side:①
月夜が照らす街に怒号が響く。
「あのガキどこ行きやがった!!」
「探せ!まだその辺にいるはずだ!!」
男が六人。
その手には光を放つ魔道具があり、足元を照らしている。
ただ目当ての相手は見つからないようで、複雑に入り混じった路地を散り散りとなっていく。
(一つ)
人海戦術による捜索は有効だろう。
ただそれは相手が一人かつ単独で勝てるほどの実力があった場合だ。
(二つ)
灯りは消えていく。
少しずつ、毒のように彼らを蝕む。
(三つ)
そして、その毒は彼らは気付くことはない。
気づいた時にはすでに。
(四つ)
彼らの命は散っているからだ。
男は叫ぶ。
「おい!返事しろ!!」
「クッソ!だから単独じゃダメだって言ったんだよ!!相手は『白い悪魔』だぞ!!」
暗き闇に浮き上がる灯は残り二つ。
瞬きの間に消えるほどか細い灯だ。
だから、それは姿を現す。
トンッ。
暗い闇が伸びる路地から、音がした。
敏感になった男たちの耳に聞こえる程度の音だった。
雰囲気が変わる。世界の景色が変わる。
白い影が立っていた。
まるで最初からそこにいたかのように。
「——サヨウナラ」
「まほうをはららら、ら?」
血しぶきが上がる。
ズルッと男の頭がズレ堕ちた。
「あ?」
「遅いよ」
たった数秒のことだった。
また二つの灯が消えた。世界には月の光が降り注ぐ。
「あぁ、もうすぐだよ。お父さん、お母さん、カリア」
血だまりで白い髪の少女は嗤う。
ただ嗤う。
「もうすぐ手が届く」
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