✜34 ザ・エデン
ここは……。
「ふむ、今日の客人は異世界人のようじゃの」
風が強い、気が付いたら人工的なタイルの上に立っていた。水路が横を通っていて、その先はなにもない。遠くを見るとこの場所がはてしなく高い場所であることがわかった。
正面に立っているのは、とんがり帽子を被り、
「ここはどこですか?」
「ふむ、ここは
管理塔? ──なにそれ、初めて聞く名だ。
「あなたは?」
「ワシはシロワ・ランドール、訳あってここへ住んでおる」
シロワと名乗った老人が視線で案内したのは、おとぎ話に出てきそうな巨大なキノコの家。こんなところに住んでるんだ。不便じゃないのかな?
「ちょっとした『あるばいと』じゃ、お主をこれから管理塔の中へ送る」
あるばいと、か。めちゃくちゃ聞き覚えのある単語だな。
「シロワ……さんは、もしかして地球から来たんですか?」
「いんや、ワシはこの世界の生まれじゃ、どれ? もう送るぞ」
「え、ちょっと待っ……」
このシロワって爺さん、せっかち過ぎん? あっという間に知らない場所へ転移した。
これが管理塔の中?
長い廊下があって、左側に等間隔で部屋がある。部屋一つひとつには30人くらいのアンドロイドが椅子へ座って机にある端末を操作している。全員、同じ方向を向いていて、その先には巨大なモニターがある。日本の学校の教室をイメージすると分かりやすいかも。
自分の方を誰も見向きもしない。あるアンドロイドの端末を覗くと小さな画面がコマ割にされていて、ひとつの画面に20枠くらいあった。画面の一個一個には、第3者視点のようにいろんな人物が一個の画面にひとり映っており、まるでその人物を監視しているようにも見えた。画面は5秒おきくらいに1回スキップされて、また違う20枠が映し出されている。
そして部屋の前方にあるモニターは人物が固定されていた。映画やアニメでよく見る王様っぽい人物が映し出されている。
同じような部屋が何個も続く。
廊下ひとつにつき、ちょうど20部屋ある。行き止まりのところに階段があるので上がってみると、また同じ長い廊下と20個の部屋があった。
3階、4階、5階と行き止まりに着いては階段を上がっていく。
数えるのも億劫になった頃、おそらく100階あたりでようやく違う光景に変わった。
丸い部屋で、周囲の壁には7つの巨大なモニターがある。
そして、その巨大なモニターのうちのひとつに自分がまさに今、リアルタイムで映し出されていた。
「やあ、よくここまで来たね」
アンドロイドが、10体ほど働いている傍ら、人間がひとりだけ中央にある偉い人が座るっぽいところで、お茶を愉しんでいた。
「ボクはタバサ、上位天使だ。ヨロシクね!」
上位天使? なるほど確かに頭の上に輪っかが浮いている。
「えーと、日本から来たんだっけ?」
「はい」
「じゃあ異世界的説明は省略っと」
「いや、いろいろ知りたいですけど」
「 たとえば?」
この世界は、小説や漫画でいう異世界なのか、それともゲームの世界なのか、そしてここはいったいなんなのか?
「簡単にいうと別の惑星だね。異世界とかゲームの世界だって、ぷぷっおもしろ♪」
いやいや、別の惑星でも十分驚きなんだが?
この管理塔はこの惑星を文字通り管理している場所で、いろんな惑星から連れてきた種族を定住させ、異世界っぽくしているそうだ。
「ボクは別の惑星からこの惑星を管理しているんだ」
今、目の前にいるのは、ホログラムで実体は何万光年も離れた所にいると話す。
「何のためにそんなことを?」
そう、いったいなんでそんなことをする必要があるのか。
「ボクの上司の趣味だね」
彼女には上司がいて、自分たち人間からはこう呼ばれていると言う。
〝神〟と……。
神の娯楽、か。いかにも永遠の生命を持つものが、考えそうな話だ。
「それで自分はなぜこの塔に呼ばれたんですか?」
核心に触れる。わざわざこんなところへ呼び出したんだ。意味があるに違いない。
「え、キミが、資格を得て来たんでしょ?」
「え?」
「え?」
会話が噛み合っていない?
上位天使タバサが言うには、この惑星のいくつかの管理者権限があって、古龍を倒したので、その資格を自発的に得てこの塔へ来たと思ったそうだ。
でもじゃあ、サーバーってなに?
侵略者の連中……自分のようなプレイヤーが、別の異空間からやってきてるんじゃ?
「それは地球の神の仕業だね、ウチの
まあ、あっちはあっちで別の思惑があるから気にするなと言われた。いや気にしないでって無理でしょ?
「いけない、主に用事を頼まれてたんだった、キミの件はちゃちゃっと済ますとしよう」
え、なんか雑……。
天使タバサがキーボードを操作すると、右手の甲に変な印が刻まれた。
「じゃあ、くれぐれもも他所の連中に負けんな?」
「ちょっとまだ聞きたいこ……」
皆、人の話を聞かないな……強制的に転移させられた。
目を開けると、クリエの街にある自分の部屋のベッドだった。
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