Sweet Box

第１話 たいせつな宝物

あの人からもらったもの

付き合って初めて書いてくれた手紙が

可愛いクマの模様の木彫り箱に

大事にしまっている

１０年以上の前のもので

お互いに手紙を書き合おうって

言っていた

安い便箋で

赤と青の罫線が引いてある

背景は白

箱に入れてるから色褪せない

緊張して書いたんだろう

初めの文字が間違ってること許したい

『最初』が『初最』になってしまってる

もうそれでもいいって思ってしまう

どんな気持ちで書いたんだろうと

想像してしまう

この間違いがものすごく貴重

普段　ミスをしなそうな文字

デジタルの文字では伝わらない

紙に書かれたあたたかい気持ち

ずっと大事にしたい

喧嘩したら思い出そう

どこにあるかは絶対内緒

それを見せたら恥ずかしくて

どこかに持って行ってしまうかも

その箱はキャビネットの引き出しの奥の奥

誰にも見えないところに隠している

普段は忘れて見ていない

もしあの人が箱をのぞいたらと

考えるとヒヤヒヤする

それでも絶対捨てられない