✜01 気がつけばそこは砂浜だった
「よし、アップロード完了っと」
小さい頃にサンドボックス系のゲームと出会って10年、市場に自分の世界やキャラクターを販売するほどドップリと嵌まっている。いわゆる青春ってヤツ。
通信系の高校1年生だが、中学の時にクラスの幼馴染がイジメられているのを庇ったら、イジメの矛先がこちらに向いてしまい、酷い目にあった。以来、あまり人と接したくない。
本名の創利 改(つくりあらた)から名前を取って、いろんなゲームのなかでアラタで通している。
この数日、1日1時間か2時間くらいしか寝ていないが、どうにかコンテンツをアップロードが終わってホッとした。
やることは終わったので、新しいサンドボックス系のゲームがないか検索をかける。
ん、──インディーズ系か。さきほど公開されたばかりのゲームで購入価格は120円……。
まあクソゲーの予感しかしないが、安くてもたまに掘り出し物もある。食わず嫌いするのもよくないので、購入ボタンを押すとダウンロード画面に切り替わった。
30分……うん、長すぎる。バックグラウンドでダウンロードを進めながら、他にも目ぼしいゲームがないか漁っていたら、急に眠気が襲ってきた。
無理もない。時計の針は朝方4時過ぎを指している。一度寝てからやれば良かったが、まさかダウンロードが30分もかかると思っていなかったから。
最強の眠気が襲ってきた。ダメだ──もう意識が、横に置いてあったコーヒーをゲーム機にこぼしてしまったが、眠気が強すぎてそのまま視界が真っ暗になった。
ここは……。
目が覚めたというか、今、気が付いたというべきか。仰向けで顔にベッタリと砂がついていたので、起き上がる。
砂浜、振り返ると青く澄んだ海と青い空、風は心地よく太陽に当たっているが、とても気持ちがいい……。
──って、そんなのんびりしている場合じゃない!?
知らない場所。
自分の顔をつねる。──痛いので、夢ではない。
記憶を辿ると、自分の部屋でサンドボックス系のゲームをダウンロードしていて、眠ってしまったところまでは覚えている。だが、こんな場所へきた記憶はまったくない。
砂浜から陸地をみると鬱蒼とした森が広がっている。砂浜に沿って見渡しても景色は変わらない。
うーん……んん~~ッ!?
悩みながらキョロキョロしていたら頭の真上になにか浮いているのでメチャクチャびびった。
掴める? 引っ張ると目線の高さまで降りてきた。半透明な板、日本語で文字が書かれている。
───────────────
名前 アラタ
年齢 15
種族 人間
生命力 ∞
創造ポイント 10
筋力 5
敏捷性 7
知性 130
精神力 ∞
器用さ 7
スタミナ 6
幸運 10
クリエイティブモード
───────────────
──これってステータス。ゲームっぽい仕様ということはゲームの中か異世界に転生あるいは転移したかのどちらか。
ステータスウインドウって普通、「ステータスオープン!」とか言ったりして必要な時に出たり消えたりするが、目の前のコイツは閉じることができない。しかたなく自分の頭の上に移動させて邪魔にならないようにしておく。
自分のステータスを開きっぱなしって個人情報的にどうなのよ? と思うが、知らないだけで、もしかしたら閉じ方があるかもしれない。まあこの問題はあとでもいい。
ステータス画面を見て、2か所ほど違和感を覚えた。
ひとつ目、生命力と精神力が無限大を表す∞になっている。
ふたつ目は一番下に表示されていた「クリエイティブモード」というキーワード。
このふたつから昔からやり込んでいるサンドボックス系ゲームのクリエイティブモードを思いだす。普通にゲームをプレイするならイージー、ノーマル、ハードから選ぶのだが、ごく一部のユーザーに解放されているクリエイティブモードというものがある。クリエイティブモード中はけっして死なないので、ゲームをプレイするというよりはモノを作るのが醍醐味なモードになっている。
「えーと、水と大型ナイフ、っと」
ステータス画面を下げて横にスクロールすると、クリエイティブで作るものを入力してくださいと書かれていたので、キーボード状の文字列を入力してみた。
ポンッと目の前に刃渡り25センチくらいの大型のナイフとどこからどうみても2リットルのスーパーで売られているペットボトルが出てきた。
水が1ポイント、大型ナイフは3ポイントしたので創造ポイントがその分減った。
蓋を開けて水を飲む。自分で思ってたより喉が渇いていたみたいで、半分ちかく一気に減った。
さてと、そろそろ目の前の密林に入ろうかな? 生命力が∞だからいきなり死んだりしないよね? 慎重に森のなかへと踏み入った。
結構、歩きにくい。太陽の光は多少、下まで届いているが、届いているところは背の低い植物が生い茂っているため、想像していたより移動が大変だった。
転んだりしないように足元に気をつけて歩いていたら、目の前に棍棒があった。
『ゴンッ』と鈍い音とともに後ろへ転んだ。木の棒で叩かれた!?
でも全然痛くない。普通に立ち上がろうとするともう一度横殴りに木の棒を振るわれ、倒された。
痛くないけど、なんだか腹が立つ。サッと立ち上がって、真上から振り下ろされた木の棒を肩で受けて、手に持っている大型ナイフを前に突き出した。
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