第49話 獅子川一行、ゴブリンが数学を解く場面に遭遇する
獅子川は式部に戦いの全てを委ねていた。
「なんとか一人で頑張ってくれ。僕のポケットに煙玉がある。目くらましに使ってくれ。」
式部はこの願いを受け入れた。
「分かった。俺のアキレス腱に賭けるということだな。よし、やってみよう。」
獅子川の言う通り、式部にこの勝負の命運全てを任せるしかなかった。
式部はまず、煙玉を使用して敵を足止めしようとした。
「読み通りだ小僧ども。」
しかし、研究者の男はこれ読んでいた。
彼は体をひるがえし式部を視認しようとした。
「振動停止。あれ、振動停止。」
しかし研究者の男は式部を視認できなかった。
「スケルトンアーム、全身スケルトン。」
式部のスキルスケルトンアーム。腕が大きな骨に覆われて固くなる。この能力を全身で使用した式部は相手からは視認できず、骨に覆われた男になっていた。
「おっしゃ、おりゃあ。」
式部の渾身のパンチが相手の頬に命中した。相手は階段の上で動けなくなっていた。
研究者の男が気絶したため、スキルの効果が切れたのか獅子川らは動けるようになっていた。
「改めて自己紹介をしよう。獅子川だ、よろしく。」
「瀬高です。ハッカーです。」
「血潮見レタス。売れない漫画家だ。」
「筋肉好きの式部、よろしくな。」
30分たったのち4人で再びエレベーターに乗り始めた。
獅子川らはエレベーターに乗り7階に移動した。
そこには地下闘技場のようなリングとミノタウロス、ゴブリンの観客がいた。
「野郎共、俺こそがミノタウロスのチャンピオンだ。」
ミノタウロスは巨大キングゴブリンを討伐し自分が王だと宣っていた。
「チャンピオンか。面白い手合わせしてほしいな。」
電脳城を占拠するという目的があるためその場を去ろうとしたが、敵が襲いかかてきた。相手は巨大キングゴブリンだった。
「こんな貧弱な人間が対戦相手かよ。勝負するまでもねえ。」
「時神ルーピルの10。そんなかませ犬しか言わないことをよく喋れるよな。雷神セト・トルエドの10。」
2つのスキルを駆使して敵を討伐していた。
「次かかってこい。リングにあがってこい。」
次に向かってきた相手はロボットだった。
「なんだこいつは。」
ロボットは獅子川に忠告をした。
「格闘ロボP30です。私はモンスターではないので、カードのスキルは聞きません。正面から殴り合うしかないですよ。」
「それは面白いこういう敵を待ってた。」
獅子川はロボットの懐に迫ると剣で相手の接続部分を攻撃した。
「ぐああ。」
「痛いところを狙うのは地下格闘なら当然のこと。」
ロボットが倒れこみそうになったが、なんとか体を起こした。
「P30トルネード。」
ロボットは自身の体をひねり掴んだ獅子川を引き離した。
「なるほど一枚岩じゃないようだね。」
獅子川は再び体勢を整えると、手に持った敵の鉄板を見せびらかした。
「君が落とした体の部位だ。式部と僕は握力が強くてね。体全部剝いでやるよ。」
その後もロボットの敵の接続部に剣で攻撃を与えながら体を剥ぎ続けた。ロボットは身動きが取れなくなった。
「この部位はいいね。クラフトの材料になりそうだ。」
ロボットも倒すと、チャンピオンのミノタウロスが眼前に迫った。
「俺にカードのスキルは効かねえ。特別に改造されたロボットの体を持つミノタウロスだからだ。」
「時神ルーピルの10。なるほど、ロボットの体だから攻撃が効かないんだ。面白いね。瀬高血潮見、式部頼む。」
血潮見、瀬高、式部が獅子川の頼みを引き受けた。
「おっす。獅子川。俺たちに任せろ。」
「ハ、ハッキングしろと言うことですね。承りました。」
「俺の筋肉の力、見せてやんよ。」
まず血潮見が植物のスキルで敵のミノタウロスを拘束、次に瀬高がハッキングしてロボットの動きを停止させ抵抗できないようにした。
「なんだ。体が動かない。もしやハッキングでもされたのか。」
最後に式部がスキル、スケルトンアームを使用してミノタウロスに攻撃を加え続けた。
「ほら、もっと欲しいか。俺のパンチがよ。」
「痛え。くっそ攻撃が当たり続ける。」
ミノタウロスの身動きが取れなくなったのを確認して獅子川が剣でとどめを刺した。
ミノタウロスはその場で消滅した。
[level UP 15]
「よし、じゃあ上の階へ行こうか。」
獅子川ら4人は再びエレベーターに乗った。
エレベーターは9階で止まった。
ドアが開くとそこは音楽がよく聞こえる場所だった。
雲上貝ビル9階ライブハウス。DJが客のゴブリンやスケルトンを躍らせるエリアだった。
獅子川は音楽で盛り上がっている会場のスケルトンのDJに時神ルーピルの10のスキルを使用した。突如身動きが取れなくなったスケルトンは何者かが来たことを察知した。
次に獅子川は雷神セト・トルエドの10を使用して、DJをしびれさせ倒れさせた。
「僕のDJが聞いてほしくなったもんでスケルトンDJには退場してもらった。」
スケルトンがやっていたターンテーブルの動かし方とは違う自然を感じるノスタルジックな音楽を出していた。
「おい。こんな優しい音楽はいらないぞ。」
「つまんねえのらせ方しやがって。交代しろ。」
数々の批判を食らい仕方なく、獅子川は返事をした。
「僕のDJはここからだよ。」
そこから、電撃ともいえる轟音とともに、アップテンポな曲に急に変化した。
それを聞いて会場も欲しい音楽が来たのか、ノリと動きがよくなり始めた。
「まあ、僕らは頂上を目指してるんだからこれくらいで終了していいか。行こう。瀬高、血潮見、式部。」
それから、獅子川一行は再びエレベーターに乗り上の階へと向かった。
エレベーターは12階で止まった。
中に入ると、ゴブリンやスケルトン、ミノタウロスらがPCを使って数学、国語、英語などの問題を解いていた。
「すごい。ゴブリンが数学の問題を解いている。まるで人間みたいだ。」
ゴブリンが、素因数分解や微分や積分を解いている光景に一同驚愕した。
「俺でも解けない問題を人間の言葉が分かるはずのないモンスターが解いている。」
ゴブリンの一人が彼らの疑問を解消しようと説明をしだした。
「ようこそ。雲上貝ビルへ、あなたたちは訪問者ですか。私はゴブリンのミテと申します。私たちはここで脳トレの問題を出され実際に解くことで人間と同じ思考力を手に入れようと実験しているのです。」
獅子川らは先ほどの疑問が晴れたことに気が付いた。
「そうか。格闘競技場にいたミノタウロスやロボット、ゴブリンらが言葉を話せていたのは研究者がこのビルで実験しているからか。」
ゴブリンは再び説明をしだした。
「私たちは人間の頭脳に憧れています。NPCとして生まれた私たちもいつかは人間の住む現実世界に赴いて飛行機や船に乗ることを夢見ています。」
獅子川らはゴブリンのミテの話に素直に応援した。
「応援しているよ。私たちの世界でも生活ができるといいね。」
しかし瀬高はあまり乗り気ではなかった。
「え、NPCと人間であるプレイヤーの意識、立場が逆転することになったのもこの実験のせいかもしれません。わ、わ、私は少し不満です。」
血潮見は実験を見て気持ち悪いといった表情を見せた。
「少し気味が悪いな。モンスターが俺らと同じ知能を持ってると。」
式部は実験に乗り気だった。
「ミノタウロスの筋肉仲間ができるかもしれないってことだろ。ミノタウロスと筋肉比べか面白そうじゃないか。」
獅子川らは実験の説明が終わると、エレベーターで次の階を目指した。
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