた。

 そんな事から、自身の必要とする曲剣を作る事にし、レイビアのように細く薄い曲剣を作った。

 その剣を見たギルドの職員達は、自分達の常識から薄く細い曲剣は簡単に曲がったり折れたりしてしまうと思われていた。

 斬る剣は叩くように斬るので、刀身に大きな力が掛かる事から、強度が必要となる。

 棒で叩く時、その棒に受ける反作用の力を受けるのと同じで、斬る為に叩くとなれば刀身に衝撃を受けるので、その衝撃を受けても問題無いように斬る剣は太く厚くなる。

 ジューネスティーンは、そんな問題を硬鉄と軟鉄を重ねる事によって解消し、尚且つ斬れ味を鋭くする事で剣に掛かる衝撃を最小限に抑えていた。

 一般常識として知られている曲剣とは大きく異なるた為、ギルドの職員としても取るに足らない剣だと思われてしまっていた。

 触れれば簡単に斬れてしまう程に研ぎ澄ました刃は一般的な曲剣を遥かに凌ぐ事から刃が獲物に入り易く両断できる。

 そんな二種類の素材を使った剣は、鍛治を極めたエルメアーナのような人にしか理解できるものではなかった事から、ジュエルイアンもヒュェルリーンも見落としていた。

 しかし、独学で鍛治を始めたジューネスティーンには不完全な部分も多かったが、一目見て特殊な作り方をしていると気がついたエルメアーナの鍛治技術によって完成度を上げていた。

 エルメアーナによって完成度が上がったジューネスティーンの日本刀は、学校内で噂となり、エルメアーナが作れると知ると購入する生徒が出始め、アルバイトでギルドの依頼やら魔物の討伐を行うにつれ使われている剣が噂となり始めると、王都のギルドに所属する冒険者から注文を得る事になる。

 特に軽い曲剣という事から女性冒険者に評判が良かったが、女性冒険者に評判で使われ始めたのには別の理由もあった。

 そして、注文が殺到してしまった事で、ヒュェルリーンがエルメアーナを鍛治に専念させるためにアイカユラを派遣している。

 その当時の事を考えるとアイカユラは申し訳なさそうな表情をしていた。

「こっちがエルメアーナとジュネスを会わせる段取りを組もうとしてたら、その前にジュネス達が訪れて、持っていた剣をエルメアーナが見て作り始めてしまった事が原因なのよね。それも、ジュネスが冒険者になる前に欲しいと思った剣が用意できなかったからといって、自分で考えて作ってしまったというのだから、あの子はとんでも無い技術を短い間に幾つも作ってしまったのよねぇ」

 ちょっと困ったようにボヤいたが、嬉しそうにもしていた。

「でも、あのお陰で商会もここ数年は好調なのよね。ジュエルイアンも忙しそうだけど、前向きな忙しさだから嬉しそうにしてるわ。二人の時は、とても元気な子供みたいになるの」

 そう言うと、何かを思い出すようにすると、少し頬を染めて恥ずかしそうにする。

 その様子をアイカユラは、なんでなのかというような表情をして不思議そうに見ていた。

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